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アイスブルー~満身創痍の卒業式で着たドレス~

アイスブルー

アイスブルーの定義はよくわからない。

パステルブルーやライトブルーとも違う、氷をイメージさせるような冷たい色。

 私の高校は私服の学校だったから、卒業式の服装も自由だった。だから、スーツ、和装、袴など様々な装いの卒業生がいた。その時、私は和装だった。母が若い時に祖母(私からすると曾祖母)に作ってもらったという山吹色の振袖。私は袴を穿きたかったのだが、「それは大学の卒業式で着られるでしょ」と言われ、渋々母の振袖を着て卒業式に出た。

 それから、数年の時を経て今度は大学の卒業式。今度こそ袴を、と思っていたけれど、丁度その頃、祖母が危篤状態であり、卒業式に出席できるかどうかも危ないくらいだった。

 袴をレンタルすると、レンタルの手配も必要。着付けの手配も必要。髪のセットのために美容院の予約も必要。それらにかかるお金は大きなものだ。それに、もしも卒業式に出られなくなった時に多くの人に迷惑をかけることになる。

 そう思って私は、袴を断念した。代わりに、ドレスをレンタルした。ドレスなら自分で着られる。それに、袴よりレンタル料もかなり安い。

 そして、祖母は卒業式の数日前に他界し、殆ど睡眠をとらずに葬儀を終えた体は限界で卒業式を欠席しようとも思ったが、「誰が何と言おうと俺は行くからな」という父の主張によって満身創痍のまま卒業式に出席した。

 その時のドレスはホルターネックの膝より少し長めの丈のAラインドレス。それに、黒のレースのボレロ。靴と鞄はボレロに合わせて黒。髪は美容院を予約する間もなかったので、卒業式の前々日にウィッグを自分でセットし、美容院へセットには行かずにアッシュ系ライトブラウンのロングウィッグを被った。

 この時のドレスは、アイスブルーだった。例えるなら、シンデレラのドレスの色のような色だった。シンデレラよりはジャスミンの方が好きだから、シンデレラに合わせたわけではないよ。(笑)

 卒業式の会場につくと、周囲は袴姿の女の子ばかりで、それを見ていると少し辛かった。だけど、知らない人から沢山話かけられた。知らない女性から沢山ドレスを褒めてもらえた。

 袴がいいと思っていながらもドレスにしたけれど、どうせ着るならこだわろうと選んでコーディネートをしていたから色んな人に褒めてもらえたのは嬉しかった。だから、アイスブルーと聞くと、私は大学の卒業式を思い出す。

 余談だけど、私の当時の地毛は暗い茶髪でショートだった。それなのに、なぜか私のゼミの教授は後姿だけで私に気付いてくれた。なぜ気付いてくれたのかは謎だ。

 アイスブルーのドレスもよかったけれど、やっぱり袴への憧れは消えない。もし大学院に行ける日が来たなら、今度は袴がいい。今度こそ。

 だけど、普通じゃ面白くない。

 昔から思い続けていることだけど、その日が来たら、宝塚の卒業式みたいなアレンジを加えたいと思っている。