ミスター東洋と俺

「女探しがどうしてこうなった」
 銃弾が頭上をかすめる。廊下の絵画が穴だらけになり、吹っ飛び、落ちた。ああはなりたくない。
「奴らも彼女を追ってるようだ。特殊部隊かな」
「うんちくはどうでもいい」俺は顔を出してリボルバーを連射。当たらん。火災報知器まで撃ったのに鳴らない。最高。
「ホテル自体が落ちたか。彼らの執念もなかなかだ。ライバルとして認めてやってもいい」
「もし死んだらお前を呪い殺してやる」俺は隣の男を見た。自称王族のアジア人。銃撃戦なのにスーツの襟を直し、髪を整える。咳払い。
「御冗談を。これほどの障害を乗り越えてこそ、僕は彼女と結婚できるのだ。報酬は三倍上乗せするのでエスコートよろしく、探偵くん」
「その前に死ぬッての! 何もかも足りない!」
「ではこれを支給する」アジア人が俺の手のひらにボールを乗せた。違う、もっと硬い。「いい爆弾だろう。ウチの武器庫からちょっとね」

【続く】

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