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Bremen ブレーメン

私がブレーメンに住んだのは1997年から1999年なので、恐ろしく前の話である。旅行の記録ではないけれど、今思い出すことのできるあれこれを少しだけ書こうと思う。

そこに住むことにしたのは、その時に付き合っていた彼の家(ド田舎)から一番近い語学学校はブレーメンにあったから、というだけの理由だ。私が真剣にドイツ語の勉強をしたのがこの期間である。

ブレーメンといえば、日本人はグリム兄弟の童話「ブレーメンの音楽隊」でその名を知っていると思う。市庁舎広場にその像があって(想像より小さい)皆が触っていくので一番下のロバは特にツルツルになっている(笑)。

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どういう理由かマイケル・ジャクソンは、ブレーメンが好きだったらしく、小さい街なのに何度も来てコンサートをしている。市庁舎のバルコニーから大衆に挨拶していたこともあった。

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当時同じ学校で勉強していたNY出身の友達が、マイケル・ジャクソンのライブのチケットを入手したから一緒にどうか、と誘ってくれたので、私も一度観に行ったことがある。もちろん場所はブレーメンのサッカーチームWerder Bremenの拠点でもあるWeserstadionというスタジアムだ。Weser川沿いにある。私はこの川沿いを色々な友達と何度散歩したことだろう。

こうして書いていると様々なことが芋蔓式に思い出される。マイケル・ジャクソンは、ハンブルグにはさらに親しい友人もいたらしく、お忍びでそのお宅に宿泊したこともあったらしいけれど、私がその後住んでいたハンブルグの家から徒歩で行ける場所であった。特にファンではないしストーキングしたわけではないが、話のネタにはなった。

おっと、ブレーメンのことを書こう。

当時ブレーメンでは外国人局が常にすごい混雑で、語学学校のビザを延長するのがとても大変で泣かされた。ブレーメンはその州の名もブレーメンで、州都でもある。ハンブルグ同様、ハンザ自由都市であり、他のどの都市にもない独特のリベラルな雰囲気と気質がある。外国人の数も多い。小都市にしては文化がすごく多種で濃厚で、芸術活動をしたい人にとっても面白い場所だ。

自転車でも十分市内を動けるけれど、私は路面電車で移動するのが常であった。ある時、いつものように路面電車に乗っていると、運転手さんが「ごめんなさ〜い、停留所を一つ通り過ぎてしまいました。」とアナウンスした。乗客も誰も腹を立てるわけでもなく、「別に次で降りて歩ける距離だからいいよ〜」みたいなノリだった。

街のある一区は特に麻薬中毒者がたむろしていることで有名な場所があったけれど(今もそうかな)、学生や小さな子連れの親子も普通にその辺を歩いていたし住んでいた。私も最初はそこを歩いて通過するのはドキドキしたが、すぐに慣れた。

ただ、その区に住んでいたクラスメートのイタリア人女性は、半地下の部屋を借りていたが、庭に誰かが侵入してきていて、「ゆうべ怖くてイタリアのママに泣きながら電話したの」と言っていた。身の安全に関しては、日本の常識を遥かに超える注意が必要なことは言うまでもない。

記憶の糸 つづき・・・そのクラスメートの職業は女優だと聞いていた。超セクシーで美人で、見せてくれたスーツケースの一つは靴で一杯だった。ある日、その半地下の部屋に招待してくれて(美しい旧建築だった)、パスタとトマトソースをササッと作ってくれたが、もちろん激ウマだった。彼女の部屋は、確かに裏庭から部屋の窓を割って誰かが侵入してくることは容易な造りであった。彼女は色々自分のことを話してくれ、付き合っていたドイツ人の彼と別れることになったからイタリアに帰ると言っていたが、ひと月ほどで本当に帰ってしまった。クラスで最初に友達になったのが彼女だったと記憶しているし、残念だったな。

英語を忘れたくなくて、ドイツ語の勉強を進めながらも、イングリッシュクラブなるものに入って、イングリッシュ パブで時々英国人たちと語り合ったり、イベントに出たりもした。スペイン語圏の友人たちに連れられて、サルサもかじったことがあるが、すっかり忘れてしまった。

建築に興味がある方ではないけれど、古い建築様式の住宅の中などはどこもとんでもなく美しかった。市場が建つ日はそこでの買い物も楽しかった。これらは他の欧州の都市でも同じように美しいし楽しいけれど、私はブレーメンの思い出をなぜか特に美化しているのかも知れない。思い出の色や空気が鮮明なのだ。

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(写真はすべてpixabayさんからお借りしています)

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日本人を含め、本当に色々な国の友達がそこでできた。ここには書ききれないエピソードが山ほどあって、なんて中身の濃い2年間だったのだろう。着ていた服や、友達の言った一言や、訪れた場所が次々と浮かぶ。本当に2年だけだったのだろうか・・・と思うくらいだ。その後、縁あってハンブルグに長く住むことになったのだけれど、私の欧州生活の基盤や価値観を作り上げたのは、ブレーメンでの生活だったのかも知れないと、今感じる。

いやぁ、こうして書いてみて良かったな。

先日「キーパー」の記事を書いたことでブレーメンを思い出すきっかけとなったのだけれど、SNSで繋がる当時からの友人たちに久々にメッセージでもしてみよう、と思う。

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〈追記〉ツーリストにオススメなミニスポット。市庁舎広場の一角にあるSt. Petri Domの地下のBleikellerは特殊な保存状態で保存されたミイラが展示してある。猫のミイラもあった。この教会を見学するのと同時に、興味のある方は是非地下にも降りてみてほしい。小さな展示場で閉まっている期間もあるため、会館時間のチェックを事前にすることをオススメする。

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