短編小説・怪談 『奇木の森』 (アンソロジー収録作品)
呆れ返る部屋だった。天井近くにお札や御幣が乱雑に乗った神棚があるかと思えば、その下の白壁には風呂敷大の曼荼羅図が掛かり、部屋に置かれた唯一の家具である飴色の水屋の上には、瀬戸物のマリア像とサイババのフォトフレームが仲良く並んでいるのだ。そのひきだしを開ければ、コーランが出てくるに違いない。
そしてそれらすべてを凌駕するのが、目の前にいるここの主だった。
霊媒師だというから、白い着物に緋色の長袴、首から大きな数珠でも下げて呪いのひとつも唱えるのかと思ったら、破れ襖から足踏