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コーディネーターの仕事とは、ユースセンター起業塾「ETIC.ソーシャルイノベーションセンターNEWS」2021年11月30日号

こんにちは。ソーシャルイノベーション事業部の白鳥です。次世代リーダー育成とローカルイノベーション事業部を経て、今年度よりソーシャルイノベーション事業部に参画しました。主に企業基金や財団運営のお手伝いのほか、管理部としてETICの組織体制の変更に関する業務などを担当しています。

先月、ETIC.の最新のアニュアルレポートが公開されました。

コンテンツの一つに、『ETIC. の仕事、コーディネーターとは?』という特集があります。「コーディネーター」とは、人と人をつなげる、人と組織をつなげる、組織と地域をつなげるなど、異質なもの同士をもつなげて新しい価値を生んでいく存在です。

何人かのコーディネーターがコメントを寄せた中で、個人的にとりわけ中身が気になったのが、ソーシャルイノベーション事業部の加勢のコメントです。

個・組織・領域(地域/課題)のコーディネーターが存在し、それぞれに役割が違う。共通点は、対象に認識されないようにしつつも「パラサイト」「憑依」し、距離感を大事にしながら、密接な関係性を築くこと。対象が目指す社会や未来の実現に対して、大局的、多角的な視点を持ち相対する。いつか、価値があったと思ってもらえれば成果。

今回は、社会起業塾をはじめ、さまざまなプログラムで長年活動している加勢に、コーディネーターとは何か、また、読者の皆さんが企業・団体の仕事で活かせそうなヒントについて聞きました。

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加勢 雅善 / ETIC. ソーシャルイノベーション事業部
2005年にNPO法人ETIC.に参画。これまでに100団体以上のNPO・社会起業の立ち上げを担当。大手企業・外資系企業CSRと連携プログラムを多数実施。東京都ひきこもり等の若者支援プログラム支援事業選定・評価委員(2011~現在)NPO法人アスクネット(愛知県名古屋市)理事、NPO法人森の生活(北海道下川町)理事。

相対する対象のニーズを正しく把握し、適切な機会や助言を提供する

―最初に、コーディネーターの役割についてどう考えているか聞かせてください。

コーディネーターは、社会の中の色んな場面で存在しているよね。一億総コーディネーターといっても良い。その意味では、お見合いの場を設けてパートナーを紹介する人もコーディネーター。双方の状況を理解し、ニーズを把握し、未来を見据えて、自分のネットワークから、お互いに合う人を見つけてコーディネートする。このように、わかりやすいニーズをコーディネートすることも、「コーディネーター」。

これを読むと、何だ簡単じゃんと思うかもしれない。一億総コーディネーターという意味ではあっているけど、お見合いを価値として提供するコーディネーターは仕事として存在する。単純に人を紹介するだけなら、誰でもできるかもしれないけど、仕事としては、複雑に入り混じった状況を理解をして、コーディネートをすることが大事になってくる。ETIC.でも同じ状況が存在していると思っている。

―アニュアルレポートのコメントにあった、「領域」のコーディネートというのは具体的にどういうことですか。

見なくてはいけない範囲が広がる感じだね。人の数も増えてくる。例えば、組織でいうとETIC.であれば50人以上のスタッフがいて、インターン生を含めるともっといて、だいたい100人位のことを考えなければならない。地域であればさらにいろんな人がいるので、考えなければならない範囲もその分広がる。

ここで、コーディネーターの定義は何かというと、「相対する対象(個人・団体・地域)のニーズを正しく把握して、それに対して適切な機会や助言を提供すること」だと思う。ただし、相対する相手のニーズを正しく把握するところが難しい。けど、これができれば、その時点でほぼコーディネートができたようなもの。
相手の状況がわかると、メンター・アドバイザー、または他の起業家への相談、また他のどのような機会を提示すればいいかが見えてくる。

世の中のすべてのものがリソース(人・物・金・情報の経営資源)であるという考え方に立つ

コーディネートの仕事として、適切な人を紹介して、課題やニーズに対してアドバイスをしていただく場面がある。その際に、万能な人(特にETICでおつなぎるすのが多いのは先輩経営者)を繋ぐこともできるけど、それだけが、コーディネーターのスキルではない。
NPOの組織運営、クラウドサービス導入など、バックオフィス系の業務に課題がある場合は、「このタイミングで白鳥くんと会うといいよね」みたいなピンポイントでマッチングするのが大事なスキル。
リソースというのは優れている人や万能な人のことだけを指しているわけではなくて、世の中のすべてがリソースであるという考え方に立つのが大事。

自分なりの強みを活かしてリソースとなり、相手のニーズを把握する

時には自分がリソースを提供することもあるけれど、最初の頃はあまりないかな。ただ、自分が得意なことを、相手に提供することにより、ニーズが把握しやすくなることはある。

例えば、白鳥くんは丁寧にログを取ってくれるわけだけど、ログを取ってもらいたい起業家や組織もある。その人達にとっては、白鳥くんというのは大事なリソースとして見られている。そのコミュニケーションや、その同席する場面から、相手のニーズを把握することが可能になる。
ETIC.の場合は、人材関連に強みがある。人を紹介してほしい。転職、インターン、プロボノを採用したいときに、ご連絡をいただける。この人材の強みからニーズを把握していくことが可能になっていく。

―他にもどういった得意があればニーズを把握しやすくなりますか。

超おせっかいとか、情報をシェアしてくれるとか、何でもいいんだよ。自分なりの得意が、相手にとっての価値になることがある。得意なことからニーズを把握して、リソースをマッチングするのがコーディネーションとすると、ニーズを把握しないとリソースマッチングができない。ニーズを把握するときにどうするかというと、社会起業塾のようなプログラムに参加していれば、それを聞くことが前提になるからは難しくないけれど、そうでない場合にどうやって相手に話してもらえるか、何が必要そうかを知り得るかと言った場合に、こちら側に得意なことで価値が提供できると、相手のニーズを把握しやすくなる。

例えば、銀行員なら決算の相談を受ければお困りごとの把握ができるよね。そのニーズに対して、優秀な銀行マンはお客様に対していろんなリソースを使うことができる。銀行内のリソースをつなぐこともできるし、お客様同士をつなぐこともできる。「このニーズだったらあの社長に会ったらいいですよ」ということを言える銀行マンがいるけれど、そういう人はニーズが把握できている。ただ、その初動の把握としては、決算書や資金繰りとか、お金周りの相談から入って来るだけの話。ここまでが基本的な話で、ここから先はそれぞれのコーディネーターごとに特徴が出てくる。

目の前のニーズにただ応えるのではなく、相手にとって本当に必要なことを考える

―コーディネーターとして大切にしていることは何ですか?

単に目の前のニーズに応えるのではない、ということかな。例えば、起業家から「いい人いないですかね」という相談があっても、その組織ではいい人が来ても毎月辞めている場合もある。その場合は単にいい人を紹介しても不幸になるよね。あくまでコーディネーションというのは、両方を向いて、両方にメリットが出ないといけない。それを考えないで割り切ってやる方法はあるかもしれないけど、リソースを提供する側のことも考えることが大事で、それは結構難しい。依頼者から「お金は払うよ」と言われても「本当にそれがよいことか」ちゃんと向き合わないといけない。そのうえでその組織に人を送り込む必然性がある場合には、送る側をどうするか考えなきゃいけない。カオスを好む、粘り強い人を送り込むとかね。

―このような考えはどこで学びましたか?

ETIC創業メンバーの山内さん、敦子さん、宮城さんにそう教えられたんだよ。当時マニュアルは無かったからOJTでね。当時は、「相手が欲しているものに応えないんだ」って思ってた。以前、とある起業家が学生だった時に、山内さんと一緒に会ったことがある。彼は起業家を紹介して欲しいと思ってETIC.に来たんだけど、山内さんはできるはずなのに誰一人紹介しないの。「君はどうしたいのか」「なぜそれをやる必要があると考えているのか」をひたすら聞いて、結局最後には「もう少し考えてから来て」という話で終わった(笑)。確かに相手の最初の欲求は「人を紹介してもらいたい」ということだった。でも、後に彼からは「過去を振り返ってみると、あの時にはああ言われることが大事だった。あの時に例え誰かを紹介されていても、同じことを繰り返していただけだった」と言ってもらったよ。それがコーディネーションで、誰かをつなぐんじゃなくて、自分で自分のことを振り返ることをコーディネートしたんだ。

今まで学んだこととしては、その人のために本当になることをやれということ。その人のためというのは、相手のニーズにそのまま応えることではない。相手のためになることを選んだ結果としての最良の選択は、必ずしも相手が望んでいることではない、ということかな。

コーディネーターとしての成長を感じるのは息をするようにコーディネートができたとき

―他のスタッフがコーディネーターとして成長したと感じる瞬間はどんな時ですか?

ETIC.には息をするようにコーディネートができる人がいるけど、そういう人はコーディネートしているという感覚でコーディネーターをやってなくて、もはや日常に組み込まれているんだと思う。まだコーディネーターですと構えている人もいると思うけど、コーディネーター業が染み付いてくると抜け出せなくなってくる。コーディネーター業をアンラーンする方法があれば教えて欲しい(笑)。コーディネートするなと言われてもどうして良いかわからない。つまりは、構えていない状態になるんだろうね。

それがアニュアルレポートにも書いた、相手に気づかれない状態。相手にもコーディネートしてると思われてない。気づかれないようにコーディネートをして、気づかれないように傾聴している。それが日常的にやれていることかな。

まずは相手の生い立ちを聞くことからはじめよう

―最後に、読者の皆さんが現場で活かせそうなヒントがあれば教えて下さい。

本当に初めてであれば、相手の生い立ちから聞くことがヒントになるかもしれない。その人の背景には必ずその人の大事なものが詰まっているから。話してくれる人には、「小学生の時何が好きでした?」から聞いたりしているよ。

この前白鳥くんにメルカリ寄付のプロジェクト(※1)に入ってもらったけど、それは白鳥くんが学生の頃、ETIC.にきたときに、環境サークルにいたことを覚えていたから、声かけたんだよね。

―なるほど。ありがとうございました!

※1…2021年に、株式会社メルカリがメルカリ寄付の寄付先にサーキュラー・エコノミーに取り組む団体を追加する際、ETIC.が募集・選定の運営協力を行ったプロジェクトのこと。白鳥は環境分野に土地勘があるということで、加勢とともにプロジェクトを担当した。プレスリリースはこちら

- INFORMATION -

カタリバ✕ETIC.の新プロジェクト
“10代の居場所をつくる仲間”を支援する
「ユースセンター起業塾」公募説明会のお知らせ

10代の学びの機会や居場所を提供する事業づくりに対して、3年間の助成と伴走支援・経営支援を実施する「ユースセンター起業塾」。公募要領もホームページで公開され、応募を検討している団体向けのオンライン説明会も開催しています。

想定している助成先は、10代(小学校高学年から中高生)の意欲と創造性を伸ばす関わりと、多様な学びの機会や居場所を提供する事業。

たとえば、以下のような取り組みがあげられます。

・子どもたち一人一人の興味関心に応じた探究的な学びの提供
・不登校の子どもたちを対象とした体験活動や学習の提供
・日常的に立ち寄ることができる学び場・居場所の運営
・ICTを活用した個別最適な学びの提供
・オンラインを活用した時間や場所にとらわれない学びの提供
・地域では出会えない人材との出会いのコーディネート 等

寄付金・助成金など他のビジネスモデルとの組み合わせながら、子どもたちの経済状況にかかわらず利用できる事業を目指していただくことを前提と考えています。

自分が欲しかった機会を「つくる」側になる、
そんなチャレンジをはじめませんか。

<支援内容>
【1】助成金提供
・助成金額:1団体あたり700万円~1,500万円(3年総額)
・助成期間:2022年5月(予定)~2025年3月まで
 助成期間中、事業に対して必要な時間を割いていただくことを意図し、
 主に団体内の人件費に使用していただくことを想定しています。
 詳細は公募要領および説明会にてご案内します。

【2】伴走支援
・10代の子どもを対象とした学びの機会や居場所づくりに関する
 研修及び助言の提供
・経営面に関する研修及び助言の提供
・事務局機能の整備・強化に対する支援
・実行団体同士のネットワーキング、ノウハウ共有
・人材採用支援、メンターやアドバイザー、評価の専門家等の紹介
・連携候補となる他のNPOや企業、自治体・官公庁関係者、研究者等の紹介
・資金調達支援

◆公募条件などの詳細はこちら

◆公募説明会実施概要
・日時:2021年12月4日(土)10:30-11:30
・場所:Zoomウェビナー
・参加お申込みはこちら
※申し込み〆切は各日、前日の12:00までです。
※日程が合わない場合や日程が終了している場合は、
 アーカイブ視聴のお申し込みが可能です。

◎本事業に申請検討いただいている方または団体を対象に、
 事務局による個別相談を受け付けております。

・相談受付期間:2021年11月25日(木)〜12月24日(金)
・相談時間:30分〜1時間
・場所:オンライン
・個別相談お申込みはこちら

※複数回相談いただいても構いませんが、1団体当たり最大3回です。
※申し込み多数の場合、実施までにお時間をいただく場合があります。
※(アーカイブを含め)公募説明会を視聴いただいた上で
 参加いただくことを想定しています。

Editor's Note - 編集後記 -


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ふたたび、ソーシャルイノベーション事業部の白鳥です。本記事のインタビューを担当しました。『ETIC.ソーシャルイノベーションセンターNEWS』はじめてのインタビュー企画はいかがでしたか?

個人的には、普段一緒に仕事をしていても、こういった話を改めて聞く機会はほぼないので、とても勉強になりました。今まで加勢さんと一緒に、さまざまなクライアントの方との打ち合わせの場に同席しましたが、「あのときの加勢さんの発言の意図はこうだったのか!」と納得しながらのインタビューとなりました。

このメールマガジンでは、今回のようなETIC.スタッフが持っているスキル・ノウハウの紹介をはじめとして、これからも読者の皆さまの参考になりそうな様々な企画に取り組んでいく予定です。​​​​​皆さまも、ETIC.スタッフに聞いてみたいことや知りたいことがありましたら、ぜひリクエストをお寄せください。

発行元:
NPO法人ETIC.ソーシャルイノベーション事業部
incu@etic.or.jp

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