製薬会社から医師への情報提供の問題点と改善の可能性
こんにちは。株式会社ユカリア データインテリジェンス事業部の城前です。
今回は、奈良県立医科大学大学院臨床実証学講座 教授/臨床研究センター長 笠原 正登 先生に、「製薬会社から医師への情報提供」をテーマにお話を伺いました。
笠原先生は腎疾患を特に研究領域とされ、内科学会認定医・指導医、腎臓専門医・指導医、透析専門医・指導医、日本臨床薬理学会指導医の資格をお持ちです。
以下は、先生に弊社主催イベントでご講演いただいた内容を、なるべく先生の話し言葉に近い形で記載したものです。
【ポイント】
医師は日々診療の中で悩みを抱えている
医師はその薬が「自分の患者に効くのかどうか」が知りたい
ガイドライン至上主義の問題点
医師が求めるのは、個別状況に一歩踏み込んだ情報提供
製薬会社に期待される役割
①医師は日々診療の中で悩みを抱えている
奈良県立医科大学の笠原です。
この会場の多くの方は、製薬会社の方と聞いております。
本日、私が皆さんにお話させていただきたいのは、製薬会社さんから私たち医師への情報提供についてです。
私は、医師と製薬会社の間には「距離感」がすごくあると思っています。
その一例ですが、製薬会社の皆さんは、医師の日常診療のプロセスと、抱えている課題について、どこまでご存知でしょうか。
診療のプロセスでは、患者さんがやってきて検査をすると、診断が付き、治療選択がされ、その効果が判定され、足りなかったらもう一度治療選択を行い・・・とサイクルが回っていきます。
既知の病気で何事もなければ非常に簡単なのですが、実際はそんなに甘いものではありません。
薬品の奏効率は100%ではなく、とても効く薬でも90%ほどです。
では、残りの10%はどうなるのか・・・?
効かないのですよ。
それでも、患者さんは医師を頼りにして、また通っていらっしゃる。
治療抵抗性で段々効かなくなってくる場合もあります。
適切に診断、治療選択を行っても効果不十分・無効となってしまう。
そんな患者さんに対しても、何とかして次の一手を考えなければならない・・・医師は常にそういったプレッシャー下に置かれています。
②医師はその薬が「自分の患者に効くのかどうか」が知りたい
そこで医師は、教科書には書かれていない治療法を求めて情報を収集しようとします。
しかし、夜遅くまで仕事をして、家庭のこともして、それが終わってからようやく研究のために論文や専門書を読む、そんな生活です。
忙しくて時間が足りません。開業医だと、もっと忙しいかもしれませんね。
また、論文を読んでも、エビデンスの患者はそもそも人種や用量が自身の患者さんと異なる場合も多く、同じように適用できるのか判断が付かないことが多々あります。
医師が本当に知りたいのは、「自分の患者さんに効くのかどうか」という個別医療の情報なのです。
③ガイドライン至上主義の問題点
ガイドラインは最新のエビデンスに基づいたベストプラクティスを提供することが目的ですが、ガイドラインを至上主義的に適用することには問題点もあります。
要するに、個々の患者さんの状況に応じて対応する必要があるわけです。
そのためには、薬品に関しても、
「より効くのはどんな場合、どんな人?」
「効果はどんな場合に落ちるか?」
「効果が無かった場合の対処法やヒントは?」
といった情報の提供が必要です。
④医師が求めるのは、個別状況に一歩踏み込んだ情報提供
MRから医師に提供される情報は、われわれ医師からは、一般的・総論的なものが多いというふうに見えています。
医師が真に役立つと感じ、求めているのは、
個別状況を包括した説明
特殊状況を説明しうる内容
現治療を継続するための一手
といった、一歩踏み込んだ個別情報なんです。
個別情報なので、欲しい情報の内容は当然医師一人一人によって異なり、一律の情報を一方通行で提供するやり方は適していません。
なので、MRはまず医師に対して「何に困っていますか?」「問題点を教えていただけますか」と聞く必要があります。
一方で、他の医師からはその課題に対して「こうしたら解決できる」といった情報も得られるでしょう。
製薬会社がそうして様々な医師から得られた多くの「困りごと」「解決策」を集約して分析・整理すれば、それはとても大きな価値を持ちます。
医師が欲しい情報のうち、以下の紫字・赤字のような内容は、プロモーションコードの問題等で直接伝えることが難しいこともあるでしょう。
そんな場合は、医師を他の医師とマッチングすることによる討論型の情報提供、といった方法をとってみてはどうでしょう。
⑤製薬会社に期待される役割
製薬会社の方々には、今まで一方通行だった情報提供の在り方を変えていっていただきたい。
日々の診療の中で悩んでいる医師と、その答えやヒントを持つ医師を、一つの輪っか(ネットワーク)の中に組み込み、適切にマッチングすることで課題解決に導く、そんな役割と情報提供のあり方を期待したいです。
そうすることで、困っている患者さんがどんどん救われていくのではないかと思っています。
ユカリアでは、
独自の電子カルテデータベースと専門家(医療従事者・アカデミア)ネットワークを強みとした
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