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「初心者にオススメ」の一言でレンズを勧めるのは無責任だと思う。

はじめに

ども。
過去3回に分けて主にカメラボディについての記事を書いてきました。
・性能よりも操作性を重視する
・求める性能は何かを考える
・カメラ系ユーチューバーの発言が正解だとは限らない
以上が3つの記事の要約になりますが、ここまでカメラボディについて言及してしまうと「カメラボディが重要」と、私がカメラボディ偏重主義かのように思われてしまう恐れもあるため、今回はレンズについて思っていることについて書いていこうと思います

「初心者」とは誰なのか

カメラの性能比較とか機材レビューのYouTube動画、皆さんお好きですよね?
これらはカメラ系ユーチューバーのコンテンツとしては鉄板ネタだと思うのですが、他にも「初心者向けのおすすめレンズはこれだ!」とか「初心者は単焦点レンズを買うな!」みたいな動画も多いですよね。
他にも「初心者」が枕詞の動画としては低価格帯のカメラ紹介やカメラバッグ紹介なんかもありますよね。
で、ここでいう「初心者」ってどういった人を指しているんでしょうね?
・初めてのカメラ購入を検討されている方
・具体的に購入するカメラが決まっている方
・カメラに興味はあるものの購入までは考えていない方
・興味があってカメラを購入したものの、使い道がよく分からない方
上記に該当する他にもカメラ初心者と言える方もいらっしゃると思いますが、まずは思い付いたこれらの条件で考えていこうと思います。
恐らくですが、カメラ系ユーチューバーの指す「初心者」は上記4点に該当する方とも言えますし、違うようにも思えます。
そもそも殆どのカメラ系ユーチューバーは、動画の中で初心者の定義を明らかにせず「視聴者から質問された(だから動画にした)」という旨の発言をしているので、自分に質問してくる視聴者=初心者と定義しているのかもしれません。
そして、カメラを買ったばかりの初心者と一言でくくっても、カメラを買った動機は人それぞれのはずです。
・推し活の一環として写真を撮りたい
・子供やペットの記録として写真を撮りたい
・ガーデニングで育てた草花を写真に撮りたい
ある程度カメラを使ったことのある方でしたら、この3人に最適なレンズやカメラボディが異なるというはお分かりいただけると思います。
そして、この3人が「初心者におすすめレンズ紹介」と銘打たれた動画を視聴し、全員が納得できる内容を提供しているカメラ系ユーチューバーは何人いるのでしょうか?
もしかしたら、誰もいないかもしれません。
これはカメラ系ユーチューバーを責めるというより、こうした様々なニーズに応えられる動画を15分程度の枠で作ることが難しいと思うのです。
過去に公開した記事にも書きましたが、カメラ系ユーチューバーが動画で言っている事が正解だとは限りません。
そして、写真を撮る道具としてカメラボディとレンズの役割分担は……
・「どう撮るか」を決めるのがカメラボディ
・「どう写るか」を決めるのがレンズ
と考えているので、ここからはこの視点でのレンズ選びについてご紹介したいと思います。

目的から逆算したレンズ選び

カメラボディの時にもお話ししましたが、間違いのない選択をするためには必ずゴールを設定すべきです。
ここでのゴールは「何を撮影するのか」を明確にすることです。
また、レンズ選びで見落としがちなのはボディとのバランスです。
軽量小型のカメラボディに大口径のズームレンズを装着すると、フロントヘビーな重量バランスになりストラップなしでの運用は手首への負担を増大させます。

以上の点を踏まえて、私見ではありますが撮影シーン別にどんなレンズを選んだらいいのかを書いていきます。

・単焦点レンズ
 焦点距離が固定されているレンズなので、どうしても撮れないシーンが出 
 てくるのですが、ズームレンズと比べて明るい(開放F値が低い)レンズ
 も多いので、暗い場所での撮影でも使いやすいです。
 街歩きしながらのスナップ撮影や人物撮影(ポートレート)をメインに考
 えている方でしたら、「撒き餌レンズ」と呼ばれる低価格な単焦点レンズ
 から始めてみるのをお勧めします。
 また、写真撮影という表現活動を本格的に始めたいという方は、標準域
 (焦点距離40~60mm)の単焦点レンズから始めるのをお勧めします。

・ズームレンズ
 ズームレンズをお勧めする一番の理由は「焦点距離を変えられる」という
 点で、この一点に価値を見出せなければ単焦点レンズを選ぶべきだと思い
 ます。
 旅行にカメラを持っていきたいのでしたら 24mm-70mm F2.8 の「大三元
 レンズ」と呼ばれるズームレンズが丁度良いでしょうし、動物園や水族館
 でしたら、24mm-100mm や 50mm-135mm などの高倍率ズームレンズを
 選ぶとストレスを感じずに撮影できると思います。
 また、ライブハウスの様な暗い場所での撮影を想定される方はなるべく開
 放F値の低いものを、運動会やスポーツでの撮影やレースの撮影を想定さ
 れるのであれば手振れ補正機能の有無もチェックしておくのをお勧めしま 
 す。

レンズによる撮影の違い

*ここからは写真をより上達することを目指す方に向けた内容となっておりますので、そこまで趣味の写真に求めていないという方は飛ばしてください

ズームレンズは焦点距離を変えることができるので、撮影者が動くことなく被写体に寄った写真が撮れますが、単焦点レンズの場合は撮影者が動くことで被写体との距離を取ります。
一見するとズームレンズの方が簡単に撮影できるのでズームレンズ一本で事足りるように感じるかもしれません。
しかし、単焦点レンズを使い続けることで焦点距離ごとの距離感を掴むことができるようになります。
前章で「写真撮影という表現活動を本格的に始めたいという方は、標準域の単焦点レンズから始めるのをお勧めします」と書きましたが、この標準単焦点レンズから始めるというのがポイントになります。
焦点距離40mm は両眼での視野と、焦点距離50mm は片目での視野と同じとされています。
つまり、見たままの視野を撮影できるのが標準単焦点レンズであり、被写体から離れれば広角レンズ「っぽい」写りに、逆に近づけば望遠レンズ「っぽい」写りになります。
こうして足を使って標準レンズを使っていると、「もう少し寄りたい」「もう少し全体像をとらえたい」と思うようになる時がきます。
その時が広角・中望遠レンズもしくはズームレンズを購入するタイミングですし、こういうプロセスを経て広角レンズや望遠レンズの必要性を感じないと、レンズを増やしても使いこなせません。
足を使って撮影することでファインダー越しに被写体との距離を読み取ることが習慣づけられ、ズームレンズを使っていても「根拠のある」焦点距離で撮影することができます。
これは単焦点レンズの優位性ではなく、単焦点レンズを使った焦点距離を読み取るトレーニングですので、ズームレンズでも焦点距離を固定して使えば同様のトレーニングは可能です。
始めの一本は単焦点でもズームでも構いませんが、広角と望遠の効果的な選択ができれば表現の幅はもっと広がります。
ちなみにフィルムカメラ時代のプロカメラマンへの道は、50mm単焦点レンズを使いこなすことから始まりました。

おわりに

フィルムカメラ時代、フィルムはほぼ富士フイルムかKodak の二択でした。
そうなるとカメラメーカーの写りの違いを決定づけるのはレンズしかなく、各社のコンセプトに合わせたレンズが発売されていました。
そしてデジタル化された現在、センサーの供給元が同じであっても独自の画像処理エンジンを開発することで写りの違いを打ち出していますが、そこにレンズも大きく貢献しているのは間違いないはずです。
ともすると写真の良し悪しはボディ性能が決めるという論調も散見されますが、こと写りに関してはダイナミックレンジの広さとハイライトとシャドーでどちらの耐性が強いのかという二点が重要で、他の機能については好みの問題だと思っています。
最後に。
カメラ系ユーチューバーは多神教の信者なので、彼らの常套句である「神レンズ」は話半分くらいで聞いておいた方がいいです。
誰かが崇める「神レンズ」より、自分が使い続けて絶対の信頼を寄せられる「勝負レンズ」の方が絶対に強いですから。

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