たからばこ。

新しい場所にひとり。
今までの自分がゼロだったみたいに、
できることは何もない。

誰かに話したかった悲しいことも
分かち合って欲しかった嬉しいことも
全部抱えて、ひとりぼっちの部屋に帰ってくる。

あの頃の、自分のためだけの自分が
どんどん否定されていく。


早く、誰かの役に立たないと。

いろんなものに追われながら、
ただ一歩先の階段だけを見て
必死に、踏み外さないように歩いた。

.
顔を上げてあたりを見回しても
どこまで登ったのかよくわからないけど
少しだけ見晴らしが良くなった景色を見て、
ふと、きみはどうしてるかなと思ったんだ。

元気にしていますか。
今、どこでなにをしていますか。
辛いことや悲しいことはありませんでしたか。

一緒に過ごした時間は、
もう二度と戻ることはないだろうと
心から思えてしまうくらい、
きらきらと遠くの方に見える。

でもそれが、とてつもなく愛おしい。

もう戻れない寂しさよりも
その愛おしさが、ずっとぼくを支えてくれた。

どうかきみにとっても、そうでありますように。

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