読書記録1 『世界で最も美しい10の科学実験』 Robert. P. Crease - 「美」とは何を以って決まるのか?

ある講義にて、電子の波動性の実験的証拠となった「電子の干渉縞実験」がその一つに入っているとして紹介された書籍:『世界で最も美しい10の科学実験』(Robert. P. Crease著 青木 薫 訳   日経BP社 2006)

科学における「美しさ」...自然科学の美しいものと聞いて...Eularの式は美しく、対称な図形・構造物もまた美しい。ダイヤモンドの輝きも、それを構成する炭素原子の構造も...無数のものが無数の指標で「美しい」と言えそうです。

また、「科学の魅力は?」と聞かれ、「美しい」という答えもよく目にするように思われ、科学を追求する上での大きなモチベーションもなっていそうです。

そこで、「美」とはいったい何なのか?どういう基準でどのような実験が選ばれているのか?を確かめてみるべく、この『世界で最も美しい10の科学実験』を手に取りました。

内容と新たな学び

その実験が理解の刷新のきっかけとなった、という実験から得たものが世界に大きなインパクトを与えた実験が「美しい」ものに選ばれているのは勿論のこと、「美」とは(より広い場面での使われ方も含めて)以下のようなものであると捉えました。

「個々のそのもの自体を超えて、決定的な気づきをもたらすもの」

美しい実験は、(既存の理解を塗り替えて)決定的な気づきを我々にもたらし、我々の理解の枠組みを一新する。そのもの自体が我々に語りかけるように。

「個々のものを超えて」:見ているそのものだけでなく、その意味がより広く適応できるように...普遍性を持って かつ 「決定的に」:そのものの持つ意味が疑いの余地なく、明確に伝わるように。 

明確かつ個々のものを超える...オイラーの式の例で言えば、指数関数・虚数といった個々のものを超えて、三角関数も含めてそれらを結び付けた意味を持つ。しかも、単純な式として。(...現状の私の知識の範囲での解釈です。より正確な・有意な意味もあるかもしれません)...「美しいもの」はやはり明確にどのように魅力的なものなのかを伝えているように思います。


その他、1つ興味深い指標として「深いこと」とありました。 

「深さ」とは "どれだけ基本的であるか" の指標である、とG. H. ハーディ『ある数学者の弁明』を引用して述べられていました。

例えば、我々の住む地球・宇宙はどのようであるか、起源は何処にあるのか...これが人類がずっと追い求めてきて、今尚盛んに研究されているテーマのように、「より基本的な問」は人々の潜在的に持つ関心のように思いました。

得られた、または繋げられた理解がより「基本的」なものである程...我々は(何処か潜在的に)惹きつけられる。そんな印象を何となく感じています。

科学の「美」を求めるために、何を追い求めるのか...に関して何となくの私見

「美」に何となく惹かれながら、科学を追求する者として...どのようなものを追い求めるべきなのか?

"決定的な気づきをもたらすもの"ということを踏まえると、これまで明示的には気づかなかったことを明確に示し、理解の転換点となるようなものが我々の探すもの...かつ、より基本的な疑問を指し示すもの

...と思うこの頃。この道をを求めるべく、鍛錬を始めた身として。


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