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消費増税分の使われ方

 昨年10月に消費増税が行われました。景気の悪化や更なる税率の引き上げの是非に注目が集まりがちです。今回の増税分の一部を財源として、興味深い施策が実行されていることを知りましたので書き留めておきます。「高等教育の修学支援新制度」と呼ばれるものです。

 この制度の対象者は進学先の大学や短大、専門学校から授業料の減免を受けることができ、日本学生支援機構から学生生活に必要なお金を給付型奨学金として受けることができるとのこと。制度の対象となる学校にとって、減額した授業料は逸失利益となりますが、それは公費で負担されるとのことでした。

 租税にまつわる政策論議においては「どのようにお金を集めるか」だけでなく「集めたお金をどのように使うか」も重要な論点だと思います。

補足:教育政策に税金が投入されるのはなぜ?

 人々が教育サービスを受けるのを促す政策に、税金を使うことは妥当なのでしょうか。次のような例を通じて考えてみます。

 ある町内会では会計報告を手計算で作成しているとします。パソコンの表計算ソフトを使えば、より効率的に会計報告を作ることができるでしょう。しかし、町内会のメンバーはパソコンを操作する知識がないとします。そんな折に近所にパソコン教室が開校したという知らせが届きました。

 町内会長は、会計担当者がパソコン教室に通うだろうと思っています。その会計担当は、真面目な性格の副会長がパソコン教室に通ってくれることに期待しています。その副会長は、町内会長こそが自らパソコン教室に通うのが筋だと思っています。その結果、誰もパソコン教室に通うことはなく、今年度も会計報告書は手計算で作成されることでしょう。会員たちの行動はフリーライディングと呼ばれます。

 これは町内会全体に大きな無駄が生じている状態です。なぜならば、パソコンで会計報告を効率的に作成して浮いた時間を町内会の会議などに使えば、より有意義な活動ができるかもしれないためです。

 この例は町内会という小さな集団内の出来事です。ただし、似たような問題は企業や地域社会といった、より大きな集団でも起こりうるのではないでしょうか。

 ある集団の構成員に対して、教育を受けるのに必要な費用が公的に負担されたとします。その結果として、その構成員の知識・技能のレベルが上がるならば、集団全体の活動がより効率的に行えるようになります。その潜在的な利益こそが、政府が個人による教育サービスの消費を促進する根拠と考えられます。


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