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Traveler's Voice #11|森田菜月

Traveler's Voice について

Traveler's Voice は特別招待ゲストの方からエスパシオに泊まった感想をインタビューし、読者のもとへ届ける連載記事です。この企画の目的は”自分ではない誰か”の体験を通して、エスパシオを多角的に知っていただくことと、ゲストが日頃行っている活動を合わせて紹介するふたつの側面を持っています。ご存じの方も多いと思いますが、エスパシオは「いつか立派な観光ホテルになる」と心に誓った山口市にあるラブホテルです。この先どんなホテルに育っていくのか、まだ出発地点に立ったばかりですが、この企画を通してゲストの過ごし方や価値観を知り、計画にフィードバックしたいと考えています。インタビュアー、執筆、カメラマンを務めるのは「エスパシオ観光ホテル化計画・OVEL」を進めているプロデューサーの荒木です。それではインタビューをお楽しみください。                              


ゲスト紹介

Travelers Voice 第11回目のゲストは森田菜月さんです。彼女は福岡のモデルプロダクション「Cover Girl Entertainment:以下CGE」に所属し、芸能活動をしながら、自身の故郷でもある福岡県古賀市では「快生館」でコミュニティマネージャーとしてまちづくりの活動もしています。Instagramのアカウント名(@onsenatsuki)から分かるように、無類の温泉好きとしても有名で、彼女とエスパシオとの出会いは2022年4月のリニューアルオープン時にモデルさんとしてお声がけさせていただいたことが始まりです。オープン後、月に一度のペースで遊びにきてくれる根っからのエスパシオ好きでもあり、今回はそんな彼女にエスパシオの魅力や自信の活動についてあれこれ聞いてみたいと思います。


菜月さんが泊まったお部屋紹介

菜月さんに宿泊していただいたお部屋は505号室です。薄いブルーの壁紙に黄色いシェルフが映えるインテリアです。


インタビュー

Araki:こんばんは。今回は4連泊してもらっているので、トラベラーズボイス初のナイトインタビューです。食後で瞼が閉じそうだけど少しお付き合いください 笑。では早速、菜月さんは2年前のオープン以来、月に一度のペースで遊びに来てくれているのですが、エスパシオや山口を気に入った理由を教えてください。

Natsuki:わたしはホテルに泊まることや山口が好きというよりも、旅することを求めているんだと思います。旅と言ってもいわゆる観光ではなく「休む」ことが最大の目的です。というのも、わたしはとても不器用なのに完璧主義なところがあって、未来の目標のためにタスクを詰め込む癖があります。今はそうではないですが、休むことに不安を感じる時もあったくらいで、キャパオーバーになって爆発するまで走り続けるような生活をしていました。生活の中に”積極的に休む時間”を取り入れるようになったのは今から7年前くらいのことで、きっかけは温泉なんですけど、あるとき入った温泉で無意識に蓄積された緊張がほどけていく喜びを感じて以来、月に一度はゆっくり休むことにしています。その休み方のひとつに山口へ訪れるという選択肢が加わりました。あれからもう2年が経つんですね。

Araki:たしかにあっという間ですね。旅の仕方はひとそれぞれだけど、菜月さんにとっての旅は休むことなんですね。でもその場所として、数ある選択肢の中から山口を選んだ理由はなんですか。

Natsuki:山口を選んだ理由はエスパシオとの出会いはもちろんだけど、わたしの暮らしている福岡県古賀市との物理的な距離と、普段所属しているコミュニティーや家族との心理的な距離が関係していると思います。CGEでの芸能活動、快生館でのまちづくり、カフェの店員、友達、家族、古賀市、どれもわたしにとってかけがえのないもので、それらを好きであり続けるためにときどき距離を置く時間を意識的につくっています。とはいえ、あまり遠くに行くのも大変だし、月に一度というペースも保ちたいので山口はわたしにとって”ちょうど良い距離感”なんですよね。エスパシオの快適さはもうすでにみんなが言っているとおりなのであえて言葉を重ねませんが、今回は4連泊しているのでもうほとんど家のようになっています 笑。

Araki:たしかに菜月さんの空間馴染み度合いは写真からも伝わってきます笑。旅の目的が”休む”と聞くとのんびりした印象があるけど、菜月さんは日々のタスクに休むことをアクティブに取り入れているんですね。格好良いというか不器用というか 笑。でもなんだろう、そのことが菜月さんの魅力を作り上げているような気がします。山口を選んだ理由は距離以外にもありますか。

Natsuki:そうですね、人が少ないことや未開拓なところでしょうか。山口県はとても広く魅力ある場所がどれも遠く離れていて、どう頑張っても短期間で効率良くまわることができません。その条件がわたしの求めている旅と相性が良くて、何度も通い長い時間をかけて山口の解像度を高めていく楽しみにつながっています。通い始めてもう2年になりますが、まだまだ知らないところが沢山あって、いつになったらこの旅は終わるんだろうと、未だ新鮮な気持ちを保ちつつここへ訪れています 笑。

Araki:たしかに、一度に知り尽くせないことって旅の本質かもしれませんね。丁寧に相手を知るために時間をかけて接する、そんな人間関係ともどこか似ています。では具体的に、今回の滞在ではどのように過ごされましたか。

Natsuki:写真を見れば気がつく方もいると思いますが、わたしはいま妊娠8ヶ月で、ひとり旅というよりお腹の子とふたりで旅している気分です。だからわたしの都合だけで行動するのでななく、この子と向き合いながら過ごすようにしています。お腹の中で動き回る子に話しかけたり、普段はあまり聴かないクラシックを流してみたり、部屋でマタニティヨガをしたり、いつもより深く長く眠ったり。朝は運動がてら少し出かけたあとに行きつけの山水園で温泉に浸かって、そこから部屋に戻ってきて夕方まで昼寝しています。家では昼寝なんてできないのに、ここではなぜかぐっすり眠ることができて、わたしもこの子もゆっくり過ごさせていただいています。わたしにとっては産前最後のエスパシオ、この子にとっては初めてのエスパシオです 笑。

Araki:出産をひかえている体で足を運んでくれたことは心配でもあったけど嬉しかったです。お腹の中の子にとっても良い旅になっていれば、なお嬉しいです。ではでは少し話を変えて、菜月さんのメインの活動でもある芸能活動について質問させてください。モデルという職業についたきっかけはなんですか。

Natsuki:大学では教育を学んでいたので、当時は幼稚園の先生になるつもりでした。モデルは在学中にスカウトされたことがきっかけで、とくにこの職業を強く望んでいた訳ではありません。そこで偶然入ったCGEは今思えば黄金期で、先輩には中島沙希さんや今田美桜さんが活躍していました。そのことも影響してわたしは日々劣等感と向き合いながら、鏡の前に立つことすら怖く感じる時期もありました。はじめはオーディションや書類選考に通ることもなくて、複数のバイトを掛け持ちしながら学業と並行しモデル活動する過酷な毎日でした。さっきも話しましたが、タスク詰め込み生活のはじまりです 笑。そのバイトのひとつに温泉施設での清掃が含まれています。そうこうしている間に大学を卒業し、将来のことを考えている矢先にドコモ九州のCM、ポッキーのCM、ZOZOのファッションモデルの仕事が数珠繋ぎに決まって、拠点である福岡と東京の往復生活がはじまります。3日おきに東京と福岡を往復する生活を4年続けたんですが、今思えばあの過酷さがわたしに休むことの大切さを教えてくれたのかもしれません。もちろん忙しさと引き換えに収入は安定しました。そのことで、山登りや温泉旅行に出かける趣味が充実したこともあるけれど、やっぱり仕事の過酷さが背中を押して休むことが手放せなくなったんだろうと、今振り返るとそう感じています。

Araki:モデルしながら温泉でバイトって面白いですね。その頃から今くらい温泉が好きだったんですか。

Natsuki:いえ、当時は学生だし将来のことを考える時期でもあったから、人と違ったことをして個性を手に入れたかっただけかもしれません。でもきっかけはさておき、みんなから「温泉菜月ちゃん」と呼ばれるアイデンティティを築けたことは、あの偶然の選択のおかげだと思っています。温泉の魅力に取り憑かれてからは、あれよあれよと資格を取得して、今では温泉マイスターとして日々いろんなことを考えています。

Araki:なるほど、温泉や芸能活動は偶然の出会いから始まったんだ。でもその偶然を必然と思えるまでに育てた菜月さんはすごいと思います。芸能活動と温泉普及活動を並行しながら、さらに出身地でもある福岡県古賀市「快生館」で”まちづくり”という活動を始めた理由はなんですか。

Natsuki:これも偶然としか言いようがないのですが 笑、元温泉旅館をリノベーションし、ワークスペースとして運営を始めていた快生館が温泉を再開するタイミングで声をかけていただきました。快生館ではコミュニティマネージャーという肩書きで活動しています。今思えば、温泉について学ぶことで”わたしも人を優しく包み込む温泉のようになりたい”と考えはじめていたタイミングと”まちづくり”というキーワードがうまく結びついた瞬間だと思っています。芸能活動とちがって市民や企業と直接向き合う仕事なので戸惑う場面もたくさんありましたが、仕事を覚えることで自分自身が成長していく実感があります。今では、ここで得た学びをわたしの夢に役立てることができるような気がしていて、芸能活動との両立で相変わらずタスクを詰め込みすぎているような気もしながら 笑、今はとにかく無我夢中で業務に取り組んでいます。そんなこともあって、月に一度の山口滞在はわたしの活動を支えるために不可欠なものになっています。

Araki:順を追って聞いていくと、当たり前だけど菜月さんはどんどん成長しているんですね 笑。子供を授かったこともそうだし、社会性が芽生えたこともそうだし、今後の活躍が楽しみです。偶然の連鎖によって現在の菜月さんがつくられているのかもしれませんが、未来について具体的な目標はありますか。

Natsuki:あります。温泉施設をプロデュースすることです。といっても新しい施設を建てるのではなく、古くなって誰も手が付けれなくなってしまった施設をわたしの力で甦らせることが目標です。これから育児もはじまるのでいつになるのか分かりませんが、この夢だけは捨てないと心に決めています 笑。それと、この夢を叶えるために海外の温泉文化にも触れてみたいと考えています。とくにハンガリーに興味を持っているのですが、ハンガリーには日本と異なる温泉文化があります。日本で学んだ温泉文化とハンガリーの温泉文化を合わせることで、新しい価値を見つけることができれば素敵だなと夢を膨らませています。

Araki:温泉プロデュースいい夢ですね。その行動力と愛情があればきっと叶えられると信じています。これは思いつきだけど、日本の温泉文化をハンガリーに輸出するような流れもあるかもしれませんね。そこでもし新しい価値をつくることができれば、それを日本に逆輸入すればいいのかも。菜月さんの銅像がハンガリーに建つ未来を願っています 笑。

Natsuki:できるかな 笑。頑張ってみます。この夢は今のところ自己実現の側面が強いのですが、女性であるわたしが活躍の場に立つことは、わたしより若い世代に対して勇気や希望を与えることにつながると思っています。自分のためだったことが”誰かのため”へと変化していく、ようやくわたしもそんな風に考えることができるようになりました。それと、日本は働きすぎなところがあるから、温泉から学んだことを活かして”休むことの在り方”を改善したいとも考えています。

Araki:ますます格好良くなっていきますね、頼もしいです。ただ頑張りすぎは禁物なので、エスパシオが休む場として菜月さんの活動を支えることができているなら嬉しいです。それとこうやって菜月さんと長く話すなかで気がついたことは、菜月さんにとっての休むことへの拘りは、もともとの性格である完璧主義への自己批判とも言えるし、完璧主義を支えるための活動の一部とも言えて、この両義性が菜月さんの魅力になっているのだと感じました。これは写真を撮らせていただく中でも感じたことですが、ふんわり優しいイメージの中に、実は燃えたぎるような情熱があって、その熱が写真にときどき映り込むんですよね。うまく言葉にできないけど、そこが菜月さんの魅力と関係していると思います。

Natsuki:ありがとうございます。あまり意識はできていないけど、わたしの中には極端なポジネガが共存しているのかもしれませんね 笑。年齢的なこともあるかもしれませんが、今は活動することが大半を占めていて、それを支えるためにときどき休むというバランスになっています。見た目からはその反対のバランスだとよく言われますが 笑。根っこはわりと野心的だと思っています。

Araki:最近それが分かるようになってきました 笑。あっ、でもあれですよ、間違ってもこれから広島に車を走らせてカープ戦を観戦するなんて無茶なプランは無しですよ 笑。

Natsuki:ばれてた 笑。昨日行った川上町のカフェ「余白」で見つけた広島カープの本で湧き上がってきた欲望をぐっとおさえて、ちゃんと福岡に帰ります。あんまり調子に乗っているとお母さんにも怒られるし 笑。

Araki:そうしてください 笑。ではでは、そんな菜月さんに最後の質問です。5年後の娘に今の菜月さんから伝えたいことはありますか。

Natsuki:5年後かあ、どんな子になってるだろう、そしてわたしもどんなママになってるだろう。

今、あなたはまだママのお腹の中にいます。お腹の中で毎日ポコポコ動くあなたが可愛いくてたまりません。こんなママを選んで、生まれてきてくれて本当にありがとう。自分がされて嬉しいことは、お友達にもたくさんしてあげてね。そして、ママと温泉にたくさん行こうね!笑 すくすく大きくなあれ!大好きだよ!

Araki:ありがとうございます。これ大切な言葉だと思うから一言一句変えずに載せますね 笑。もし5年後にこの note が残っていたら娘さんに読んで聞かせてあげてください 笑。それではインタビューお疲れさまでした。菜月さんの未来に迫れてとても楽しい時間でした。次回お会いするときは娘さんと一緒かな、今から楽しみです。


day of stay:April 1-4, 2024

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