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騒がしい、春

今年の春は、早いかな
大分外が、明るくなってきた
やはり、そろそろだな
そろそろ準備をしないと、いけないな
とは、僕は思ってもいない
いなくても、自然と気が付いたら花の上に乗っていたのだ
これは、誰からも聞いたことはない
しかし、多分そうだろうと思うことにしているのだが
それも、確かではない
自分に、その意識がないかあったのかなかったのかって意味がない
僕は、ただ花の上にいたたげなのだ
どうして、この花の上に来たのか居たのかそれすら知ったことではない
ただ、いただけだ
それを人間は、自然(じねん)と呼んでいる様だ

なんの知識もないのに
気が付いたら、好物の花のうえに居て
しきりと、花の草を齧っていたというだけだ
目的も何もない、というよりはそんなこと考えたこともない
そんなことを、要求されること自体がバカバカしい
いつまで、続けて葉を齧り続けるのか
そんなこと、何も知らない
空腹が、ひたすら要求するのかも知れないと人間が囁いていた
私とは、関わりのない世界の会話だ
いつまで、この食生活は続くのか
何も分からない
でも、途中で嫌になって止めたいとか
そんなことは、実にバカバカしいので
いまだかつて、やったことはないし
仲間に聞いても、明快な反応は未だかつてない
聴くこと自体が、私たちの世界では意味がないのだ
そうだ、分かって何にに役立つのかなんて
時間だけが、私を支えるまちがいのない味方なのだ
好きとか、嫌いとかで葉をくいつづけているのではない

ある日、体のいたるところにむず痒い刺激が張り始めた
それは、予期していたものでも何でもない
突然だ
努力が報われたのだ
と、人間どもは言っているだろう
もうしばらく、その状態は続いた
身体の神経がピタッと止まった
葉にしがみついていた、僕は何処からか洗礼を受けることになった
やはり、私を変えるのは時間という抽象的で、かつ現実的のなものの支配下におかれている自分であることを、初めて納得した
そんな、恰好の言い出来事ではないけれど
無言と無我、そして自然(じねん)の世界への旅立ちだ
両肩の方に力が沸いて来て、それもパタパタと動かすように命令されているようだった
反射的というか、思い切り力をいれたら翅が上下に動いた
これしか、やることがない
思い切り、気を良くして力を入れたら
パタパタと、音もせず身体が浮いた

どこの世界に行くのか
行き先は、全く知らない
分からない
でも、分からないからと言って人間のように諦めはしなかった
何かが起きるのかも、知らないし分からない
それでも、私のやることは決まっていた
ただ、これだけ
そう、これだけ
そうして、気が付いたら甘い蜜の世界が目の前に広がっていた
蜜をどんどん吸っていくと
少し、欲望みたいなものが湧いてきた
結婚相手とか、友達とかはいないけれど
私のレールは、惹かれていたように感じた
疑問とか、語彙などなかったけれど私は純真だった
今まで、みたこともない広い
青くて、明るい、花々の咲く世界を初めて知った
何か、覚えのある様な香りと味であった
だから、こうして羽を羽ばたき続けられるのだろう
初めて、自分を少し認識できるようになった
と、人間どもが囁いている








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