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The Last Suit / 家へ帰ろう

あかん、これは涙腺崩壊のやつ・・・。邦題は「最後のスーツ」のままの方が好きだなぁ。 

一見、ただの頑固じじい(言葉失礼)なのだけれど、彼には深い悲しみと傷、そして最後の意志があった。若い頃ナチスから逃れた時のやつれた青年の姿を見ると(回顧シーン)胸が張り裂けそうになる。

命を救ってくれた親友との、70年も前の再会の約束を果たすため、アルゼンチンにいる家族に黙ってポーランドを目指して旅に出る。そう決心するに至る家族との確執もある。その間に知り合う様々な国の人達の、温かい心が、ポーランドへの道を手伝う。

勘当したはずの娘の一人は、実は姉妹の中で一番父親を愛していた。(彼女の腕には、ホロコースト経験者でないにもかかわらず、ユダヤ人に起こったことを忘れないために彫られた刺青があった。)ドイツには一歩も足を踏み入れたくないという彼の主張に、ユーモアで応え、どんなに虐げられても笑顔で向き合ったドイツ人女性。他の医師たちは足の切断を勧める中、ポーランドでひとりのドイツ人医師が、少しでも可能性があるのなら救うべきという主張をしてくれたこと。などなど頑固な心を解きほぐす人々の優しさに触れたことも、この旅に大きな意味を持たせている。さて、旅の目的は果たせたのだろうか・・・。


ラストのユダヤ音楽を聴きながら、観終っても放心状態であった。絶対に再び起こしてはいけない過ちというのがある。集団に流され、プロパガンダに流され、自分で考えて心で納得して選択するという大事なことを忘れている人が、今でも沢山いるのではないか。このアブラハムを助けた何人もの人達のように、自分も明るくユーモラスに、でもしっかりと軸を持てたらいいなと思った。素晴らしい一本であった。 


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