国際: ネットゼロ・トラッカー2023報告書
在欧州シンクタンク/研究所のイニシアティブで、世界各地のNet zero目標設定&取り組みをトラッキングした報告書Net Zero Tracker2023が発行されたところ、その概要を整理。
記事要約
確かにここ数年でネットゼロにコミットする国は増加中だが、その中身を見ると、政策文書に落とし込んだだけのケースが大多数で、法規化はされていないのが現状。
地方レベルの取組では中国、都市レベルの取組では西洋諸国がダントツ。結局ガバナンス体制の差かもしれない。企業レベルでも欧米諸国国籍の企業のほうが積極的。
各業界ごとにはじきだすと、Chemical部門が100%と凄まじい!。食品系やRetail系がダントツで低い。モノづくり/Manufacturingは50%未満とまあ平均的。
1.ネット・ゼロ・トラッカーとは?
下記4つの在欧州シンクタンク/研究所のイニシアティブ。
NewClimate Institute
Oxford Net Zero
Energy and Climate Intelligence Unit
DataDriven EnviroLab
世界各地のネットゼロ政策・目標・取組をトラッキング。国レベルだけでなく、地方レベルや主要な企業の取組までカバー。
よく見るとこの取り組みはGreens団体であるEuropean Climate FoundationやIKEA Foundation等の支援及びオックスフォード等著名大学の協力の上に実施されたものとのこと。
報告書の公表を機にウェビナーを開催、下記からアクセス可能。
2.報告書
とりあえずExecutive SummaryのKey messagesは下記:
全体として、国・地方レベルのネット・ゼロ目標設定ペースは鈍化しつつあるが、国レベルの法規や政策取組自体は順調に増加中。
企業によるネットゼロ目標設定は引き続き順調。とはいっても、地方レベル&企業の排出削減目標値設定があいまいなケースが多々ある。
より多くの国・地方・企業が炭素回収・貯蔵技術(Carbon capture and storage:CCS)に頼りつつある。
といった感じ。より細かく見ると以下になる。結構な数のEntitiesがそれなりにネットゼロ宣言している。
そしてそれを世界全体の排出・GDP・人口カバー率ではじき出したのが以下の図。結構Coverage率は高い。
それをさらに、国に焦点当てて、もう少しズームインしたのが以下の図。確かにここ数年でネットゼロにコミットする国は増加中だが、その中身を見ると、政策文書に落とし込んだだけのケースが大多数で、法規化はされていないのが現状。
次は主要国における地方レベルの取組がどこまで進んでいるかの表。中国がすごいなあ、というのが私の第一の感想。トップダウンのGovernanceの強みというやつか。
次は主要国における都市レベルの取組がどこまで進んでいるかの表。都市になると西洋諸国がダントツとなる。結局、どのレベルのAuthorityが力を持っているかの差なのかもしれない。
企業レベルでも欧米諸国国籍の企業のほうが積極的。
そしてそれを各業界ごとにはじき出した図がこちら。Chemical部門が100%と凄まじい!。食品系やRetail系がダントツで低い。モノづくり/Manufacturingは50%未満とまあ平均的。
ただこれも結局、ネット・ゼロ・トラッカーが追跡しているものだけのデータ。世界全体を見渡すと、ネットゼロ宣言していない国・地方・企業&しててもその質がいまいちなものが大多数。
他、割愛。
3. コメント
しかし改めていろんな団体がいろんなリサーチをしていろんなことをいっているよなあ、と感じた。この報告書もまたグリーン系の団体が出したドグマ的な報告書なのかなと思って目を通したら、以外にも面白いデータが載っていた。ちゃんとした大学と協力してやったリサーチだと、ちゃんとした報告書になるんだなあとしみじみ感じた。
しかし業界別にプロットすると化学品系企業の100%がネットゼロにコミットしていることになるのか。何があったんだろうか。何か政治的な意図や動きを感じる。
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