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当たり前のことを当たり前に行う難しさ

昨日のTVグランメゾン東京、レストランは、星をめざすために料理を作るのではなく、お客に喜んでいただく料理を作ることや、ホールのサービスがお客の様子を感じ取る、そういう当たり前のことを、再認識させてくれるのには面白かったが、今更感が否めない。

ここで思い出すのが、「全員当たり前のことを確実に行っていくこと」と張り紙がされていたホテル西洋銀座のパティスリー厨房。当時の稲村シェフが書いたスローガンだ。
「だって、当たり前のことさえできないスタッフが多いから。」だそう。

ホールのサービスにおいては、パティスリーもしかり。厨房のパティシエにはお客の声は直接伝わってこない。だから伝えるのが販売員の役目。厨房希望でも、まずは販売をやらされることに不満を持つ人もいるかもしれないが、その経験は、決して無駄ではないことを知ろう。

しかしミシュランの星ってどうやって判断するのだろうか。テストのように点数で評価されるわけではないし、コンクールとも違う。コンクールは、どちらかというと人(審査員)の味覚をつかむもの。料理は人(客)の心をつかむものだと私は思う。そのためには、ホールや厨房で、客の知りえない心遣いや作業が行われるのである。それが結果として評価されていく。

かつてパリのトゥール・ダルジャンにいた時だ。そのころはまだオーナーのテライユ氏が毎日厨房に顔を出し、準備された料理をチェックしていた。アスパラガスが今日はちょっと小ぶりだと判断したら、少し足すように指示していたし、デザートの盛り付けにも一言添えていたのを覚えている。テライユ氏は、いつも、トゥール・ダルジャンの客目線でそのようなチェックをしていたのである。

写真は、当時1つ星?2つ星?だった、レストラン ユベールのムッシュー ユベールが料理学校を開くというので手伝っていた頃に撮ったもの。レストランの厨房にも少しいた。隣で働いていたのが、恵比寿でル レストラン ドゥ レトワールを営んでいた三鴨シェフ。当時から仕事ができて、ユベールさんにはとても頼られていた。その後はギイ サヴォワでも腕を発揮。今どうしてるのかな?
ちょっと加筆すると、この店で私は初めてクレメ ダンジューを知った。ユベールさんは、チーズのスペシャリストでもあったのだ。

ある日、ユベールさんに、ミシュランについているお客様アンケートに、この店のことを書いてと言われたことが。へー、そんな手が?と思っていたら、他にも2、3人のシェフから同じ話が。なるほど、星維持にシェフたちは色々努力しているのである。が、ミシュランが視察もしないで、この手紙アンケートのみで店を評価していたと、こっぴどく叩かれた年もあったのを思い出した。

ミシュランと料理人と客。この三角関係は、とりあえず続きそうだ。

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