To She A ①

母の死

ベッドに横たわる母の呼吸が浅くなる。
母に繋がれた機械の音が、命の終わりが近いことを知らせる。

呼吸が乱れ、少し苦しそうな姿。
それが母の最後の姿だった。
機械音が鳴り響く部屋で、先生が母が亡くなったことを改めて教えてくれた。

不思議と涙は出なかった。それが自分の患っているうつ病のせいなのか、悲しくないだけなのかはわからない。

その後葬式業者へ連絡をして、母の葬式の手配を行なった。葬式業者はご愁傷さまでしたと繰り返すが、綿のように軽い言葉は、耳をすり抜けていくような感覚だった。

僕は母と29年の時間を過ごした。
苦しいことばかりだった。何度振り返っても幸せだったとは言えない。
でも、この時初めて母の死に涙を流した。



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