『裏窓』についてのメモ
ヒッチコック監督『裏窓』(1954)は、向かいの「裏窓」での殺人をジェームズ・ステュアート演じる写真家ジェフが恋人のリサ(グレイス・ケリー)とともに追求していく映画である。映画はほとんどジェフの視点で語られてゆき、緊張感あふれるショットに観客は加速度的に引き込まれていく。特に、犯人が外出しているすきにリサが向かいの部屋で事件の証拠をあつめ、すると犯人がちょうど帰ってきてしまうシーンは手に汗握るものだ。このとき観客は、自分の視線がジェフと完全に同化していることに気づくであろう。
が、私が心打たれたのはストーリーとは直接関係のない、不意におとずれるジェフとリサの接吻シーン。このショットのあまりの美しさに、私はしばらく呆然としていた。ヒッチコック、畏るべし。
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