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フランス大学に関する諸々

前回に続き、フランスの大学に正規留学する方法を解説した記事で紹介しきれなかった内容をここで逐一詳しく教えます              正直なところ、前の文章で既に正規入学において説明すべき事項を一通り話したわけですが、それでもなぜこの記事を執筆することに至ったかというと、やはりフランス大学に関する既存の情報の大半は不完全で、誤ったことを綴ったものが多いから、最新でかつ現地のフランス人や自分の経験から得た正確な情報をより多くの人と共有したく書くことにしました

語学留学におすすめの町

パリ(Paris):フランスに留学したい学生の誰でも一度はパリで勉強してみたいと思ったことはあるでしょう、フランス随一の大都市、その人口規模はフランスの中で飛び抜けて大きい(広さは東京23区の6分の1程度である)パリで語学の勉強をするメリットはずばり利便性に優れているところです。国際的大都市であるゆえに生活必需品から贅沢品までなんでも買える、特に日本料理やアジア料理が恋しくなった時、食材調味料の調達にアジアンスーパーがあると大変助かる、デメリットとしては家賃が比較的に高いということです、住む区域によって変わりますが、大体月500€から800€あたりは市内での一人部屋の相場です(シェアハウスの場合が多い)             リヨン (Lyon):都市規模がパリの2分の1、実際商業施設、観光地、公園、繁華街など人が集まる場所の面積だけを計算したらパリの4分の1ぐらいです、非常にコンパクトで市内なら徒歩でどこでもいけます、しかしながらパリほどではないですが、必要なものが一通り揃っています(アジアンスーパーもあります)町全体が落ち着いていてパリより安全で物価が安く、暮らしやすい、家賃は上記と同条件の場合、月400€から600€あたりです    ストラスブール(Strasbourg):リヨンとほぼ同じ理由          ボルドー(Bordeaux):リヨンとほぼ同じ理由、さらに天候が非常にいい                                  トゥール(Tours):リヨンとほぼ同じ理由 

結論としては、学士課程をパリにある大学に入学して勉強するつもりであれば、最初の語学学校はパリ以外の上記の都市を選んでも悪くないと思います、特にパリにこだわらなくて、あんまりお金をかけたくない方にはおすすめです

大学の種類

私立大学が多い日本と比べ、フランスでは国立大学(グランゼコール含む)の割合が多く、その比率はおよそ 国立7/8:私立3/2です、そして学士課程は基本的に三年です                             フランスの高校生は3年次の最後にBAC(バカロレア)という全国統一共通試験(日本のセンター試験はそれに近いものです) を受けて、そこで合格した場合大学に出願する資格が与えられます(高校で履修した教科によって試験の項目の数が変わりますが、大体合計で700~800前後です、そして及第点は5割以上で、例えば満点700の場合350が及第点となります、それ以下の場合は不合格でBACを取得するためには、もう一度受験する必要があります                                  合格後、合計点数に応じて、20段階評価に変換されます                     Assez bien : de 12 à 14/20可:12から14                                                          Bien : de 14 à 16 /20          良:14から16
Très bien : 16 ou plus /20 優:16以上  18点以上の生徒は非常な成績優秀者として表彰され、大学入試において大変優遇されます 

国立大学は二次試験がなく(書類審査はある)BACを合格した者は全員大学に申請する資格を持つので、日本のように大学のランク付けのようなものはない、しかし第一志望の優先順位或いは学歴としての価値について、このようになっています(フランスの友人、現地の人からもこう思われています)

上位名門グランゼコール(L'École polytechniqueなど)>上位国立(パリ大学など)>国立、グランゼコール>上位私立(パリカトリック)>私立    *この順位は教育の質に比例したものではない
国立大学の学費が2019年までは基本的に、フランスの学生及びフランス籍保有している学生に限らず、外国人/留学生に対しても一律年間200€2万円程度の登録料)でしたが、2019以降は制度が変わり、留学生で初めてフランスの高等教育機関(国立大学)に申請した場合年間30万円ほどの学費を支払う必要があります(ただし国立大学に申請する前年度にすでに語学学校に一年間登録したことのある留学生はそれが免除されます、それと大学によって依然として、留学生に対してもフランス人の生徒と同じ学費200€を求めるところもある例えばソルボンヌ大学(Sorbonne Université)

グランゼコール(トップエリート養成機関)
グランゼコールは近代にフランスの国力を底上げすべく、多くの専門的技術者を養成するために設立された教育機関で、分野としては主に理工・土木・行政・商業・軍事・芸術系である、欧州の大学が伝統的に法学部、医学部、神学部の3つの学部を上級学部としてきたことがあり、法学・医学の分野のグランゼコールは存在しない、そのため、フランスで法律家・医師を志望する者はどれだけ優秀であっても国立大学に進学する(主にパリ大学)、技術者等の実務家養成のために創設された経緯から、文学や歴史学等の人文科学を専攻できるグランゼコールもほとんどない、ただし大学教員養成を目的とした高等師範学校(ENS)等では、当該職業教育の目的のもとに人文科学の専攻を許している場合はある、それとほとんどのグランゼコールは職業研究者の養成を目的とはしないため、博士課程に相当する課程を設置していないグランゼコールも多い
グランゼコールの入学条件
BACに合格しているのはもちろんのこと、その上各グランゼコールの厳しい二次試験を通過しなければならない(Concours)、そのためグランゼコールに合格するのに大抵の高校生は高校卒業後二年間のグランゼコール準備学級(俗に言うPrépaプレパ)を経て受験することになる、しかし名門の準備学級に入るのは難しく、2年目への進級も難関、そしてグランゼコール入学となるとその門はさらに狭くなる、よってそれを全部潜り抜けたものは卒業後社会的地位が高く、重要な役職に就くことが多い
グランゼコールはフランス以外の国から見た時、一般的には国立大学という位置付けですが、学費は年間1万€(120万円ぐらい)です、家庭の事情に応じて学費の免除、軽減や補助が適用できる学校もありますが、大抵の場合はこの額です、日本の私立大学とさほど学費が変わらないですがフランスでは教育、芸術は無償で提供されるものであるという意識が定着していて、18歳にフランス人はみんな独立することもあって、多くの家庭がその学費を負担することができなかったり(フランスでは税金が高く貯金のない家庭もたくさんある)、進んで自分の子供を援助したくはなかったりする

ここでよく勘違いされていることがありまして、いくつか取りあげます
1.フランスのエリートは国立大学・大学に行きません
答:”エリート”という言葉の定義によります、学力だけでエリートか否かを判断した場合、前述のように法学、医学のような高い学力を要する分野の学習は国立大学でしかできないので、その生徒たちは無論エリート(イダルゴパリ市長、サルコジ元大統領法学部出身)であるが、BAC(日本でいうセンター試験)で9割以上を生徒たちも個人的にはエリートの範疇には入ると思います(現に、マクロン大統領はパリ10大学出身である)、そして成績優秀であるが経済的な理由で最初からグランゼコールを視野に入れていない生徒もたくさんいると思います、なので一概にその人たちエリートではないと言えないです、しかし、学力に加え、家柄、出身、背景、経済力で”エリート”という言葉を定義付けた場合、確かにフランスのエリートはグランゼコールに行くことが多い、それでも必ずしもそのようなエリートたちは国立大学に行かないと断言することはできない、難しいと思われます

2.フランスの高校生は誰でもパリ大学に行けるから、パリ大学は日本でいう日本大学あたりの大学である
答:まずどうして誰でも行ける大学=日大という発想になるのかは理解に苦しむ(営利だけが目的の私立ならともかく)、恐らく彼の中で”BACの合格率生徒の8割以上”=”センター試験5、6割取れた程度の難しさ”=”偏差値50あたり”=”日本大学”そして”BAC持っている学生はみんなパリ大学に行ける”=”パリ大学は偏差値50〜60あたりの大学”、よってパリ大学=日本大学という考えに至ったのであろう
前述のように、BAC持っている学生は大学に出願する資格を有するが大学に受かるという保証はない、BACを持っている学生の中でも点数による優劣がある、その上パリ大学(1〜13)はフランス全土で一番人気であり(立地と国際国内評価で)、倍率の高い学部だと合格率5%(20倍)のところもざらにあります、さらにそこに出願する学生の多くはBACで18点以上を取っている(センター9割以上)
従って学部によっては、その競争の激しさ、生徒の質の高さは東大京大に引けを取らないぐらいのものです、だがパリ大学(1〜13)の中でも大学/学部の間に大きく差があり、生徒の幅が広いです、とはいえパリ大学=日本大学という理屈にはなりません(パリ大学=東大でもありません)*各大学 ・学部の倍率については後述に
そこで、BACの合格率は8割だから、内容は日本のセンター試験より簡単なので実際パリ大学に入学するのは日本大学に入るのと同じ難しさだと屁理屈をこねる人が出てくるかもしれませんが、BACに及第することはセンターで5割を取ることとほぼ一緒で、合格率が高いからといって、試験自体が容易であるというわけではない、センターのような択一問題もあれば、記述もたくさんあります、その最たる例は哲学問題の論述です、興味のある方は下記のリンク

このように、ネットではこういった中途半端な知識や、短絡的な考えで綴られた情報が非常に多い、まさに論理的、批判的な思考を養うための論述教育の必要性を顕著に表しているのではないかと

私立大学

主な私立大学                          Instituts catholiques フランス各地にあるカトリック大学 例えば:パリカトリック大学、リヨンカトリック大学                 Brevet de technicien supérieur (BTS)大学短期技術教育免状(学士課程2年)
ビジネススクール
学費は年間70万円から120万円前後です

グランゼコール(Grandes écoles/Grande école)

前回の記事で留学生としてグランゼコールに入学する方法を紹介しなかった理由は、留学生でグランゼコールの学士課程に正規入学したい場合、留学生用のプロセスはあるが(交換留学は論外)、その試験がフランス人とほぼ同じで非常に難しいです(例外はある)、一二年間フランス語を勉強したところで、受験の論述問題やディベート(弁論、討論)でフランス人のトップの生徒たちに敵う訳がないし、その上相当な英語力も要求されるところが多いです(TOEFL80~100、仏語での論述や弁論に加え、英語での論述や弁論試験もある場合が多い)とてもじゃないけど受かる気がしないです、勿論それでも受験してみたい方は自己判断でどうぞ
約250校のグランゼコールがある中でも(近年段々増えている傾きがあります)最も上位で権威があり、名門である何校かを紹介いたします(正直高い学費で名門以外のグランゼコールに行く価値はあるかは微妙なところです、それならパリ大学などの名門国立大学に行くことを選ぶ生徒もたくさんいると思います)
L'École polytechnique(L'X)エコール・ポリテクニーク フランス人に限らず世界中の誰もが認める理工系グランゼコール、多くの有名人を輩出しています(日本からレバノンに逃亡したでお馴染みの日産自動車前会長カルロス・ゴーンシトロエン創業者アンドレ・シトロエン、フランス最大の企業LVMH会長ベルナール・アルノー
Les écoles normales supérieures (Normale sup,Ulm*パリ5区学校のある通りの名前,ENS)パリ高等師範学校
École nationale d'administration (ENA)フランス国立行政学院 フランス政界の頂点に登り詰めた人が必ずと言ってもいいほど通っていたグランゼコール( Sciences Po やパリ大学などで学士課程を終えた学生しか入学、受験する許可が与えられていないので正確には修士課程しか提供していない大学院です)ENA卒業生はエナルクEnarqueと称される
現在、黄色いベスト運動によって、エリート主義や教育格差の是正が求められ、同校の卒業生でもあるエマニュエル・マクロン大統領によって、閉校が宣言された
L’École des hautes études commerciales de Paris (HEC)  HEC経営大学院 フランス全欧州ないし全世界で有数のビジネススクールの一つ
l'École du Louvre (EDL)ルーブル美術館大学・ l'École nationale supérieure des Beaux-Arts(Beaux-Arts,ENSBA) パリ国立高等美術学校
フランスで美術系の双璧をなしている、世界中の美術学生が追い求める美術学校の最高峰です
l'Institut d'études politiques de Paris (Sciences Po Paris)パリ政治学院
政界や国際機関の重鎮を輩出している名門校、2020年QS大学ランキング政治・国際関係分野において、総合評価二位、学術評価ではロンドン・スクール・オブ・エコノミクスLSEやハーバード大学などをおさえ堂々の一位に輝いた
パリ政治学院は上記で述べた例外のグランゼコール 、留学生用プロセスを利用して学士課程に正規入学することを目指すのは比較的に簡単です(書類審査と面接だけ)、しかしその場合パリ以外のキャンパスになり、授業内容は本校にいるフランス人の学生が受けているものとは別です、近年では留学生(交換留学含む)を積極的に招き入れる方針で入学する条件ハードルが下がり、その結果国内では学校全体の質が低下していると指摘され、グランゼコールとしてみなされなくなっている傾向にあります

国立大学(主にパリ大学)

法学部と医学部が別格であり、フランス本国の学生とは別のプロセスで入学する留学生は多少有利ではあるが、法学部と医学部に入れる人間は一握りです(留学生の中でも競争が激しいし、そもそも上位学部の貴重な教育資源を大量に留学生に与えるわけがなく、必然的に留学生のために確保された席が少ない、公式ではその数が明確に記されていないが、そんな募集していないことは自明的です)それに対して語学系は比較的に入りやすいです
下記の太字で強調した学部は各大学の最も評価されている学部ですので、倍率が高いです(学部が記載されていない大学は特筆すべき学部がないということです)例えば、パリ第1大学の政治学部と法学部共に合格率は5%、20倍で(フランス人、Parcoursup一次募集の場合)、その政治学部でフランス人に与えられた席は65席しかなく、それ以上の数が留学生に分け与えられているとは考えにくいので、DAP dossier blanc(留学生用プロセス)を利用した場合でも倍率が相当高いであることを推測できます
*二次募集(Parcoursup complémentaire)に参加する場合、合格率だけでなく、要求される成績や書類資格も確認した上で応募してください
下のリンクから合格率を検索することができます、一次募集の難易度を表したものですが、目安としてそこから留学生の入りやすいところとそうではないところを類推できます

パリ                                 パリ第1大学(Université Paris I - Panthéon-Sorbonneパンテオン・ソルボンヌ):法学・哲学・政治学歴史学・経済学
パリ第2大学(Université Paris II - Panthéon-Assas パンテオン・アサス):法学・政治学・経済学
パリ第3大学(Université Paris III - Sorbonne-Nouvelleソルボンヌ・ヌーヴェル):文学・東洋語(語学)
パリ第8大学(Université Paris VIII Vincennes–Saint-Denisサン=ドニ)
パリ第10大学(Université Paris X - Paris-Nanterre, Nouveau Paris-Nanterre,ナンテール):法学・社会学・歴史学・地理学
パリ第12大学(Université Paris XII - Paris-Est Créteil Val de Marneパリ・ヴァル・ド・マルヌ):医学
パリ第13大学(Université Paris XIII - Paris-Nord , Sorbonne Paris Nordソルボンヌ・パリ・ノール)                                                                                      PSL研究大学(Université PSL)旧パリ第9大学(Université Paris IX - Paris-Dauphineパリ・ドーフィンヌ):自然科学工学人文科学社会科学芸術(ここは元国立大学と何校かのグランゼコールや研究所が合併した大学ですので、もはやグランゼコールと考えても構わないです)
ソルボンヌ大学(Sorbonne Université)旧パリ第4大学(Université Paris IV - Paris-Sorbonneパリ・ ソルボンヌ)と旧パリ第6大学(Université Paris VI - Pierre-et-Marie-Curieパリ・ピエール・マリー・キュリー):哲学語学医学理工学(旧パリ4は文系に強く、旧パリ6は理系がフランスで最も評価されていた)
パリ大学(Université de Paris)旧パリ第5大学(Université Paris V - René-Descartesパリ・デカルト)と旧パリ第7大学(Université Paris VII - Denis-Diderotパリ・ディドロ):健康学・医学(ここの医学部は全国でトップ)・人文科学社会科学・語学
パリサクレー大学(Université Paris-Saclay)旧パリ第11大学(Université Paris XI - Paris-Sudパリ南):理工学・化学
地方
リヨン第1大学 (Université Claude Bernard Lyon 1クロード・ベルナール) : 医学・理学・工学(INSA Lyon)
リヨン第2大学 (Université Lumière Lyon 2リュミエール)
リヨン第3大学(Université Jean Moulin Lyon 3ジャン・ムーラン):法学
モンペリエ大学(Université de Montpellier)旧モンペリエ第1大学と旧モンペリエ第2大学が統合
モンペリエ第3大学(Université Paul Valéry Montpellier 3ポール=ヴァレリー)
ストラスブール第1大学 (Université de Strasbourg I  Louis Pasteur ルイ・パストゥール)
ストラスブール第2大学 (Université de Strasbourg II Marc Bloch  マルク・ブロック)
ストラスブール第3大学 (Université de Strasbourg III Université Robert Schuman ロベール・シューマン)

皆様のご存知の通りフランスの大学を卒業するのは入学よりも困難なので、入学後も人一倍の努力が必要です

参考にした情報:                           フランス人の友人(高校生や大学生)や先生              QS大学ランキングのAcademic Reputation学術評価           下記の記事はなぜそれが比較的に信用できるかについてまとめたものです、もし興味がありましたらどうぞ

以上でフランスの大学についてでした、この記事を読んでいただいて少しでもお役に立てれば幸いです












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