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失敗に学ぶ、インターンシップ受け入れ成功のコツ「ETIC.ソーシャルイノベーションセンターNEWS」2022年3月15日号

こんにちは、野田香織です。

​​​​​​さて、3月に入って、大学生の就活が動き始めてますね。DRIVEのキャリアコーチングにも、時々学生からの就活相談がやってくるのですが、ほとんどの学生がインターンシップの経験があることに驚きます。しかし、その中身はというと、数日で終わる仕事体験や、目的が不明瞭な活動もあり「働く意欲がなくなってしまった」「このまま社会に出るのが不安」という声も耳にします。インターンシップは、参加する学生にとっても、受け入れる組織にとっても実りある機会になるはずですが、何が違うのでしょうか。

インターンシップがコケるには訳がある

​​​​​​ETIC.が本格的に事業を開始した1997年頃のメイン事業は、ベンチャー企業と大学生のインターンをマッチングする「長期実践型インターンシッププログラム(Entrepreneur Internship Program = 略してEIP)」でした。

当時、渋谷に集積していたITベンチャーにとって、挑戦の場に飢えていた大学生たちの情熱は、事業を加速するための大きなエンジンとなっていました。ここでのETIC.の役割は、インターンを受け入れる側の企業と、派遣される大学生の間に立ち、双方にとって最適な機会になるようプロジェクトを設計し、相応しい学生とマッチさせ、伴走をすること。「コーディネーター」という仕事が生まれたのも、この時のことです。

ETIC.の創業当時からさまざまなインターンの現場と向き合い、現在はコーディネーターの育成に携わっている伊藤淳司にインタビューしたところ、失敗するインターンシップには、大きく3つのパターンがあること、そしてそれに対する策を提示してくれました。

【伊藤淳司プロフィール】
1997年からETIC.に参画し、日本初の長期実践型インターンシップ「アントレプレナー・インターンシップ・プログラム(EIP)」の事業立ち上げに携わる。コーディネーターとして、これまで800社以上の実践型インターンシップを活用した人材育成、少数精鋭組織のコンサルティングに関わる。2004年から「若者×経営者×地域=挑戦が生まれる日本」を目指すチャレンジコミュニティプロジェクト(チャレコミ)に参画。現在も日本全国の多様な地域・セクターのコーディネーター育成を担当。その他、社会起業家予備軍の成長過程におけるプロセス評価分析、行政・地方自治体との創業起業支援、リーダー育成協働プロジェクト、大学との実践型カリキュラム開発も担当。早稲田大学MBA取得。専門は『起業家型人材が有する思考・行動特性(コンピテンシー)に関する研究』。

インターンシップが失敗する理由<その1>
期待をしていない

​​​​​​スキルや経験がない学生のために、失敗しても差し支えない仕事や、本業では実際には必要がないプロジェクトを「わざわざ」つくっているパターンです。こうなると受け入れ側の仕事が増える一方で、インターン生が来てもまったく仕事は楽になりません。おそらく学生側も、自分に期待されてないことも敏感にキャッチするでしょう。

一方で、学生インターンを単なる「安い労働力」と見ている企業・団体も、残念ながら存在します。インターンシップと言えば、モチベーション高く取り組んでくれると思う人もなかにはいるようですが、決してそうではありません。もし、任せたい業務タスクが明確にあるなら、アルバイトを雇ったほうが、確実にアウトプットを出せるでしょう。

皆さんの企業・団体で、本当はやりたいけど、なかなか着手できていないこと。その中でも自社の方向性を考えるうえでも大事なこと。そこを大学生と一緒に挑戦するゴールに設定することで、インターン生にとってもやりがいのあるインターンシップのプロジェクトとなります。​​​​

インターンシップが失敗する理由<その2>
仮説がない

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学生らしく好きにやってほしい、といいつつ実際は放置。経営者もコミットしないパターンです。自由にのびのびと挑戦してほしい、と言えば聞こえは良いですが、扱っているサービスや商材の市場など、前提となる知識が全くない学生に、アイデアをまるごと依存しすぎるのは問題です。

特に最初1か月のマインドセットは重要。何のためにインターンを導入するのか。受け入れをしてどんな仮説検証をまわすのか。そのためにインターン生に身につけてもらう知識やスキルにはどんなことがあるのか。できれば、半年ごとの成果目標が欲しいです。

ETIC.ではよく「お金をかけてでも、やりたいことは?」と問いかけます。トップが「本気でやりたいこと」はどんなことなのか。実際にそれはトップや社員だとどのように進めるのか(=これが仮説)。そのイメージを明確にしておくことは、インターンシップのプロジェクトを計画する上でも非常に重要です。​​​​

インターンシップが失敗する理由<その3>
学生が受け身

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前段で「わざわざ」学生用の仕事をつくるデメリットを書きましたが、事業に影響がない範囲で切り出されたプロジェクトをあてがわれて、誰が本気で取り組むでしょうか。

お客さん扱いをすればするほど、指示を待つ態勢がインターン生側にも根付いてしまい、自分で考えたり、決めることができなくなります。こうなると永遠にインターン生に業務を切り出し、指示命令を繰り返さなければならず、お互いに疲弊してしまいます。

やはりここでも、事前のセットアップが大事になってきます。「何のためにやるのか」という対話のなかで、インターンをすることの動機付けや、目標の設定のほか、具体的な計画をともにつくっていただき、定期的なフィードバックをおこなってほしいです。

ETIC.ではインターン生に担当のスーパーバイザーがつき、月に1回振り返りミーティングをしています。想定していた目標に対して、何ができて、何ができなかったのか。そこでは何を学び、気付いたのか。次はどんなことに挑戦したいかなど、内省の促しや意味づけを繰り返すことで、インターン生の自己効力感も、また、受け入れ側の経験知も高めていくことができます。

また、EIPを実施していたときは、インターン生の学び合いのコミュニティを組織し、互いの成長に貢献し合う「相互メンター」として、インターン生同士が仕事上の悩みや目標を相談し合い、教え合う関係性づくりを意識していました。自分が教える側に立ち、プロジェクトを背負っているという当事者意識を持たせることも、主体性と意欲を引き出す工夫の一つです。


いかがでしたでしょうか。この春から、あらたに学生インターンを迎えたい企業・団体も多くいらっしゃることと思います。わたしたちの経験が、なにかの参考になれば嬉しいですし、学生インターンの導入で悩ましいことがあれば、遠慮なく相談していただきたいとおもいます。

<参考資料>
成長する企業のためのインターンシップ活用ガイド「基本編」「活用編」(発行:経済産業省)

<ご案内>
◎インターンシップの受け入れや相談を希望する方は、DRIVEインターンのWEBサイトからお問い合わせください。>>こちら

​​​​​◎長期実践型インターシップのコーディネートができる人材も育成しています。
「地域コーディネーター養成講座」
名称は「地域コーディネーター」となっていますが、効果的な実践型インターンシップの受入方法を学ぶ講座ですので、都市部の企業・団体からの参加も大歓迎です。お気軽にお問合せください。

- INFORMATION -

ソーシャルベンチャー・パートナーズ東京(SVP東京)
2022年 投資・協働先募集のお知らせ <締切3/31>


ソーシャルベンチャー・パートナーズ東京(SVP東京)は、社会課題の解決に取組む革新的な事業に取り組むソーシャルベンチャーを、投資・協働先として募集します。

2005年より社会起業家との協働を開始し、これまで60以上の団体と一緒に
社会課題の解決を目指してきています。100名を超えるビジネスパーソンであるパートナーが一人一人の専門性を発揮し、チームを作って伴走役を担うことによって、団体の組織基盤強化(キャパシティビルディング)や社会的インパクトの拡大に向けた支援を実施してきました。

社会起業家との出会いは、わたしたちにとっても世界を見る視野を大きく広げ、また一人一人が生きる意味を考える大きなきっかけを与えてくれます。

本年も素晴らしい起業家のみなさんとお会いするために、投資・協働先選考を開始いたします。100名以上のパートナーが半年近い期間をかけて、みなさまがとりくむ社会課題と事業について理解を深め、議論を重ねていきます。みなさまからのご応募をパートナー一同、心から楽しみにしております。

◎投資・協働先募集について、詳しい情報はこちらから。

◎投資・協働先の応募締切:2022年3月31日(木)23:59

◎選考スケジュール
・3月31日 投資・協働先募集締切り
・4月16・17日 応募先団体による口頭補足説明(任意)
・5月28日 1次選考
・7月16日(予定) 2次選考
・7月下旬~8月上旬 最終選考
・10月~ 協働開始
※各日程の詳細、応募方法については、「投資・協働先募集要項」をご確認ください。

◎投資・協働先の募集に関するお問い合わせは、下記までお願いします。
 連絡先:svpt.inquiry@svptokyo.org 

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Editor's Note - 編集後記 -


2月からソーシャルイノベーション事業部に参画しました、インターン生の池田彩恵です!大学3年生、就職活動が本格化するこの時期に長期インターンに挑戦する例は中々珍しいのかもしれません。それでも、この決断をしたのには理由があります。

ジェンダー問題を労働環境の改善という側面から解決したい!という思いから、3年生の11月にボーダレスジャパンに社会起業家としてエントリーしたことが全ての始まりです。資料を30枚準備して書類審査は通ったものの、面接で撃沈しました…。

「なぜ、起業家になりたいのか」そもそもの部分が全く自身で突き詰められておらず、不通過。社会起業家そのものへの理解も足りなければ想いも足りない。ソーシャルセクターの実像に対して、圧倒的に勉強不足であった状況を変える必要性が私にはありました。ETIC.に出会い、活動を始めて、はや2週間が過ぎています。視点を変え、考えを深め、仮説を立てながら様々なプロジェクトに向き合うこと。これがやりがいと、そして楽しさを生む原動力になっていると実感する日々です!

発行元:
NPO法人ETIC.ソーシャルイノベーション事業部
incu@etic.or.jp

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