見出し画像

人間ドック奇譚。前編

 健康状態には臆病な方である。
 小学2年生で自家中毒を発症。以来、気持ちで体調を左右されがちなもので、「気になるくらいなら病院で検査派」として生きてきた。お胸と婦人科はそれぞれ専門医で年一の定期検診。それ以外は住んでいる地域の健診専門の医療機関で人間ドックだ。
 今年もそんな季節がやってきた。健診前にストレスをかけてくるのがウンコ問題。ドック1週間前から二回対峙しなくてはならぬ。自慢じゃないが、ワタシの腸は繊細だ。タイミング、清潔さ、周囲の環境、できれば人払い…などなど、ちょっとでも気に掛かることがあれば「きゅっ」と便意はどこへやら。「出したらすぐにピックアップ」なんてミッション、気に掛かるどころじゃない。
 とかなんとかありまして、当日は検尿ともども携えてドック会場へ。「問診票と検体を」とこちらの恥じらいなどお構い無しに受付は進む。ここからはもうシステマティックにというか、ベルトコンベアのごとく流れ作業に乗っていくだけ。

 札幌で何度かお世話になっているドック医院は男女混合だ。以前、女性だけのところにも行ったことがあるが、これはなんというか、スパの休憩所のような雰囲気で、気分的には女性だけの方が楽。とはいえ、慣れれば男性といっしょでも気にならなくなる(ほら、診察着を一枚ぺろんと着ているだけなので、最初はキンチョーした)。
 見れば不思議な光景である。
 同じデザインの衣服をまとい、中年以上の他人が一定間隔で座っている。お互い会話もなく(そりゃそうだ)、医療機関の方々の指示に従い、できるだけスムースな流れの邪魔をしないようにと動いている。ここでは役職も肩書きも関係ない。どんなに偉くても、どんだけペーペーでも、胃の検査が終わるまでは水を飲んではいけないのだ。

 今回不思議だったのが最初の問診でのこと。なんだかいつもより丁寧に聞き出してくれる方で、自分で書いた問診票より既往歴のチェック項目が増えた。続いてメジャーを取り出して、いわゆるメタボチェック。腹回りを測ってくれるのだが、ここで担当の方が焦り出したのだ。「あら??ええと…うーん、もう一度計測してもいいですか?」え、ええ。「んー、ああ、そうですね」なにか納得したようだ。
 どうやら、昨年から「あら??」と思うくらい数値が増えていたらしく、間違いかと再度計測したようだ。ええ、既往歴を丁寧に確認してくれたアナタは間違ってはいない。考えられる原因はふたつだけ。
 1.まぎれもなく増えた
 2.昨年は腹を引っ込めてしまった

ともかく、こんな結果、カーブスのトレーナーさんには聞かせられない。
ああ。なんかがっかり。腹圧を入れて暮らそう。明日から。
 と、ドック序盤で落ち込むことになってしまったが、ここからが本番である。

後編へつづく。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?