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(2)「超」英語独習法

 『「超」整理法』で親しまれている野口悠紀雄さんのご本。野口さんが英語の勉強法の本を出されているのは知らず、ふと買って読んでみましたが、なかなか読み応えがあります。このシリーズの2冊目は『「超」英語独習法』です。

『「超」英語独習法』   NHK出版新書

  この本は全9章からなっています。この本を書かれたのは80歳ぐらいだと推察しますが、かつて苦労して英語を勉強したことを節々に書かれており、英語を勉強するにあたって現在の恵まれた環境を称賛しています。

 この書籍では日本人が陥っている英語の勉強の5つの誤りを指摘しています。

「目的が漠然としている」
「多様な英語が存在していることを意識していない」
「英会話学校にいけば上達すると期待している」
「文章を単語に分解する」
「実用英語のためには話す訓練が必要」

 これら5つの誤りを元に学習法を論じておられますが、なかでも興味深いのが最後の3つ。

「英会話学校にいけば上達すると期待している」
 著者は社会人の英語は独学でしか学べないと主張しています。旅行程度であれば、英会話学校ですむものの、仕事で将来的に使おうと思っているのであれば、英会話学校で専門用語は教えられないと指摘しています。
 
 確かにそうです。僕は今、製造業の会社で通訳としていますが、単語や表現などは英会話学校などでは一切教えられない。というか、専門知識がないから学校では教えることができない。普通の会話では出てこない専門用語もたくさん出てくるため、これは自分で勉強するしかない。うちの会社では英会話のオンライン講座を日本人社員に無料で提供していますが、そもそも「こんにちは」「これはいくらですか」程度の会話を工場内でするはずがなく、意味がないことに時間を費やしても仕方がないので、僕は出ていません。著者は学校の英語教材も仕事には役に立たないと主張。「ビジネス英語」と限定したクラスや教材であってもそれは一般的すぎてだめだとしており、確かにそうなのです。 

 また、モチベーションについては好奇心がなければだめだとしています。辛いけど続けるというのでは勉強は続かず、興味をもって長く続けることが英語の勉強においては大変重要だとも述べています。

「文章を単語に分解する」
 次に著者が語っているこの件についてはなるほどなあと思いました。

 日本人の英語力が極めて低い原因は英語の文章を単語に分解し、単語を文法に用いて組み合わせ、翻訳して文章の意味を解釈するからだと主張。著者は「分解法」と読んでいますが、これをやっていてはいくらやっても伸びないとしています。
 
 とすると、何が効果的かというと、まずは単語帳を捨てて、文章を丸暗記することが肝要。「20回程度を目安として、繰り返し声に出して読むだけでいい」としています。僕もこれは大いに効果があると思っています。かつていろんな言語をやってきましたが、やはり単語や文法からいきなり入るのではなく、とにかくまずは文章フレーズを覚えて徹底して使えるようにすることが語学上達の近道だと思います。この丸暗記法は古代研究家のシュリーマンも同様のことをしていました。

 文法についてはある程度理解できるようになったら、系統的に理解し整理するためには勉強することは非常に有効だとして、このあたりは前回ご紹介した『最強の外国語習得法』に通ずるところがあります。

「実用英語のためには話す訓練が必要」
 さらに、この本のユニークなところは、「英語の勉強では聞くことに集中すべきだ」と強調しています。話す勉強はほとんど必要ないとし、正確に聞けるようになれば、話すことはほぼ自動的にできるとも述べられておられます。これは他の勉強法では主張されていない点です。
 
 著者は相手に対して「ゆっくり話してください」と要求することは普通できないと語りますが、確かにそうです。単語を1000語程度しか知らなければ、その範囲内で話してくださいとも相手には言えません。そうなると、とにかく早く話す相手の正確に理解できるためにはリスニングを集中的に勉強することが重要なのです。

 また、正確に聞けなければ、「質問できても、答えがわからない」状態に陥り、それでは質問しても意味がありません。まったくその通りで、「いくらですか」と聞いても金額が聞き取れなければ会話は成り立ちません。

 そのため、聞くことの練習が最も大切ですが、さて、何時間やればいいのかというと、あとは最低1000時間は必要と著者は言われております。高校まで出た人であれば、3000時間ぐらいはこれまでにやっているので、1000~2000時間、だいたい2年ほど聞き続ければ上達します。細切れの時間を利用するなどの方策についても紹介されていますが、ただ漫然と聞くのではなく、意味が聞き取れるまでしっかりと聴き倒す必要があるのです。

 リスニングにはいろんな素材がありますが、著者は有用な素材を書籍内で紹介しており、これは必見。ただし、映画を英語の素材するのは初心者や中級者にとっては不適切ともしています。確かにそれもそうで、スラングなども出てくるためになかなか難しい。となると、スピーチなどが最もいいことになります。

 これは英語に特化して勉強法を紹介しておられますが、個人的にはほかの言語での勉強法にも適用できると思っています。上記のような方法で確実に勉強していけば、語学というものは確実に身につくもの。また、著者は「語学の勉強は楽しい」とも語っていて、確かに英語だけでなく、いろんな言語を勉強するのはとても楽しい。この楽しさが上達にもつながるので、語学はいつも楽しくやるべきなのだと語っておられます。


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