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フォトヨドバシの東京感光が良かった

 自分が写真を趣味だ、としたのは働き始めて2年後のこと、もうすぐ20年となる。それから相変わらず下手だが、ネットでいつもうまいなあ、いいなあと思っているサイトがある。それがカメラ好きなら皆が知っているあのフォトヨドバシだ。
 新発売されたカメラのレビューをするサイトだが、それだけでなく、いろんなコンテンツをあげてくれるので、撮影の参考にもなる。そして、「このカメラを買えばこんなふうに上手く撮れる」と勘違いさせてくれるサイトでもあって、新型のカメラの作例を見て、何度指が攣りそうになったことか。いやはや恐ろしい場所である。

 その姉妹店的場所が「RANGEFINDE R」だ。主に距離計内蔵のカメラ、つまりライカとエプソンのカメラに関連する機材を紹介するサイトだ。
 現在、ほとんど更新されていないようだが、スコットさんという方が定期的に挙げておられたコーナーなども見応えがあった。日本人で、アメリカはシアトル在住、ライカを愛しておられる方だが、ブログの方も長いこと更新がない。果たしてお元気なのか、知るよしもなく、しかし気になっている。シアトルの風を、たくさん感じさせてもらった。

 今回はスコットさんの50回の連載には及ばぬものの、個人的に好きだったコーナー、「東京感光」について語りたい。

LIVE LEICAと銘打ったコラム集。せっかくですから海外にびゅーんと飛んでライカで切り取る光景を皆様に・・・と目論んではみるものの、編集長の「じゃ、自腹で」というファンタスティックな一言がツバメを連れて返ってくるのは目に見えております。まあしかし、お金と時間をかけさえすれば佳い物ができるというものでもありません。カメラを一度抱えれば、踏み出す1歩から旅行みたいなものです。そこで、できる限り電車と徒歩だけで、カメラを抱えて東京のド定番観光スポットを再探索しよう、それがこの「ライカで東京感光」となります。だ、誰ですか!?「あーあー」なんて反応されているのは。予定調和というのは結構心地よいものなのですよ。・・・首都圏に住んでいても、いわゆるド定番スポットというのは案外足が向かないものです。「さあ、どこか撮りに行こう!」なんて時は、みなさん大抵遠出されるのではないでしょうか。「ライカで東京感光」では、(1)誰でも知ってる(2)すぐに行ける場所に(3)ライカを抱えて(番外編あり)(4)撮って(5)食べて楽しむ、とまあ、こんな具合でございます。
http://rangefinder.yodobashi.com/liveleica/20110404.html

 スナップ撮影をメインにしている自分にとって、そしてかつて東京で学生時代を過ごした自分にとって、さらに出張で東京に行ったときに撮り歩くのが楽しみな自分にとって、この企画は至高であった。

 たとえば、秋葉原から神保町の回は、自分も仕事ついでで良く撮り歩いたルートだし、麻布十番は学生のころ、友人宅に遊びに行ったときに歩いたところだし、月島にもなぜか行ったことがある。都電にも何度か乗った。そんなまさに自分がやったことがある、行ったところがある場所を、すごくうまいあのフォトヨドバシさんが切り取ってくれるのだ。自分が見たことがある場所を、他の誰かの目線で見せられるのは面白い。

 秋葉原から神保町のルートは、たしかに自分も撮ったことがある。しかし、彼らの手にかかると全く違って見えて来る。なんなら彼らとの腕の違いを痛感させられるし、そんなところにそんな場所が?と発見をすることもあった。
 ほかにもコリドー街の回。銀座にバイトに出ていたので、有楽町は目と鼻の先。しかしこれがまた良さげなお店を紹介されるじゃないか。当然学生だからそんな場所に出向くことなんかほとんど無くて、一度バイトのチーフに高架下に連れられて行ったくらいだけど、こんなふうにお酒をはしごしつつ撮るなんてのができたら愉しかろうと思うのだった。

 そうしてそれらどこも行ったことがある場所をなぞらされると、今度の東京出張はどこを歩こうかなんてワクワクしてしまう。一度歩いたことがあって、でも、自分が気づかなかったところに目を向けてみたくなる。それこそが東京感光の魅力であって、東京に行ったことがない人でも、こんなところがあったんだ!となる読み物だったに違いない。
 その面白さとは、たしかにそれは観光地なんだけれど、そこだけに終始せずに、その周囲にある街の暮らしを切り取っているところだと思う。
 麻布十番の回では、最後に入った居酒屋で見知らぬ外国人と酒を飲むし、月島の回でももんじゃを食べに行く名目で、と、誰かの休日を覗き見している感覚である。観光地の写真ではない。そこには日常がある。

 レンジファインダーのサイトそのものが更新を止めている状況だけれど、できれば今一度東京感光をやってくれないかなと思う。フォトヨドバシの本サイトでもいい。軽妙な文章とともに東京の良さを感じさせる良質のコラムがまた見られたら嬉しい。

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