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血も凍る

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怪談ツイキャス「禍話(まがばなし)」で放送された怖いお話を、色々な方が文章に“リライト”しています。それを独自の基準により勝手にまとめたものです。
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2020年2月の記事一覧

禍話:合羽の男たち

 雨が降ってもいないのに雨合羽を着ている集団がいたら気をつけた方がいい。それが家の近所なら尚更だ。すぐにでも引っ越すべきかもしれないな。  Nさんは子供こそいないが、大学時代から付き合っていた奥さんと仲睦まじく暮らしていた。彼は仕事の関係であちらこちらの地方を飛びまわることが多く、その都度、会社がアパートや借家などを用意してくれていたそうだ。  九州某県のとある団地にNさん夫婦が引っ越してきたときのことだ。  会社の手配した借家は新興住宅地の一画にあり、ほとんど新築同然で最

禍話:ハコソの家

 Aさんが副担任として赴任したのは、とある田舎の学校だった。  しばらく過ごしているとわかることなのだが、田舎特有の閉鎖的で理不尽な力関係がそこでも蔓延っており、彼女のクラスでも如何にも権力者の娘といった子どもが幅を利かせていた。なにか気に入らないことがあると、手を出す、口をだす、足も出る。暴れ出したり、物を投げ出す始末だったが、親が相当の権力をこの町で持っているらしく、誰も無闇に対処できないでいるようであった。  とりわけその娘にいじめられている少女がいて、Aさんも心苦し

禍話リライト:あてつけ心中

大学4年生のT君には、小学校からの幼馴染でもある彼女がいた。ゆくゆくは結婚も考えていて、家族公認で大学も一緒。2人とも就職も決まってあとは論文ぐらいと気楽な時期になり、久しぶりにサークルへ行ってみた。 サークル室にはOBの先輩も含めわりとメンバーみんないたものの、なんだか沈んでいる雰囲気だった。真ん中のテーブルにDVDが置かれている。 先輩曰く、今朝来てみたらテーブルに置かれていたDVDとのこと。ケースには付箋で[T君と○○さんへ]と貼られてあり、ディスクには[心スポめぐ