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ゼロに何かけたってゼロ。

4回目の「あと5分」。

誰に言い訳をしているのだろう、寝起きのくせに割と回っている頭でそんなことを考えながら僕はカーテンを開けた。

太陽の光は嫌味ったらしく朝を告げている。

太陽が無くなれば朝も無くなって、朝が無くなれば起きなくてもいいのではないか。そんなトンチンカンな思考をベッドの脇のゴミ箱に捨てて、洗面所で水道が出せる一番冷たい水で顔を洗った。

PCを開く。
いい加減リモートワークにも嫌気がさしてきたが、出社するためにはもっと早く起きなければならないという事を考えるとこれもやむなしと言う気がしてくる。

入社1ヶ月と少し、大したメールが届いたことは一度もない。それでも僕は会社の大人の人に言われた通りにメールボックスを開いて毎朝それを確認する。やはり大したメールは届いていない。そらそうだ。大したことなんて何もしていないし、大したことなんて何もできない。

Zoomを開く。
指定されたルームに入室する。何が入室だ。部屋なんてどこにもない。そこにはつまらなそうな顔をした「どうき」とやらの顔が、牢獄から顔を出す囚人のように映し出されているだけだ。まあ、僕もその中の一つなんだけれど。

話を聞く。
上司?先輩?あなた、だれ?

みんな何を考えているのかわからない。
それは画面越しだからなのか、誰も何も考えていないからなのか、それとも僕が彼らに興味がないからなのか。

ただ話を聞くだけの時間が8時間続く。昼休みの記憶はいつもほとんどない。多分カップラーメンを無表情で啜っているのだろう。

仕事は意外とすぐに終わる。

仕事といっても研修なので、やはり大したことはしていない。
一回ベッドに寝転んで、スマホいじって、コンビニに行く。

飯を食ったら、またスマホを見る。そのうち、「何やってるんだろう?」と思う。

仕事が始まればきっとこんな虚無はなくなるのだろう。今は、研修中でフルリモートだからこんな気持ちになるのだ。
そう思って気持ちを落ち着かせる。

「資格の勉強しなきゃ、、、」

『一年目の研修期間が一番時間あるから、』というどこのだれとも知らない先輩の言葉が、ただ焦りだけを静かに置いて去って行く。

参考書を開いてみる。
何も頭に入ってこない。
オンライン授業を見てみる。
何も頭に入ってこない。


そうだ、僕には読書って趣味があるじゃないか。
僕は本を手に取る。

ベッドの上にあぐらをかいて、ハードカバーの本を広げる。
ストレスが少しずつ減って行くのがわかる。
静かな部屋で本を読む静謐な時間が、僕の隣にそっと腰を据えて背中を優しくさすってくれている気がした。

そしてシャワーを浴び、ベッドに入る。
明日の朝起きれるかな・・・
不安のせいで眠れない。


朝なんて来なければいいのに。


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