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成長の条件

この記事は2023/05/26に配信を行なったメルマガの転載です。 


みなさん、こんにちは。
エスノグラファーの神谷俊です。

最近は寒暖差が大きくて、日々の服装選びに悩んでしまいますね。さっそく子供が風邪をひき、それに合わせて仕事のスケジュール調整などをあれこれしている今日この頃です。



人はどのようにして成長を遂げるのか?

さて、今回のメルマガのテーマは、人が育つ条件です。

この1か月、大学のワークショップに参加したり、小学校の授業研究にお邪魔したり、企業の人事スクールに参加させていただく日が続きました。

特に今回小学生を見ている中で、改めて人が成長するためのポイントについて感じるところがあったのでまとめておきたいと思います。ご自身や部下や、お子様との関わりを振り返るうえで参考になれば幸いです。

子供でも、学生でも、従業員でも、思わず周囲が感嘆するほどの成長を果たす人にはいくつか共通点があるように思います。他者とは異なるポイントが3点ありました。


条件1:「うまくやりたい」という気持ち

1つ目の条件は、なんとかして期待に応えたい!とか、人に認められたい!とか、どのようなことであっても成果を出したいと思えるちょっと長めの取り組み(プロジェクト)を持っていること。これが非常に重要だなと。

子供だったら、コンクールにいい絵を出したい!とか、運動会でうまくやりたいとか。大学生だと、プロジェクト型授業でちゃんとプレゼンテーションをしたいとか、他のグループに負けたくない!とか。

社会人の場合は仕事ですよね。手がけているプロジェクトで成果を出したいとか、大きな提案で全力を尽くしたいとか。

いずれにしても「うまくやりたい」という気持ちがないと、誠実なアクションにつながらない。“テキトー“に済ませてしまうために、良質な経験が生まれないように思います。

この「うまくやりたい」という心理について、人材開発の理論などでは、内発的動機(自分がやりたいと思っている等の自分起点)が重要だとされていますが、よくよく観察していると、最初は外発的動機(他者や周囲に評価されたい等、他者起点)でも良さそうですね。

たとえば、子供たちは完全に外発的動機でスタートしていました。お母さんに褒められたいとか、他の子より目立ちたいとか。あと学生や社会人でも、課題だからやらなきゃいけないとか、上司から期待されているから応えなくてはいけない、みたいな外発的な動機からスタートしている。

それでも、大きな成長につながります。

大切なのは、しっかり権限を任されていて、主体的に進められる状況だということ。自分が主人公だ。他の人に任せられない。という状況だと自ずと「うまくやりたいな」という気持ちが湧いてくる。「成果の良し悪しは自分次第だな」と知覚することが大切なのかもしれません。

そういう場合は、きっかけが外発的であったとしても、結果的に内発的動機につながっていることが多かったですね。


条件2:しっかり“コケる”

2つ目はしっかりと“コケる”こと。

しっかり、というのがポイントのようです。「うまくいかなかった」「このままだとヤバイ」ことを強く知覚する経験。恥ずかしさや悔しさを感じるレベルのネガティブな経験です。

「うまくいかない」ことがあったことでどのような変化が加わるのか?

しっかり失敗した人は、前提やスタンスから問い直すというモードにスイッチが入るんです。


そもそも、準備する量が全然足りなかった。
明らかに勉強不足だった。
もっと誠実に向き合うべきだった。


このようにして、自分の向き合い方や、姿勢、在り方にまで修正のメスが入っていきます。教育工学で言うところの態度変容が始まるわけですね。これが大きな成長を生むために必要なのだと思います。

反対に、「ちょっとミスしてしまった」レベルの失敗では、大きな成長を呼び込むことができていないなと感じます。小手先の変化や微修正(「知識」「技術」の補強など)に終始してしまうことが多かったなと。


条件3:分析リソースの確保

3つ目は、なぜ“コケた“のか、向き合うリソースが確保されていること。

ここでいうリソースは、時間や気力、情報量などですね。これは、自分がなぜうまくいかなかったのか?を丁寧に分析するために非常に重要です。

分析すると、自分に不足しているものを特定したり、改善ポイントを補強することができる。つまり、学びにつなげられるんですね。


忙し過ぎて、失敗をスルーしてしまったり、あまりにも致命的な失敗をしてしまい、怖くて向き合う気力すらない状態であったり、または、反省しようにも相談・壁打ち相手がいなくて、状況を俯瞰できていなかったりする場合、

やはり大きな成長につなげることができていなかったように思います。


成長のために何ができるか?

これらの3つのポイントを踏まえると、

親として、あるいは教員として、上司として、学習者にどう向き合えばいいかが見えてきます。

1:自分が、という知覚を促す

当然ながら、学習者が「主人公」としての自分を知覚できないと主体的なアクションは生まれません。学校や親、企業や上司から「操られている」と知覚すれば、それは“自分の“プロジェクトにはなりえません。

また、教員や保護者の関わりを観察していると、任せてはいるけど、不安にもさせてしまっているケースが散見されたので注意が必要だなと思いました。

たとえば、

「これはあなたの作品なんだから、あなたがやるべきでしょ。お母さんは知らないよ」みたいなことを言う親御さんがいらっしゃいました。

これは確かに任せているとはいえるのですが、同時に不安や恐怖も刺激してしまっているわけで、主体的に「冒険しよう」とはなりにくいのかなと。

「いつも見守っている」「帰りを待っている」という安心感を付与しつつ、任せられたらより良いのかなと思いました。

ちなみに、観察したクラスの中に「生きてるだけで丸儲け!」という先生がいて、その先生のクラスは伸び伸びやってる印象でしたね。



2:ちょっとした躓きが生まれる機会をつくる

プロジェクトの途中で「失敗」を適切に設計してあげると、大きな成長を生み出す確率が引きあがるなと感じました。

たとえば、中間発表をさせたり、(失敗しても損害が大きくない)顧客やパートナーにプレゼンを聞いてもらうなど、本人が未熟さや不足を知覚できるような機会や環境を用意してあげるのも大切なのだろうと。

(かといって、ダメだしをし過ぎて、凹ませるのもダメなので塩梅が難しいところですが)


3:リソースをつくる

「なにがまずかったのか?」
「原因は何か?」
「改善したほうがいいものは?」

これらを客観的に考えるためのリソースを用意してあげるのが大事そうだなと思いました。

子供や学生の場合は、何をどのように振り返ればいいか分からないので、そもそも問題を分析するための知見(フレームワークとか、付箋で整理するとか)からリソースとして提供してあげる必要があります。

社会人であれば、振り返り方を知っているものの、知識がなく問題を特定しにくいことが多いと思うので、メンターを紹介したり、フィットする書籍や情報を提供したりすることが大事です。また、忙しくて時間をとれないなら、きちんと振り返る面談を設定するなどということも効果的ですね。

ということで、今回は成長についてまとめました。普段、社会人と接していると「育成って難しい」と思ってしまうのですが、小学生たちを見ていると、成長の構造はかなりシンプル。

複雑にしてるのは周りの利害関係や都合なのだと気付かされた1ヶ月でした。

今回は、以上です。

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