生きてなんかいねえよ

剃刀よ
お前は歌うな
お前は奏でるな
お前は無音の中で踊れ
傷痕を眺めてもしくしくと暮れるな
お前は弱く孤高であれ
過ぎて行ったものたちに囚われて泣き叫べ
生きてなんかいねえよ
もう捨てちまったんだよ
何回拾い上げられて、何度懇願されたことか
捨ててくれ
あなたがたが願うように、私にも願いがある
生きてなんかいねえよ
生きてあげようと、咲いてあげようとしている
ふりをしているだけなんだ
それだけで私の器はもう壊れてしまいそうなんだ
私は弱く孤高でありたい
生きてなんかいねえよ
歌ってなんてやるものか
無音の叫喚なんだ
気づかれないことだけがあなたがたへの恩返しなんだ
やめてくれよ
やめてくれよ
私の傷を笑わないでくれよ
私の傷を隠さないでくれよ
風よ吹け
灯火を消せ
歌うなと言っているだろう
血溜まりは陽だまりに拒まれたんだ
生きてなんかいねえよ

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