米国で活躍する日本人スタンダップコメディアン
サク・ヤナガワ(本名:柳川朔)さんは、1992年生まれ。幼いころからメジャーリーガーを目指し、野球に打ち込んでいましたが、肘の怪我で断念。夢中になれるものを失っていた大阪大学2年生の冬、たまたま見ていたテレビ番組で、ニューヨークで活躍する日本人スタンダップコメディアン、RioKoikeさんのことを知りました。
マイク一本で言葉も背景も異なる人々を爆笑の渦に巻き込むその姿を見て、サクさんは、とっさに「わっ、これや!」と思ったそうです。衝動的にRioKoikeさんのFacebookに、「僕もやりたいです。今からそちらへ飛びます」とメッセージを送りました。
思い立ってからのサクさんの行動の早さには驚きます。翌日の授業はさぼり空港へ。カウンターで一番早くニューヨークに到着する航空券を購入し、初めての米国へと旅立ちました。人生初、しかも英語のネタは飛行機の中で書きました。
サクさんの当時の英語レベルは日常会話程度でしたが、ニューヨークに到着するやいなや、コメディクラブ16カ所をアポなしで訪問。「皿洗いや床磨きをする代わりに舞台に立たせてくれ」と頼み込みました。けんもほろろに断られる中、1カ所のクラブだけが「今日の夕方、ここに戻って来なさい」と言って、「オープンマイク」と呼ばれるイベントに参加させてくれました。
そのことがきっかけで、2日後にはそのままシカゴの有名コメディクラブ「The Second City」での「オープンマイク」にも参加することになりました。
「オープンマイク」とは、スタンダップコメディアンの登竜門的な位置づけで、ギャラは出ませんが下積みにとっては必要な舞台。プロとして活動している者のほとんどが、そのキャリアを「オープンマイク」からスタートさせているとも言われています。
こうして2014年、 サクさんの 「スタンダップコメディアン」としての人生が始まりました。
サクさんは現在シカゴの複数のクラブにレギュラー出演していて、年間400本のステージに立っています。2021年フォーブス発表のアジアを代表する30歳未満の30人にも、エンターテインメント・スポーツの部門で選ばれました。
※Saku Yanagawa - Forbes 30 under 30 Asia 2021
自身の著書『Get Up Stand Up!たたかうために立ち上がれ!』の中で、サクさんはジョークが米国ではたしてきた役割について語ってます。多民族国家の米国において、ジョークとは、「他者にとって『自分が敵でない』ということを示す」コミュニケーションの手段だったと言われているそうです。
大きく文化の異なる両者が、ジョークを通して歩み寄ることで、「あなたの敵ではないですよ」と示しあい、お互いの非交戦的な関係性を構築してきたのだそうです。
サクさんが連日のようにマイクを握りネタを披露するコメディクラブは、観客が、自分とは異なる視点や意見を持つ人に出会い、なおかつそれを笑うことができる場所だと、サクさんは捉えています。
その日たまたま同じ会場に集った観客同士がひとつのジョークで笑いあえたとき、少なくともその一瞬だけは分断などどこかへ消えて無くなると、サクさんは信じています。
お互いの言葉や文化、歴史的背景の違いを理解した上で心を通わせる、笑いあうことができるというのは、外国語を学ぶ私たちの一つの目標でもあるかもしれません。
サクさんのスタンダップコメディの動画は下記URLでご覧いただけます。新型コロナ感染症、人種差別、第2次世界大戦等々、サクさんの独自の視点でのネタを披露して、会場を沸かせています。
※Saku Yanagawa Standup Comedy (June 2021) 8 min @Chicago
サクさんがホストを務めるポッドキャストもお薦めです。毎朝、『ニューヨークタイムズ』に始まり、『ワシントンポスト』『USAトゥディ』『シカゴ・トリビューン』『シカゴ・サンタイムズ』、そして日本の新聞3紙等、全8紙を読むというサクさん。ポッドキャストの話題も、政治、経済、エンターテインメントなど多岐にわたり、今米国で何が起こっているのか、サクさんの視点で知ることのできる、とても興味深い内容になっています。
※Saku's Radio from Chicago
サクさんに興味をもたれた方は、彼の著書もお薦めです。サクさんの生い立ちや、スタンダップコメディについて等。そして、実際に舞台で披露したネタを、自身の解説付きで紹介しています。
※『Get Up Stand Up!たたかうために立ち上がれ!』(Saku Yanagawa (柳川朔) 著 )
サクさんが紹介されたテレビ番組です。
※1億人の大質問!?笑ってコラえて!
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