憧れのカウンター席

ドトールで席を探していた親子の会話。

「テーブル席にする? それともカウンター?」

「カウンター…?」

「ほら、こういう席。でもテーブルのほうが広いわよ」

「カウンターにする!」

注文前に席を探しに来たお母さんと少年が、お店の中を行ったり来たり。

言うが早いか子どもはすでにカウンター席の丸イス(背もたれなし)に座り、足をぶらぶらさせてテーブルの上で握りこぶしをギュッ。

傍から見ていて、微笑ましいくらいにわくわく感がにじみ出ている感じ。

「じゃあ、窓が見える席にする? それとも一番端っこの壁側がいい?」

「はじっこ! あのね、鏡があるから!」

とサンドイッチを頬張りつつ、ちらちら自分の横顔を眺めている少年の会話を聞きながら、自分にもこんな時期があったのかなーなんて遠い目をしつつ思いを馳せておりました。


わたしのカウンター席デビューは、たしかケンタッキーだったような気がします。

母と一緒にポテトとジュースと骨なしチキンを頼んで、あみあみ風かご(表現が難しい……)の容器にメニューを載せてもらうのが嬉しくて、わたしは席取り係で、水色とピンクの座席カバーの丸い背もたれなしのイスを二人分、確保しておくことが店内での役割りでした。

足をぶらぶらさせたり、伸ばしてみたり、普段は向い合って食べることが多いのに、カウンターだと母と横並びで食べるので、その位置関係もまた新鮮で、わくわくそわそわしていた、そんなことがフッとよみがえってきました。

今ではGPSが入りやすい、窓際のカウンター席でスッススッスとモンスターボールを投げる大人になってしまいましたが……少年よ、その気持ちを忘れるでないぞ……。

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