僕と弟

僕には弟がいる。
年齢差で言えば、10歳違う。
戌年で、僕が10歳のときに、自分を持ち始めた時にできた弟でほんとに可愛かった。
戌年だから、という訳ではないのだろうけど、兄ちゃん兄ちゃんとよく僕の後ろを着いてきてたのが子犬みたいで可愛かった。
いや、むしろ子犬だと思う。人懐っこい笑顔で家族だけじゃなく、ご近所さんでも評判で可愛がられるくらいに愛想がいいと言うか愛嬌のある男の子でした。
だからだろうか、携帯ゲーム機で一緒にやれるゲームがあるとバイト代で弟と自分用のゲーム機やソフトを買ってきたり、ソフトがひとつしか手に入らなければ、弟に先に渡して新しく買い直すまでは僕が我慢するというのはざらだった。
さらに、頭のいい子で僕のバイトの給料日を覚えていて、給料日がすぎて僕が休みなのを知ると「兄ちゃん、兄ちゃん、服買いに行かんの?」と僕を買い物へ促す。
すると、次の一言が「僕も暇やから着いていこかな?」で、行くのはいつもショッピングモールである。ショッピングモールに着くと、ゲームやプラモデル、おもちゃが売ってるコーナーは分かるので「兄ちゃん、買い物行ってきて!僕、あそこ行ってるから」と僕と別行動をしようとする。こうして少し服を見ていいのがないと、と言うよりも弟を1人にするのが心配なので10分から15分したら弟のいるところ(大体はプラモデルのコーナー)に顔を出すとしっかり欲しいものをもっていて、僕の帰りを待っているのである。(たまに、早く行き過ぎるとまた服屋に戻されるが事もあるが。)
こうして弟は僕にこう言う。「別になんもないよ、持ってるだけやで」と。それでレジの方に僕が行かないと動かないのだ。さらにこういってトドメを刺しに来る。「兄ちゃんもなんか買わへんの?」と。ここで買わないと延々これが続くのでなんとも厄介である。
こうして僕は毎月、弟にプラモデルやおもちゃを買わされるのであった。そして、弟の欲しいものが手に入ると僕が服を買ってなくてもプラモデルを買ってなくても、早く帰ろうアピールをする。なんなら、お母さんが心配するから、という始末である。
なんとも策士であり、可愛い弟であるが、これだと弟にいいように使われる兄ちゃんである。ここに弟の名誉を守るためにいくつか可愛いエピソードも添えておく。
まず、読む漫画なゲームが一緒なので友達といるよりも兄ちゃんといる方が楽しいとくっついてくれる事である。
何かあると兄ちゃん兄ちゃんと愛嬌のある笑顔で付いてくるのはなんとも可愛く、僕はそれだけでメロメロになる。
もちろん、それだけでは無い。一緒にゲームをしたいので買ってあげたゲームは大体、弟が先に進むのである。すると、弟からは「いつでも兄ちゃんのクエスト手伝ったるからな!」と頼もしいヒーローになるのだ。(が、悲しいかなそのヒーローでいれる期間はあまり長くは無い。もう少し自分がゲーム下手ならもっと良かったのだろうが)
そして何よりも、可愛いのは料理漫画にハマったことではなかろうか?
というのも、当時買って溜めておいた雑誌に料理漫画が載っており、バイトから帰るとバタバタと弟が玄関まで迎えに来て、「兄ちゃん来て来てぇ」と、手招きするのである。そして、有無を言わさず僕の手を引いて、「いいから、いいからぁ」とキッチンまで誘導されるのだ。だいたいそこには料理漫画のレシピを再現したモノが並んでいる。
おそらく、両親と二個下の妹(弟からしたら8個上の姉)達から断られ、バイト帰りの僕に白羽の矢が立ったのだと思う。しかし、これがまた、美味しいのである。
当時、弟は小学校に上がるかどうかだったと思う。そんな子が興味半分で漫画から料理のレシピを読み、理解して、1品作ってくれていたのである。興味というのは凄いもので、それだけで作ってしまう弟の理解力に舌を巻いたものである。
他にも一緒にプラモを作り、意地になって1人で作り上げたプラモデルを見て感動したり、自転車の練習したり、ゲームで本気になってつい拗ねさせたりと色々あったが、その中でこんなエピソードがある。
と言っても僕はほとんど関係ないのだが、弟がまだ小学校に上がる前だったと思う。近くの公園で子犬が捨てられていたのを母親に相談して可哀想だから飼いたいと申し出たそうだ。すると母親は「お父さんが飼っていいって言ったらいいよ」と。
親父は割と弟に甘い。特に当時は甘かった。
なので、母親も弟が頼めば行けると思ったらしいのだが、親父はだいの犬嫌いだったのだ。
魚釣りや、河原でザリガニ捕まえて来ては飼っていた親父である。カブトムシや亀も飼っていた親父である。なのに犬はダメだった。弟も断られると思ってなかったようで、(もしかしたらしつこく食い下がらなくて怒られたのかも)大変ショックを受けてたみたいでその日1日1人でずっと泣いていた。
普段からペットを飼いたいと言うような子ではない。それが飼いたいと言ってきたのは余程捨てられている子犬を見て可哀想と思ったのだろう。そして悔しかったのだと思う。捨てられている子犬に何もしてあげれないのが。なんせ、小さい時の弟は心の優しい子だったので(これは兄としての贔屓目ではないと思う。)
ちなみに、母親曰く、もし飼ってたら、1番可愛がるのは親父とのこと。何となく、納得できる。
それからもう20年経つが実家で犬を飼うことはなかった。今でもペットコーナーなどで子犬を見る子供を見るとあの時の弟を思い出します。


犬をテーマに書いて、と言われて書くだけ書いて放ったらかしにしてた自伝とでも言いましょうか、弟の誕生日もあり、公開。
(8月になにも公開してないからという意味も込めて、ですが)

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