たとえ死が私を歩もうとも
見出し画像

たとえ死が私を歩もうとも

 急ブレーキで車を止めると俺は毒づいた。窓を開けて今しがた轢きそうになった相手に怒鳴ろうとしたが、声が出なかった。
 ヘッドライトの先には子どもがいた。小学生ぐらいで、クマのぬいぐるみを担いでいる。それを見てなぜか俺は戦争映画を思い出した。
 嫌な予感がした俺は黙って車をバックさせはじめる。が、車と同時に男の子が動いた。まるでワープした俊敏さで助手席にしがみついた。
「乗せて! 乗せて! 乗せろお!」窓ガラスを殴りながら男の子が叫んだ。気圧された俺がもたついていると子どもはすぐに乗り込んだ。
「出て行け! 俺の車だ!」
「いいから出せ! 早くしないと死ぬぞ」次に叫んだのはぬいぐるみ。中に大人がいるような声で俺は震え上がった。俺がヘッドライトの先を見ると、少年がいた位置の向こう、マンホールがあった。蓋の中から黒い液体が出てくると、巨大な形を取った。飛んだ。行き先はボンネット。

【続く】

この記事が気に入ったら、サポートをしてみませんか?
気軽にクリエイターの支援と、記事のオススメができます!
復路鵜

頂いたサポートは本の購入・取材・他記事サポートに使用します。

基盤にエナジーが注入されていく
小説を書いて勉強しています。 自サイト(がらくた採掘場):http://clannadetc.s56.xrea.com/ 連絡先:eulearo2877■yahoo.co.jp