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舞台写真の撮り方を教えます。

演劇ぶっくのカメラマンから30年、ずっと舞台を撮ってきました。設定の数値から技法まで、聞かれたらいつでも答えています。

自分が納得できない舞台撮影は引き受けられない。しないんじゃなく、できないんです。不器用だからかな。でも出演者の人もそうじゃない?シャッター押せば写るけれど、それは「撮る」じゃない。

写真は撮影テクニック以前に、被写体を知って相手に寄り添うことが大切。その姿勢まで含めて撮影技法かもしれません。舞台撮影は舞台作りと同じ。公演ごとにオーダーメード。


僕が習った写真学園にすごい先生がいてね。室内空間やインテリアを撮る神様のような人。「これどうやって撮ったんですか!?」聞くと覆い露光を教えてくれました。初めて聞く技法です。暗室で写真を焼くとき部分的に覆い焼きをしますが、そのフィルム版。長時間露出の間にカメラの前で手を動かす。写真を見せながら「ここは5秒くらいこうやって手を動かすんだよ」実演してくれて。ほかにも、聞けばなんでも教えてくれました。

長年の経験で得られた、とっておきの技術。それを惜しげもなく全部教えてくれるんです。あまりのサービスぶりに、心配になった学生が聞きました。「そんなことまで教えたら、仕事が取られて無くなりませんか?」すると先生の言葉が、ふるってるんですよ。

「今日はあなたに負けるかもしれません。でも明日はきっと私が勝つでしょう」教えたデータ通りに撮れば、今日は自分が負けるかもしれない。でも撮影現場は毎回違う。条件が変わるから、わからないあなたに明日は勝つでしょう。

データや技法をどんなに真似しても役に立たない。だから設定数値からライトの位置まで全部教えても平気なんですね。一番大切な教えは「技法をそのまま真似しても役に立たない」ってことでした。


技法をたくさん知れば、うまくなった気になるかもしれません。けれども「いつどこでどの技法をどれだけ使うか使わないか」大切なのはこっちなんです。あとから「知ってたけどできませんでした」と言うより「なんとなくこんな感じ」感覚的に決めていく。頭で覚えた技法は使えない、感覚的に身につけたものが自分の技。...なんとなく演技に似てると思いませんか。

すごい人ほど聞くと親切に教えてくれる。たいしたことのない人ほど「それは秘密」と教えない。僕は前者になろうと思いました。全部教えて真似されて、今日は負けても明日は僕が勝ってしまうよ。

以来、シャッタースピード、絞り、設定感度...聞かれるまま全部教えます。秘密とか有料で教えるとか、そんなこと全く考えない。むしろステキな舞台写真を撮る人がどんどん現れて、イイカンジの舞台を観に行く人がどんどん増えてほしい。心からそう願っています。


そんなわけで、もし僕の舞台写真の撮り方を知りたい人がいたら、なんでも聞いてください。なんでも答えます。質問でもいいですし、撮りながら教えてもかまいません。twitterのDMは開けています。東京に限らず全国に出張して役者やダンサー、劇団やダンスカンパニー、社会人サークルから部活まで応援しています。写真学園の講師をしていたので、教えることと育てることは自信があります。もちろん最初は心がまえから。

公式に依頼されたからって、わがもの顔にふるまってはいけません。ゲネプロは撮影のためにあるんじゃない、舞台最終チェックの場なんです。照明さんや音響さん...ステージスタッフさんたちにとって、あなたはいなくていい人。むしろいないほうがいい存在。それくらいに思ってください。さて、あなたはまずどうしますか。


もし舞台撮影に技法があるなら、僕はまず、舞台作品と寄り添うことの大切さやその方法について語らずにいられません。台本を読んだり稽古場通しを見学したり。けれども劇場に入って場当たりでテスト撮影したら、一度全部忘れて頭の中を真っ白にする。なぜでしょう?

役者は毎回リアルに演じて、観客はリアルに反応します。そんな中で先回りして次の反応を狙えば、たとえ決定的瞬間が撮れたように見えてもそれはただの自己満足。とても「あざとい」写真になってしまいます。舞台撮影も演技と同じ、毎回新鮮に反応することが大切。楽しちゃいけない、安心しちゃいけない。


そもそも舞台撮影の技法とは、きれいでカッコイイ写真を撮るためのものではありません。舞台を観た人、これから観に行く人、まだ興味を持っていない人...誰に何を伝えたいのか。作品を記録して残すほかに、そうした実用的な面もあるんです。カッコいいチラシができた!と身内で盛り上がるだけでは、チラシは役に立ってないのと同じです。

観劇が特別なものではなく、海外のようにもっと身近になるとステキだと思いませんか。

値段、質、情報、助成金、チケット入手の方法...改善されるべき点は、いくつもあります。僕は「舞台のありのままの魅力」気配や臨場感を伝えたい。そう思って舞台写真を撮っています。


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