タニーさん
雨とタバコと猫と君
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雨とタバコと猫と君

タニーさん

        君はいつも台所でタバコを吸う。僕にタバコの匂いが残らないようにってはにかんだ笑顔で説明してくれる。その横で一緒に過ごす時間が好きだ。

    僕と彼女は社内恋愛で、会社には内緒で付き合ってる。
    きっかけはなんでもないことだし、ありふれたものだから語るほどでもない。ただ、僕らが付き合ったのは梅雨の季節でせっかく付き合えたのに、どこかに行こうと言っても雨が僕らの予定を曇らせて、そして雨が流していく。
     だから僕らのデートと言えば彼女の家でゆっくり過ごすことだった。と言ってもたまに仕事帰りに一緒にご飯食べて帰ったりとかもあるけど、だいたいが一緒にスーパーに行って、買い物して彼女の家でご飯を食べたりがほとんどだった。
    料理の得意でない君と調理が好きな僕。だいたい僕の調理が終わるのを待って、そしてタバコに火をつける君。
   タバコを吸わない僕とタバコを吸う君とで、僕にタバコの匂いがついて会社にバレないようにって、いつも気遣ってくれる。
    でも、彼女は猫を飼っている。なので猫の匂いや毛でバレるんじゃないかと思うとタバコの匂いもあまり関係ないような気もする。
    それに彼女の吸うタバコの匂いは好きだった。メンソールタバコって言うのかな?ミントというか、清涼感のある匂いが漂うこの空間が好きだ。
    でも、せっかく彼女が気を遣ってくれているのであえて言うこともない。
    そんな彼女と一緒にご飯を食べて、軽く飲んで、後片付けを一緒にして、ひと段落着くと彼女はまたタバコに火をつける。
「匂いが着くよ?」とはにかむ彼女。
    そんな換気扇の下でタバコを吸う彼女の横に座って缶ビールを一緒に飲む時間が好きだ。
    そんな僕らの傍らでウロウロしてる彼女の飼い猫が長いしっぽをフサフサと揺らせて、スっと僕の膝の上に乗ってくる。
   コロンと寝転んで動かない。長く柔らかい毛を携えたその子は今では僕に馴れてくれたようで撫でても逃げなくなっていた。
    こんな時間が僕はすごく好きだった。別に何かする訳でもない。彼女と彼女のタバコの匂いと猫と缶ビールがあるだけ。別になにかする訳でもない。取り留めのない会話と換気扇の音と時折、膝の上でコロコロと鳴る猫の喉。
    外からは雨の音が微かに聞こえる。明日も雨かな?特に予定は無い。多分、僕らは明日も彼女の家で同じように過ごすだろう。
    雨の音が少し心地よく、僕らの時間を包み込む。ささやかな何気ない日常を、誰にも邪魔されない時間を、ゆっくり過ごしていく。
    僕はこの時間がほんとに好きだ。心地よい雨音が少しづつ強くなっていく。
   

 


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写真AC様より
JohnnyNayuta様の作品をお借りしております。
こちらは朗読用に書いたフリー台本です。
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タニーと申します。 現在、SPOONのアプリ内で朗読配信を行っております。 それに伴い、創作も行うようになりましたので、作品置き場として使いたく、登録しました。 ぼちぼちやっていくのでよろしくお願いします。