東京外国語大学四年 鵜飼真理子 ポルトガルを訪れるまで、魚料理が苦手だった。なんだか地味だし、いちいち骨を取り除く面倒さがどうしても好きになれず、私の中で魚料理は外食での選択肢に絶対入ることのない存在だった。 留学でポルトを訪れて二ヶ月程経ったとき、友達とドウロ川沿いのレストランを訪れた。その日、なぜか、隣のテーブルのお客さんが食べていた魚料理がすごくおいしそうに見えた。ただ焼き魚がまるまる一匹、ジャガイモのグリルやオリーブオイル風味のサラダと一緒にお皿に盛られている。典
北川惠太 最近、ポルトガル語を始めたての人と話す機会があった。そして、ポルトガル語を勉強したことのない人に大変だったことを聞かれる機会もあった。そのときに思い出した光景はもう4年前のことだが、今でも鮮明に覚えている。 僕は、大学に入りたてで、初めて親元を離れての生活、キラキラ輝いているように見えるキャンパスライフに胸が高鳴っていた。そんな高揚感とともに始まったポルトガル語の授業。人生で初めて会うブラジル人・ポルトガル人。彼らは僕のポルトガル語の先生たちだった。絵に描いた
東京外国語大学 橋本健太 ２０１８年１１月３日の２３時半頃、僕はリオデジャネイロの下宿先で独り、youtubeを観ていた。確かその時期は個人的バズリを遂げていたSMAPのオレンジのカバー動画を漁っていた。スマホさえあればどこにいてもすることは変らんな。留学も半年以上経っていたが、専らビーチで本を読むかセミダブルベッドのうえでTwitterとyoutubeを漂う根暗な僕はその日も留学生として健気にクラブ街へ赴く選択権を放棄したままうつ伏せになっていた。 しかし、その夜僕はあ
東京外国語大学ポルトガル語学科 佐藤日奈子 コンコンコン、コロン、カン。 ポルトガルにきて数ヶ月が経った。初めはドキドキしながら歩いていた通学路にも慣れ、いつもの人とすれ違う。怖いスーパーの店員に会う回数を減らすために、食材を買いだめすることも少なくなっていた頃だった。なんとなく日々を過ごしていた。 ある日、私はベランダで、日光浴がてら読書をしていた。すると、普通の工事とは違う、かわいらしい音と男性たちの話し声が聞こえる。 カンコン、コロンッ。 石畳の修復作業を見
東京外国語大学４年 Y.O. ふと、リスボンのアパートからの眺めを撮った写真に目が止まった。 不思議だ。 自分はもう東京にいるのに、あの部屋から見えるリスボンの街では、何ら変わらない日常が続いているのだから。 あの人、何してるのかな、と自然に思い浮かぶ人がいた。 近所のスーパーの店員である。 クルクルのカーリーヘアが腰まで伸びた細身の女性店員。 それはそれは怖い人だった。 いつも機嫌が悪い。 レジの前に座って、仏頂面で商品を左から右へ流していく。 黙ってりゃいいのだけれど
東京外国語大学4年 伊與部 洋樹 今にも壊れそうな硬いシートでお尻が痛い。車内は落書きだらけだなあなどと考えていると、減速用の小さい丘に乗り上げ、身体が宙に浮く。バイーア州、サルヴァドールのバスは実に粗削りである。坂道やカーブでも容赦ない豪快な運転は、下手なアトラクションよりスリルがある。焼けるように暑いこの地で、ラッシュ時の「満員バス」に乗ろうものなら、多少の覚悟が必要だ。頭がボーっとするほどの熱気の中、「降りますー！」の声は、日本の満員電車より心なしか必死である。 そ
日本の最高学府である東京大学の第2外国語は7種類である。皆さんどの7個だと思うだろうか？世界一多い人口の国で話される中国語は入るだろう。スペイン語とかフランス語を大学時代に選んだ記憶がある人もいるだろう。 正解は、ドイツ語、中国語、フランス語、スペイン語、イタリア語、ロシア語、韓国朝鮮語の7言語で、ポルトガル語は入っていない。世界第6位の話者人口を誇るとされていて、この中だと中国語・スペイン語以外の言語より話者人口が多いのにもかかわらずである。 何を言いたいかというと、ポ
