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クラシック音楽事始め

 最近、販売されている電子書籍を眺めているとクラシック音楽についての書籍が目立つようになったと思います。「教養」の一部として注目されてきているのかもしれません。「クラシック音楽は敷居が高い」と思われがちですが、そうではありません。非常に奥が深く、いろいろと聴いていくと大変面白い音楽なのです。

 僕は小学校4年生のときに父親に連れられて、東京上野の文化会館でカラヤン指揮ベルリン・フィルハーモニーを聞いたのがクラシック音楽との出会いでした。

 そのときは、バイオリニストのアンネゾフィー・ムターがデビューしたてで、日本では初デビューの演奏だったと思います。ベートーベンのバイオリン協奏曲を弾いていました。その後はベートーベンの交響曲第5番「運命」。いい演奏だったのかどうかは当時はわかりません。何せ小学生で初めて聴いてので。ただ、演奏が終わったときに大きな拍手とブラボーを叫ぶ人たちが多くいたのはいまだに記憶しています。

 その後にクラシック音楽にはまり続け、チェロをはじめて、トランペットやピアノもやったりしました。数年前からは長くやっていなかったピアノをやり、バッハを一人で弾いて楽しんでいます。

 さて、クラシック音楽は、あまり聴いたことがない人はどこから手を付けたらいいのかわからないのでしょう。確かにバッハが活躍した17世紀以前から膨大なクラシック音楽はあるわけで、どれから聴いたらわからないでしょう。

 とっかかりはよく聞かれている名曲集を聞くといいでしょう。最近はYoutubeからでもいくらでも聴けます。例えばこちらです。

 「名曲」というのはおそらく誰にでも親しまれやすいという曲なのだと思います。クラシックファンはこういった名曲よりも自身の名曲をもっている人が多いです。

 クラシックファンは確かにメロディーも楽しむのですが、どちらかというとその曲の造り、作曲者の思い、演奏者の表現に注目します。例えば、僕は同じ曲のCDを最低でも3枚はもっています。最近はネット上でクラシック専門のサイトもあるので、大変重宝しますが、そこでも同じ曲の「お気に入り」とするのは5枚ぐらいあります。というのも、ここがクラシック音楽の醍醐味なのですが、一つの曲に対して指揮者やオーケストラ、そして年代によって音色が違ったり、指揮者の解釈によって一つの曲でもだいぶ異なる演奏をしたりするところを楽しむのです。 

 例えば、最近はまったドボルザークの交響曲第9番「新世界」があります。メロディーからも聴けば楽しい曲ですが、ベーム指揮ウィーンフィルの演奏とケルテス指揮ロンドン響の演奏/表現はまるで違います。前者のは非常に丁寧に上品なウィーンフィルらしい演奏をしますが、後者は非常にストレートでメリハリ(特にティンパニー)のつけたすっきりした演奏をします。僕は基本的に後者の演奏が好きですが、前者のも何か物思いに耽る時に聞くとなんだかいい感じなのです。

 つまり、そのときの気持ち次第で同じ曲でも演奏家によって変えて楽しめるのです。

 クラシック音楽の場合、演奏家は10人いれば10人違う演奏をします。19世紀以降にいろんな演奏家がさまざまな曲を演奏し、人々に感動を与えてきました。聴く人によっていろんな解釈もできます。レコードやCDで録音された記録されている昔の演奏を聴いて、いろんなことを感じることもできます。ポップや演歌だと、基本的に歌手は自分のオリジナルの歌だけを歌います。例えば、美空ひばりが歌った曲を最近の若い歌手が歌うことはないでしょう。その歌手が歌うことでみな感動するのだと思いますが、クラシックの場合はどの演奏家も基本的にどの曲も演奏するのです。

 村上春樹『古くて素敵なクラシック・レコードたち』(続編もあり)では、自身が所持している大量のレコードの中から好きな曲選び出し、それぞれ何人かの演奏家の演奏を比較・批評しています。なかなか面白い。あまり知られてない指揮者の演奏も取り上げていて、これに従って聴くのも面白いかもしれません。

 また、クラシック音楽の歴史を丁寧に説明している中川右介『クラシック音楽の歴史』もとても参考になります。歴史については総括的に書かれているのはあまりないのですが、これはすぐに読めて、作曲者間の関係にも触れていて興味深い。

 いずれにしても、クラシック音楽は少しづつ気軽に自分が好きなものを聴いていくといいでしょう。中でもモーツァルトの曲はどれも軽快でとっつきやすく聴きやすい。「モーツァルト効果」という精神を安定、ポジティブな方向に持っていく要素もありますので、鬱にも効果があります(自分で実証済み)。あまり「敷居が高い」とは思わず、気軽に聴いていきましょう。



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