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【展覧会レポート】開館15周年記念 李禹煥|国立新美術館

こんにちは。休日の美術館巡りが大好きなRyan(ライアン)です。
今回は、国立新美術館で2022年11月7日(月)まで開催していた李禹煥さんの回顧展に行ってきました。

実際に行ってみて感じたことや学んだことを紹介します。

国立新美術館開館15周年記念 李禹煥

国立新美術館では開館15周年を記念して、国際的にも大きな注目を集めてきた「もの派」を代表する美術家、李禹煥(リ・ウファン)さんの大規模な回顧展が、東京で初めて開催されました。

李禹煥作品《関係項ーエスカルゴ》越しの黒川紀章建築 国立新美術館

本展では、李禹煥さんが「もの派」にいたる前の視覚の問題を問う初期作品から、彫刻の概念を変えた<関係項>シリーズ、そして静謐なリズムを奏でる精神性の高い絵画などの代表作や、2022年新作の作品も展示されていました。

■李禹煥さんってどんな人?

李禹煥さんは、1936年に韓国の南東部に位置する慶尚南道で生まれ、ソウル大学校美術大学入学後に来日し、日本大学文理学部で哲学科を学びました。
現在は86歳ながら、多摩美術大学で名誉教授をする傍ら、日本を拠点に「もの派」を牽引した作家として広く知られ、世界的に活動している美術家です。

近年では、グッゲンハイム美術館(アメリカ)、ヴェルサイユ宮殿(フランス)、ポンピドゥー・センター・メッス(フランス)などで個展を開催するなど、ますます活躍の場を広げており、国内では直島(香川県)に安藤忠雄さん設計の李禹煥美術館を開館しています。

■「もの派」について

「もの派」とは、1960年代末から1970年代初頭にかけて現われた、自然物と人工物を用いた作品を制作したアーティスト10数名の表現傾向に与えられた名称で、主に木や石などの自然素材、紙や鉄材などニュートラルな素材をほぼ未加工のまま提示することで主体と客体の分け隔てから自由に「もの」との関係を探ろうと試みた日本美術史の動向です。

<主な作家>
関根伸夫、李禹煥、菅木志雄、吉田克朗、成田克彦、小清水漸、榎倉康二、高山登、原口典之 など

■余白の芸術が楽しめる

ものの位置や空間との関係によって成り立つ彫刻やインスタレーション作品、ほんの僅かのストロークによる筆跡が描かれていない空白と時間の経過を示した空間的な絵画など、「作る」ことを極端に抑えた哲学が凝縮されていました。

作品《関係項》(展覧会ホームページより)

ほとんどがインスタレーション作品となっており、キャンバスの中や作品単体ではなく、その空間・雰囲気・距離感・空気などで作品の見え方が大きく変わってくると実際に行ってみて感じたました。
そのため、あらゆる作品において距離や角度を変えて鑑賞したり、実際に没入型の作品もあり、体験して鑑賞できたので素晴らしかったです。

■壁に記した言語表現と豪華な音声ガイド

会場には、あらゆる壁面に李禹煥さん本人の言葉が記してありました。
作家としても優れた業績を残しているため、詩的で言語表現が巧みなのです。鑑賞の補助線にもなり、表現自体を具現化してくれます。

人間は建てようとし 自然は戻そうとする
私はその両面の見える門を提示する
Human try to build, nature tries to restore itself
I present the gate where both sides can be seen

会場の壁面に記載のある李禹煥さん本人の言葉

さらに、展覧会では中谷美紀さんによる無料の音声ガイド案内を聞くことができました。その中には、世界各地で李禹煥さんの作品を見てきた女優の中谷美紀さんが、鑑賞ポイントをご案内し、対話なども繰り広げられており、作品に対する思いや背景をお聞きすることができました。

■自然環境と経済活動の調和

作品《応答》(展覧会ホームページより)

私は李禹煥さんの素材と余白の調和から、「自然環境と経済活動の調和」を感じました。素材そのままで自然そのものと調和できる素晴らしさが現代社会には存在し、地球に住むことを考えるとこれ以上の経済発展は必要ないのだとものとものの余白から感じました。こうした人それぞれの考えを余白から想像することができるのです。

自己は有限でも
外部との関係で無限があらわれる。
表現は無限の次元の開示である。

– 李禹煥 –

個人的ベストワン作品

本展で展示されていた全61作品の中から、個人的ベストワン作品を紹介します!

屋外作品《関係項ーアーチ》

個人的ベストワン作品は、2022年の最新作《関係項—アーチ》です!
唯一屋外にある作品で、六本木のど真ん中に不思議な空間が生まれていました。2014年にヴェルサイユ宮殿で発表されたアーチ作品のヴァリエーションとして制作された本作品は、冬の松本で見た虹から想起されたそうです。
ステンレス製のアーチの両脇には石が置かれ、その下にはステンレス板が設置されていました。

アーチをくぐると、鳥居をくぐったような感覚で新たな世界・空間に入ったような体験が出来ました。実際には変わっていないのですが、とても幻想的なので、くぐる前とくぐった後で違った鑑賞することができるのです!

さいごに

本展は、本人自ら展示構成を考案したこともあり、李禹煥さんを知らない方でもどのような方でどのような活動をされていたのかが時系列で分かりやすくなっていました。

みなさんも「もの派」というアートから自分自身を考えたり、瞑想したりしてみてはいかがでしょうか?
香川県の直島には安藤忠雄さん設計の李禹煥美術館がありますので、ぜひそちらも足をお運びください!

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