見出し画像

マレーシアには服装規定があります。

 あまり日本では聞かないと思いますが、マレーシアでは公共の場、特に政府関連庁舎には服装規定があることをご存知でしょうか。これに違反すると入館を断られます。

 簡単にいうと、肌を露出させないことがポイントです。これは性別に関係なく、例えば、上半身はタンクトップだったり、下は短パンにサンダル履きでは政府庁舎内には入れません。入口の警備員に止められるのです。
 
 今年1月からローカル紙でニュースになりました。この服装規定に沿っていなかったため、入館を拒否されたのです。

 1月にはスランゴール州の警察署に短パンで入ろうとした女性が入館を断られ、また2月にはジョホール州の市役所で60才の女性が「肌を露出させていた」とのことで注意を受けました。今月に入ってもペラ州の政府関連施設で膝から下を露出させていた女性が規定に違反していると言われて断られています。

 僕が国立マラヤ大学に行っていたときも、各館の入口には注意書きとして服装規定が記載されていました。上記の内容のほか、大学構内は基本的にTシャツもだめなのです。ピアスや茶髪も対象です。学生らしい格好が求められています。

マラヤ大学の服装規定

 これら服装規定はイスラームの教えに沿ったものです。イスラームは国教なので、特に政府関連施設では厳格に守られているようです。

 また、マレー半島の西海岸ではあまり問題ありませんが、東海岸では外出するとき(行き先に関わらず)は男女ともに肌を露出させてはならないことになっています。日本人の男性だと短パンを履いてぶらつく人が多いですが、実はこれはローカルからは白い目でみられるのです。

 というのも短パンは膝から下を露出させていることになり、これを履いて外出するのは「不良」とみなされています。

 東海岸のマレー人たちは実際、外出時には短パンを履きません。モールなどでもまったくみかけません。履いている若者をごくたまにみかけますが、すごく目立ちます。町中でもオートバイに乗っている人でも長いパンツを履いています。実はマレー人は短パンを外で履いていると検挙の対象になるのです。

 以前のニュースで、トレンガヌ州でマレー人男性が短パンを履いてオートバイに乗っていたら、捕まったという話がありました。逮捕までには至りませんが、宗教局が違反切符を発行すると、確か罰金とイスラーム指導者から説教を2時間受けることになります。

 短パン着用違反で2時間の説教はどういう内容なのだろうと興味がありますが、おそらく『コーラン』とそれに付随する『ハディース』から文言を取り出して、説教をするのだと思います。ちなみに、これは非イスラーム教徒には適用されません。

 女性のスカーフの着用も当然とされ、人によっては上から下まですべて黒いベールをかぶって目のまわりだけ少し見える服装を着ている人もいます。あれは「暑くないのか」と思うのですが。

 先日はうちの会社の男性が苦情を申し立てました。

「女性のスラックスで膝から下が見える女性が一部おり、なんとかしてほしい。これはセクハラになります。」

とのことでしたが、膝から下が見えただけでムラムラときてしまうのでしょうか。これをセクハラと訴えるところがなんともいえないところですが、マレー人の感覚はこういったものなのです。

 僕はマレーシアに20年ほどいますが、いつもクアラルンプールでも考えてしまうことがあります。それは、電車などに乗っていると、マレー人女性は厳格な服装をしているのに、その隣には華人の女性がタンクトップでミニスカートという出で立ちという光景です。これはイスラーム教の男性から見ると、「セクハラ」になるのかと思いますが、やはりそこはマレーシアな寛容さというのもあるのかもしれません。ただ、全員が肌を露出させない規定にしない限り、あまり意味がないと思うのですが。マレー人男性が華人女性にムラムラ来ない保証はありません。宗教の規律の難しさはそこもあるのかもしれません。

 一方で、マレー人女性でもスカーフをかぶらない人はいます。私見ですが、スカーフをかぶらない女性の方が視野が広い方が多い気がします。スカーフをつけると物理的な視覚が制限されますが(個人的に実験済み)、それと関係があるのかもしれません。

 いずれにしてもそういうことなのです。マレーシアに滞在する場合は男女とも服装には気をつけましょう。

写真:道路交通局のサイトにあった認められる服装

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?