見出し画像

大人が絵を描く理由

2019年くらいから子ども向けの表現遊びのワークショップを実施したり、ノウハウ等を提供したり、あるいは道具の開発等を行っていました。当時は3〜6歳くらいの子どもを対象とすることが多かったので、必ず保護者と一緒に参加してもらう流れだったのですが、参加してくれた保護者の方から大人向けの表現遊びもやってほしいという声をたくさんいただくようになります。

そんなわけで"自称"大人を対象としたお絵描き教室を、2022年1月(たぶん)に始めました。現在では東京で月に2〜3回程度、それ以外の地域で月に1〜2回程度をコンスタントに開催するようになりました。

画家でもないのに絵を描く理由

ありがたいことに毎回たくさんの方にご参加いただくのですが、何が嬉しいかって皆様これといった目的意識を持っていないということ。

英語を学ぶ人には英語圏の人とコミュニケーションを取りたい、旅行を楽しみたいなど理由があると思います。トレーニングならば「痩せたい」とかね。大人の学びには合理的な目的があることがほとんどなのですが、お絵描き教室に関してはあまり強い目的意識がありません。でも目的を持たないことって実はとっても大切だと思うんです。

子どもは毎日遊んで過ごしますが、その結果たくさんのことを体験的に学んでいます。(こちらもどうぞ↓)

仕事を通じて子どもと遊びのことを考えるにつれ、大人にも遊びの時間が必要だろうと思うようになりました。大人にとって遊びの時間とは、

①それ以外の目的を持っていない
②inputとoutputの循環があること

この2つが大切だろうと思います。その点において「絵を描いている時間」というのはまさに遊びになっていると思います。大人のお絵描き教室に参加してくれる人たちは、ほとんどの場合専門家になるために絵を学びに来ているわけではなく、つまりは目的達成のために絵を描くのではない。しかも絵を描くということは、見て(input)描く(output)わけですから、まさにです。

目的はないが効果はたくさん

子どもは数や言葉を覚えるために遊んだり、手先を器用に使うために遊んだりするわけではありませんが、結果的に遊びを通じてたくさんのことを知り、覚え、運動能力の発達を遂げるわけですが、どうやら大人にもその「成長」は起こっていそうです。

お絵描き教室で「絵を描く」ということ以上の目的はないものの、絵を描くことを通じて僕が見ているだけでも、自己理解が進んだり、自分で勝手に設定していた自分の限界を超えたり、自分と他者の違いを認めたり、抜け出したかった日常のループから抜けるきっかけを手に入れたり、なりたい自分になれる手応えを感じたり、身体的にデトックスが進んだり、終わった後のビールが美味しかったり…色々な副次的な効果があることを目撃しています。

大人のお絵描き教室の風景

精神分析学者、精神科医として後世に多大な影響を与えたジークムント・フロイトは意識の中に、自分で顕在化することができない領域=無意識(潜在意識)を発見しました。フロイトはこころの状態を把握するにはこの無意識(潜在意識)の領域に何を閉じ込めているのかを知る必要があると考え、無意識の顕在化を試みます。

この顕在化に「言葉」は意識が邪魔をしてしまうため不適切です。意図の有無に関わらず嘘がつけてしまいます。そこで用いたのが描画という手法でした。絵を描き、それを(対話者とともに)解釈することで無意識を把握するのです。このアプローチは医学的根拠に基づくものとして、現代でも絵画療法として心理カウンセリングなどで用いられています。

医学的な専門知識は全くありませんが、医学的な理解や専門的な解釈がなくとも、どうやら絵を描く(表現をする)という行為には少なからず自分というものが投影されるのは間違いないのだろうと思います。自分の身体を用いた表現の結果でも悪わけですしね。

ならば、前述のような描くことでの副次的な効果も納得です。自分でも知らなかった自分を認めたり、自分の限界を苦痛を伴わずに乗り越えたりする機会になっているというわけです。ならばそれこそが大人が絵を描く理由の一つになるのかもしれませんね。楽しく絵を描いていたらいつの間にか欲しいものが手に入っていた、なんてこともあるのかも?

大人のお絵描き教室はこれからも随時開催していきます。日程は僕のtwitterをチェックしてください!

出張お絵描きも呼んでいただければ全国伺います!



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?