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【コラム】男2人で結婚式場の案内パンフレットをもらう理由 ~新しいお金の使い方~ #024

この土地は海に面して景色がいいが俺は農場を作った
土地を売り牛の代わりにいい車や別荘を買う手もあった
でも俺の価値観とは違う

コルシカ畜産/精肉/レストランジャック・アバトゥッチ

◆まえがき


「あーあ、やめときゃよかった」と後で思うお金の使い方がある。特に失敗の確率が高いのに、つい使ってしまう2つのことがある。お金に限らず「後悔」はしないけども、あーもったいなかった。しまった。次は慎重にやろうと、この2つのテーマのときはいつも思うのだ。
ひとつは仕事のことで、ホームページだ。これまでに一体いくつホームページを作ったかわからない。10は確実に作っているが20には及ばないと思う。そのうち予想通りうまくいったのは3つか4つで、あとの10数個は全てお金を無駄にしてきた。ホームページそのものが機能していないし、作ったはいいけどできあがりが全く納得できないものだったりした。何の成果も出なかった。

よく考えてみると、成功したホームページにはその理由がしっかりとある。事業内容を自分よりもはるかに把握している人が作ったとき。そして、自分で完璧に把握して作ったとき、の2つだ。「自分で」というのは自分で作ったのでお金はかかっていないのだが、その後、お金を払って人にお願いし、リニューアルした。もう今では技術的にも体力的にも自分では作れない。
デザイナーやディレクターに丸投げしたものはことごとく失敗し、自分でやりながら、スタイリングだけを組んで内容に情熱をかけていないものも立ち消えた。

ホームページと同じように、ネットではネット広告にもお金をかけて失敗している。広告と自分の相性はものすごく悪い。成功したケースは、無数の中から覚えている限りでたった1つしかない。
ある企画からスタートしたFacebookページは1年半で結局150万ぐらいの広告費をかけ、「いいね」が12000を超える快挙になったが、結局そのページからは集客にも販売にも結びつかず、二次利用も虚しい結果に終わり、結局放置になった。
ネット上でお金をかけて後悔したことはかくの如し。高い確率で「止めておけばよかった」と思うのだ。

もうひとつはプライベートだ。女性とお付き合いをする。時間もかける。思考も使う。それもかなり使う。そして同様にお金も使う。食事やデートに行くのはもちろん、相手の洋服にもお金をかける。お金だけで解決しようとはしない。一緒に服を見立てるし、ショップを次々と回る。相手の内的な綺麗さが表に出る服を着てほしいと思うから、巡り合ったら当然購入する。
旅行に行くことも普通のカップルよりよくあると思う。ホテルのグレードもそれなりにいいところを取る。そして別れたり、離婚したりする。
もちろん付き合っているときに、自分が精一杯何かをすることに文句はない。別れた後もだ。ただ純粋に「そこまで使わなくてもよかった・・・」とフィードバックするだけなのだ。ただし毎回同じフィードバック結果が出るのだが。

男が狩りに出て、獲った獲物を女に与えたいと思うのは不変の真理だから、それをやるのは良い。むしろ、「よくやってるな」と自画自賛できる。だが、後から考えると「与えすぎたかな」と思う。ケチくさくて言っているのでも、負け惜しみでもない。
相応の分量、適切な程度を考えたら、いつもそういうフィードバック結果になるのだ。

つまり、お金に関わることも、お金に関わらないことも、バランスが悪く供給過剰になっていたのだ。

そういうとき、お金を扱う自分に失敗したなと思う。問題は「そういうとき」が多いということなのだが。

ここには仕事とプライベートで「いつも失敗するお金の使い方」を書いた。どちらの例も【自分らしい失敗】があるということを知ってほしい。あなたにもお金の【自分らしい失敗】がある。言い方を換えれば、「いつも失敗するパターン」がある。
そして同じように、自分らしい【上手いお金の使い方】もある。なぜかいつも上手くお金を使う・・・ということが、もう既に身についている。それは他の人の上手い使い方とは違う。自分だけの上手い使い方だ。そのことに気がついて、集中すれば・・・また同時に、自分らしい失敗に気がついて自制すれば、自分にとって良いお金の使い方ができるということになる。

仕事は「成功」に、プライベートは「幸せ」に、それぞれ振り分けて考えていきたいと思う。成功にお金を使うことは「投資」の考え方が、幸せにお金を使うことは「良い買い物」とは何か?の考え方がそれぞれ必要になる。

どこかの本に書かれていることや、アメリカの投資家が言っているようなことではなく、【自分の上手いお金の使い方】を知っていくことが、最も大切なことだ。

その手引きになるようなことを書いていこうと思う。



◆野球盤かビリヤードゲームか


お金のことを考えさせられた一番古い記憶は小学校1年生まで遡る。両親に聞かれたのだ。「誕生日プレゼントは何がいい?」と。こう答えた「野球盤がほしい」。当時、友達が野球盤を持っていた。それが最先端でモードだった。世の中の全てのものの中心に存在するものだった。

ところがある日の、両親と出かけた先の近所の本屋でのことである。十中八九野球盤に決まっていた世界の最先端は、本屋で売られていた小さくて簡易すぎるビリヤードゲームに取って変わられた。「これがほしい!」。そしてそのことを伝えるとこう言われた。「どちらかひとつだけ。野球盤を買ったらビリヤードは買わない。ビリヤードを買ったら野球盤は買わない」。

その言葉を聞いてふと言葉が口からついて出た。何の狙いもなく言った。本当になんとなく言ったのだ。
「他の子はいつもいろんなゲームを買ってもらってるのに、うちだけ買ってもらえない!」
この発言は正確ではない。ちょっと大げさに、よくわからないけど言ってみよう・・・ぐらいの気持ちだった。ダメもとである。

■もしかしてうちは・・・・・

ところが両親は少年にとって予想外の反応を示した。ハッとした感じでお互いに顔を合わせ、1秒か2秒無言で見つめ合った。そして誕生日なんだからまぁいいじゃないか、という少し息を呑むような空気を伴った結論に落ち着いた。結果、少年は野球盤とビリヤードゲームの両方を手に入れることができたのである。

しかしこれは、欲しいものを手に入れた話ではない。その態度を見て少年は考えさせられたのだ。

「これはもしかして、本当にうちだけが買ってもらえない家庭で、誕生日だからと少しだけ無理をするような【とても貧乏な家】ではないのか?」と。そうだったのか!と「初めて」うちにはあまりお金がないのだと気がついた。

■お金に翻弄される2種類の人生

母親はその後節約の人生を送り、お金はないものだという世界の住人になった。お金に関してかなりの制約を受けた記憶もたくさんある。お金がないことの重圧により心が曲がっていた。あるいは、心が曲がっていたからこそ、お金の重圧を大きなものに作り上げたのかもしれない。
父親は母親とは逆に、身にならないことにお金を使った。成功しないことにお金を使い借金を抱えた。少し羽振りが良くなると飲みに行って大きくお金を落とした。その様子を間近で見て失望を重ねた。

2人ともお金に翻弄される人生を生きた。もしかしたら、人生が翻弄されているところに、掛け算でお金が関わったことで、もっと翻弄されたのかもしれない。

お金は人と毎日関わりがあり、望む望まないに関わらず、人生を通じて付き合っていく友人になる。母親は友人を作らず、父親は悪友を作った。

■ちょくちょく・・・

誕生日事件の後のことだ。子供は学習をする。これに味をしめて、その後も同じセリフを言ってみたことが何度かあったが、その後は通用しなくなった。
貧乏なのだという事実に気がつかなかったのは、年齢が低くてよくわからなかったこともあるが、父親が「本はいい」ということでちょくちょく伝記を買ってきてくれたからだ。

今から思うと、「ちょくちょく」というのは結構大事なのだなと思う。この「ちょくちょく」があったから不足感はなく、むしろよくお金を使っているという感じがあった。おもちゃは躾に厳しいから買ってもらえないだけなのだな、とこの事件が起こるまでは子供心に理解していた。

■目的に対してお金を使う

「本はいい」という何かの目的があれば、買ってもらえるのだ(お金は使っていい)・・・と子供ながらに理解が芽生えた。実際本は多くの学びを与えてくれたし、閉塞した子供時代に心のやり場があったのは、本によって外の世界を知ることができたからかもしれない。

そう、お金の使い方の最初は、目的に対してお金を扱うことからはじまる。

一般家庭なら、はじめは子供の学費、家のローン、病気になったときに病院に行くために「必要経費」として止むを得ず使うのだろう。最低限の食費や家賃も同じ感覚かもしれない。これは使い方が上手い下手の話ではない。必須科目だと思ったほうがいい。
しかし今回伝えていくのは必須科目の話ではない。

■稼いだお金をまず何に使うのか?

本をよく買ってもらったのは、親なりに学びと習得を狙う目的があったからだと思う。実際、本から多くの知恵を身につけた。これが「成功」に対する考え方を養ってくれた。

お金を使うことで、学ぶことができる。そして知恵を身につけることができる。知恵を身につけていると世界を知ったり、何かのときにどう対応していいかわかる。・・・・・そういうことが、大人になるまでの自分に大きく役立った。
だから、10代でバイトをするようになって自分のお金ができてくるようになっても本をよく買った。

バイトで稼いだお金は、まず、バイクのローンを組むことに使われた。友達が乗っていたとか、カッコいいとかそういう理由もある。だけどバイクがあることで、これまで知らなかった世界に出かけていくことができるようになった。
次に、バイトのお金は英会話スクールの授業料になった。高校を卒業したら外国に行くつもりだった。日本は暮らしにくく居心地が悪かったので、国外に行く日のための準備に使った。そして、その流れでもうひとつ大きく使ったのは海外で暮らすための貯金だった。

■【自分の世界を広げる】

バイクも、英会話も、留学費も、全て【自分の世界を広げるため】にお金を使った。
これが「成功」の方向に向かう人の最初の使い方になる。世界を広げ、その世界に飛び立つために準備をする。バイクは新しい世界を経験することで自分を慣れさせたし、英会話と留学は実際に大きく自分を飛び込ませた。本にもそういう役割があるかもしれない。

【自分の世界を広げるため】にお金を使うことが、「成功」のための一歩目の使い方になる。

自分の外にはいろいろな世界があるわけで、最初から目的があってお金を使ったわけではない。世界を知るということは、どんな世界があるのか?を知っていくということだから、お金もいろいろなことに使われる。無駄や失敗も少なくない、ということを知っておかなければならない。下手な目的思考は逆にお金を使うことを止めさせる。

■貯金はなんのためにする?

その後3カ国に住んだ。いつもお金はなかった。経験することを優先してお金を使った。日本に帰ってきたときには無一文で、寮付きの仕事に就いた。職を何度か変えて、がむしゃらに働いてお金を貯めているとき、「そろそろ経験ではなく何かを作るためのお金を考えないといけない」と思いはじめた。
ちょうど仕事で上司に恵まれないことが続いたので、これなら自分で事業をやってやる、と心に決めて貯金した。日当のいい工場で働いて毎月15万円貯め続けた。

「成功」するためのお金の上手い使い方のひとつに、「貯金」がある。貯金は貯めることであって、使うことではない。だが、お金の本質を見ると、貯金は「利益の蓄積」であり、利益の性質には「将来の経費」という考え方がある。つまり使うことが想定されている。

将来うまく使うために、または、一度に大きな額を使う必要があるために貯金するのは、「上手い使い方」の考え方だといえる。しかし、「何かあったときのため」に貯金することは、リスクに備えるという意味では正しいのかもしれないが、「使い方」としては下手な使い方になる。

■「使うお金」の貯金

貯金を使わないという考え方をする人もいるかもしれない。実際に多くの人が死ぬとき、平均2000万の財産を残して死ぬ。(あくまで平均値なので、ものすごく多く残す一部の人と、ほぼ残らない大勢の人がいるとは思う)

そのお金は使われず終わったのではない。死後、相続されるか、相続税となる。つまり使われる。

何かに備えて使われることもある。例えば過剰な保険をかける。病気も事故も起こらない。かけたお金は何も生まずに立ち消えることがよくある。(でなければ保険会社は儲からない)
こういうのは下手な使い方だ。

成功のための貯金で最も分かりやすいのは、車を買うとか、家を買うとか、その頭金を用意することだ。車や家が本当に成功か?はひとまず置いて、未来のある目的のために「使うお金」を用意する。
お金の上手い使い方の、方法のひとつに「使うお金」の貯金がある。

■【自分の世界を作る】

さて、話の続きをしよう。27歳で会社を興した。当時はまだ有限会社があり、資本金として300万必要だった。出資と事業に協力してくれる人が100万円出してくれ、自分で200万を出した。【自分の世界を作る】ためにお金を使った。

これが、お金の上手い使い方の2つ目の方法になる。

会社は幸いうまく儲かった。最初自分の給料は8万円で、オフィス兼自宅の家賃は7万円だった。どんどんキャッシュが増えてきてどうしたか?【自分の世界を作る】次の方法をやろうと考えた。それには「人を雇うことと「オフィスを借りる」ことが必要だった。

次はそこにお金を使っていった。

仕事を通じて世界作りをしていたので、その世界に必要なものはいろいろ買った。その中にこんなものもあった。当時はがむしゃらに働いた。1日18時間働いてお風呂に入る時間もなかった。とにかく時間が惜しかった。「どうすればもっと効率化できるんだろう」と考えて、都内各所に電車で営業に出ていたのが時間を食っていたので、中古の原付を買った。

■【世界をスムーズに回す】

人を雇うことやオフィスを借りることで【世界を作る】というお金の使い方をした。
原付は【世界をスムーズに回す】ためにお金を作った。作ることと、回すことにお金の使い方を集中した。

人にとっては、【世界を作る】というのはマイホームを買うことかもしれない。【世界をスムーズに回す】というのは、そのマイホームのキッチンに、奥さんのために食洗機を設置してあげることかもしれない。

次は何に使えば世界を作れるだろう。次は何を買えばよりスムーズになるだろう。ずっとそう考え続けてきた。お金を使うこと。何に使えばいいのかよく考えること。使ったら、その結果どうなったのか注意深く観察すること。金額に見合った使い方ができたのか、価値を得られるような使い方ができたのかフィードバックすること。
フィードバックは「お金の上手い使い方」をするときには欠かせない考え方だ。

■自分の世界を作ったその後は・・・?

そうして、ひとつひとつ形になって事業は大きくなり、必要なものを必要なように買ったので、事業運営も波に乗った。
そこに至ってはじめて、時間的にもお金的にも余裕ができた。余剰金が生まれて、何か別のことに使ってもいい・・・という余裕ができてきた。

ここではじめて「幸せ」の物事にお金を使いはじめるのだが、それはもう少し後で書くとして、「成功」の使い方の続きを書いてしまいたいと思う。

ひとつの事業がうまくいったことで、自分の作ろうと考えていた世界ができた。次にお金をかけたことは【世界の展開】に対してだった。本業とは別のビジネスに次々とチャレンジした。別の世界を作ることにトライしたのである。

■【世界の展開】

ビジネスではなく、もし投資に手を出していたとしたら、それも【世界の展開】になる。今手元にあるお金を使って、別の世界を作りはじめるのだ。

幸か不幸か、投資は向いていないことが早い段階でわかったので、その世界に進むことはなかった。投資はお金を回すことでお金を生む手段だと思われている。運用を考えると確かにそうなのだが、「お金の使い方」として見てみると、【他人の作る世界】にお金を使う、ということがわかる。投資効果があるかどうか、つまり増えるか減るかというのは「使う」ことではない。「得る」ことになる。
「使う」ときの投資の考え方は、自分ではなく「他人にお金を使う」という考え方をする。

自分で世界を作ることが向いている人は事業の発展にお金を使い、他人が作る世界に乗ることが向いている人は投資にお金を使うことが向いている。

■【世界の維持】

複数の事業を手がけていたある日、ふとこう思った。「このビジネスはやりたいことでなければ、やり続けたいことでもない」。
そしてひとつひとつ事業をやめ、最終的に本業もやめることにした。つまり「もうそこにはお金を使わない」と決めた。

もし継続する意思があったなら、お金の使い方の最後の展開は【世界の維持】になる。古いものをただ存続させようとしても、それはどんどん古くなる一方なので維持は難しい。存続のためには、新しく採用するものと、旧く守るべきものを調整していく必要がある。

事業なら、新しい販売方法を試すことにお金を使い、新しいサービスを生むための研究開発にお金を使い、新しいマーケットを作るためにお金を使う。同時に、これまでの営業を強化するためにお金を使い、これまでのサービスを伸ばすためにお金を使う。既存マーケットを維持し、顧客離れが起こらないためにもお金は活躍する。


◆「成功」のお金の使い方 まとめ


「成功」に対してお金を使うときの考え方をまとめよう。

まず【自分の世界を広げるため】にお金を使う。これは世界が広がっても終わることはない。自分の外には広い世界がある。それをひとつひとつ知っていくことで、何が自分に向いていて、何が向いていないのかがわかる。

そして向いていることがわかってきたら【自分の世界を作る】ことにお金を使う。その方法のひとつに「貯金」がある。「作る」ために必要なことにお金を使うし、必要なら貯めてから使うのだが、もちろん失敗も多い。何に使えば成功し、何に使えば失敗するのか?を学習しながら使う。

世界が作られてきたら、同時に【世界をスムーズに回す】ためにお金を使う。効率よく自分の世界が進んでいくために、何にお金を使えばいいのか?うまく回るようになれば、自分が作った世界は不安の解消ではなく、安定的に成功を生み出してくれるようになる。

世界が安定してきたら2つの方向がある。より進む場合は【世界の展開】にお金を使い、安定的な発展を見込むなら【世界の維持】にお金を使う。

世界を展開するときは、自分の世界を展開する方法と、人の世界に乗る方法がある。世界を維持する場合は、新しい物事を採用する視点と、旧いものを守る視点が必要になる。

■「使う」人がなぜ貯金を可能にするのか?

この一連の流れが、「成功」に対するお金の上手い使い方を作る。この使い方をいつも頭に入れ、実際に使い続けることがお金をうまく使う人だ。「ずっと使い続けるの?」という疑問があるかもしれない。世界を知ることや、最初自分の世界を作ることには、失敗がつきものだし、使ったはいいけど、無駄に終わることもあると思う。
ついお金を投じてしまうこともあるかもしれない。(私のホームページ制作のように)
それでもひとつひとつ経験を積めば、「自分のうまくいくパターン」がわかってくるし、「自分が何にお金をかけると、どのような形になって返ってくるか?」もわかるようになる。
一度そうなったら、もう無駄にお金を使うことがなくなるし、お金のストレスからも次第に解放されていく。無駄にお金を使うことがなくなれば、余剰分は貯金になる。貯金が上手くない人でもお金貯まってしまうのは、「使う」ことにフォーカスするからなのだ。

■【投資】と【良い買い物】の違い

成功では、今後の自分や、得られるべき自分の世界にお金を使う。例えば資格を取るなら、その資格を活かして将来仕事をしたいとか、何かのテストをパスするために有利だからだろう。つまり、成功は時系列が「未来」にある

成功にお金を使うというのは、自分の未来にお金をかけることだ。つまり「将来あるべき自分に【投資】する」という考え方をする。
だから、投資のリターンが返ってこないなら(資格を取ったが仕事に役立たなかった、試験にパスできなかった)下手なお金の使い方をした、ということになる。

一方で「幸せ」に対してのお金の使い方がある。よく間違ってしまうのは、欲求を満たすためにお金を使うことで、幸せを「感じる」ことだ。それは幸福感を得るための方法であって、幸福なお金の上手い使い方ではない。
幸福感はただの感情、いい気分のことで、幸福、つまり「幸せ」は自分自身のあり方そのものに関係する。【良い買い物】をすることが幸せとお金の関係のキーワードになる。


◆「幸福感」がなく「幸せ」なこと


普段当たり前に身の回りにあるもの。当たり前に身の回りで起こっていること。ふと考えてみると、感謝などしていないが、実はありがたいことだ、実は気持ちのいいことだ、実は恵まれているということだ・・・という事実の中に「幸せ」がある。
例えば3食食べることができていること。雨に濡れず、毎日快適に眠る場所があること。
こういうことはよく見逃されるが、考えてみると幸せな物事で、そして普段「幸福感はない」

お金を上手く使うためには、一般的な幸せではなく、「自分オリジナルの幸せが何か?」を知る必要がある。他の人にはどうでもいいこと、さほど幸せではないことでも、自分にとってそれが幸せであるという「自分自身のあり方」なら、そこにお金を使うことが「幸せ」に対してのお金の上手い使い方になる。

■【アップグレードされた内面の充実と現実の変化】

コラムを書く前、自問自答した。「これまで一番うまいお金の使い方ができたのは何だったろうか?」。即答で答えが出た。最初の車を買ったことだと思った。

これまで書いてきたように、貧乏時代があまりにも長かったので、車の免許を取ったのは遅く、事業に余裕が出た30になったときだった。それでも貧乏を乗り切る癖がまだあったので、免許は福島県の山の中の田舎の教習所で、合宿で取ることにした。もちろん料金が安かったからだ。
そして無事免許を手にすることができ、高級車を買った。当時、生涯で最も高い買い物をした。

その車がうちに来たことで、生活も経験も何もかもが変わった。世界も広がったし、車の外見を見てウットリもした。車の中の空間に自分がいることが好きだったし、デートの行き先ややり方も変わった。あの車を買ったことが、それまでとその後の、価値観や概念を結構なボリュームで変えてくれたのだった。これまでとは異なり、そして【アップグレードされた内面の充実と現実の変化】をもたらした。

■お金を使って得られる幸せ

「ほしい車を買うことができた」というのは、欲求を満たしただけで「幸せ」とは関係しない。その車が人生に入ってきた。そして入っている間ずっと、やっぱり買って良かった、側にいてくれて良かった、と思えるかどうかがポイントになる。
ただの気持ちだけでもない。それを買ったことで良い気持ちが動くとともに、実際の生活や自分のあり方が、それ以前よりも何かの好影響に変わっていること・・・それが「幸せ」のポイントになる。

だからもちろん、幸せはお金を使って得るものばかりではない。だけども、世間で言われていることに反して、お金を使って得られる幸せは思っているよりもはるかに多い。

■それを得た後も「お金がかかる」もの

車はそれまでの生活を良い方向に大きく変えた。事業が成功して余裕が出てきた時、他にも幸せにお金をかけたことがいくつかある。全国に寿司を食べに行ったり高級料理店によく行った。それまで知らなかったハイブランドの服を買うようになった。そのほとんどは趣味の延長で、うまく幸せに結びつかなかったが、それでもいくつかは気持ちとあり方を確実に変えた。

中でも特に大きな影響を与えたのは犬を飼ったことだった。事業を任せていた社長が「犬でも飼えばいいのに」と軽く言った言葉でなぜか決心がついた。
富士山のふもとのブリーダーのところまで犬を引き取りに行った。そこからロンと名付けた犬との生活がはじまった。ロンがいるといないでは、生活や生き方そのものに大きな違いがあったと思う。いてくれて良かったし、そのおかげで幸せであることが増した。

当然お金がかかるわけで、そのお金の使い方は幸せをもたらす使い方の大きなものになった。

■自分の幸せ範囲を広げる努力

そこからだいぶ時が経つが、2回目の結婚で娘を授かった。誰もそうだと思うが、子供ができるということはお金を使うことになる。まず単純に、出産にお金がかかる。生まれた時の喜びと、その後の自分への関わりを考えると、これもお金の上手な使い方だった。そうは思えない人や、実際にそう言えない人もいると思う。人によって違う。

食のバリエーションを広げたり、ブランドの服を買い、住居も三十数回引っ越した。舌と味覚感覚は鍛えられることで、自分の本当に求める美食や、通常の食事の傾向がはっきりとしてきた。そうなると、そのはっきりしたものを毎日得るようにした。
服には高いだけで全然ダメなものもあれば、安いのに10年以上着続けるものも出てきた。そうなると、自分に適した素晴らしい服がどんなものか?ということがだんだんわかるようになる。そういう服を買うことができるようになる。

■幸せの基本は「衣食住」

幸せの「基本」は衣食住にある。なぜなら、その3つの全てが生活上「毎日」触れることだからだ。接触頻度の高い毎日のことが、もし、「とりあえず」「有り合わせで」というもので囲まれているとしたら、その人生はきっと「とりあえず人生」「有り合わせな生き方」になる。とても幸せとは言えない。

自分が本当に求めている服。素材や重さ、色、形。自分が本当に求めている食事。食材、調理法、どこで食べるのか。自分が本当に求めている住居。どんな物件で、家具は何に囲まれているのか。そういうことのひとつひとつが「自分らしい幸せのあり方」を決める。

それが「とりあえず」であればあるほど、「幸せ」ではないので、「幸福感」という感情や気持ちを求める行為で解消しようとしてしまう。そういうお金の使い方は下手だと言わざるを得ない。

■なんでこんなの買ってしまったんだろう

毎日のこととはいえ、多くのことを試さなければ、本当に自分が求めているものが何か?がわからない。簡単に妥協してしまう。「数多く試す」というのは成功のお金の使い方と同じだ。「幸せ」もいろいろと試してみなければ、自分の心が希望するものがわからない。必ずしもお金で買える幸せのことではなく、幸せそのものを試さなければ、自分の幸せが何か?を本当の意味で知っていることにならない。

だから【良い買い物】の裏側には、「なんでこんなの買ってしまったんだろう」「お金を無駄にしてしまった」という苦い思い出がたくさんあるはずだ。例えば付き合う彼女に、そこまで何かを買わなくても良かった・・・と後で思ってしまうように。

自分の身の回りに(い)なくてはならないものは(つまり幸せであるためには)、それが周囲にあるための努力をする必要がある。単純に言えば、物を買う必要がある。あるいは、もし誰かと結婚することが幸せであるのだと思ったなら、「事実結婚をする必要がある」。

■【自分らしい幸せ】を止めるメカニズム

これは簡単なことのようだが、実際にはそういう行動に多くの人が踏み切らない。単純にほしい服を見つけた時に、躊躇してその日は買わず、後日見に行ったらもう売り切れてなかった・・・という経験はないだろうか。

幸せは現状肯定の上に成り立つので(成功は現状否定による将来肯定の上に成り立つ)、もしそれが手に入らなくても「今現在幸せであるという事実」には何の悪影響ももたらさない。だから、「手に入らなくても良い状態による幸せ」は手にしている。この現状の幸せが、【自分らしい幸せ】を手にすることを止める。
例えば結婚となると不安もある。独身であってもとても素晴らしい人生だ。人との距離も今はこれが丁度いい・・・という場合、幸せは目の前に「ある」。結婚しなくても十分に幸せなのだ。なぜ踏み切ることでリスクを増やす必要があるのだろう?

■幸せは更新される

「今現在十分幸せなのに、なぜリスクを取ってまで別の幸せにトライする必要があるの?」という疑問が出てきた時、人は幸せにお金を使うことをやめてしまう。いや、お金だけではなく、今よりもベターな「自分らしい幸せ」を得ることそのものをやめてしまう。そうなると幸せは停滞して、悪くはないが陳腐なものになっていく。

成功のところで【世界の維持】に必要な2つのこと、新しいことの採用と、旧いものを残すことを見たことを覚えているだろうか。これが「幸せ」にも当てはまる。旧い幸せを良しとして進むだけでは、幸せは着実になくなっていく。二十歳で買った服が、四十歳になっても同じように幸せをもたらすわけがない。

私は最初の車を買って明らかに幸せだった。だが、今でもその車に乗っているのなら、今乗っている車から得られる幸せよりも、色褪せた幸せしか手に入っていなかっただろう。そういう経験は誰にでもあるはずだ。

■【幸せの可能性】

自分が本当に希望する「良い買い物」ができた。そして、自分の周囲の物や人は、とても素晴らしい。満たされている。本当の意味で幸せだといえる・・・という状態になったら、次はお金を【幸せの可能性】に対して使っていく。
これは「満たされない感情を満たす行為」とは違う。感情は満たされている。そもそも幸福「感」ではなく、幸福であるために必要なお金の使い方をしてきたのだから。

【幸せの可能性】というのは、今よりももっと「自分の心が求めていることに近い物事があるのではないか?」という考え方をする。今も十分素晴らしい。過去最高だ。100点といっていい。でも世の中には120点があるかもしれない。その可能性にお金を使う。

■自分の心が何を求めるか?

「じゃあ例えば結婚していても、次の人を探すということ?」と思う人がいるかもしれない。もし、自分の心がそれを求めているならそうするべきだと思う。そうではなく、同じ人と過ごす5年目と10年目、15年目の幸せのあり方は違うのだから、今は10年が過ぎたので、15年目の幸せのことを考え始めよう・・・でもいい。心が何を求めるか?は人によって違う。

ある家に住んだときにダイニングテーブルを買った。予算の中で一番いいと思える物を手に入れた。それから生活が始まり、毎日そのテーブルを使って、いい感触と実際の生活を営んできた。そのテーブルを手放すことを決めたのは、買ってから1年半経った頃だ。
感覚に少しズレが出てきた。実際に生活をしてみて、もっと低いテーブルが必要だと思った。その方が「より」幸せに近いと、何かが湧き上がってきて「そうであるように」自分を働きかけた。

■「幸せの可能性」へのお金の使い方

テーブルを2年弱で買い換えるのは、一般的に考えて珍しいと思う。だがそれが必要なら、【幸せの可能性】を求めてあり方を変え、お金を使うのだ。

テーブルは高級家具店で買ったが、逆にもっと昔にIKEAで買った安くてオシャレ「風」な2脚の椅子はずっと自宅に残り続けている。椅子として座ってはいない。飾りのように家の空間に存在している。なくなっても構いはしないが、そうなると何か物寂しいし、不足感を感じる。毎日部屋を目にして何か足りない気がする。といって、それに代わるものが何か、今はまだ思い至らない。見つけられていない。
それが見つかればきっと買い換えるだろう。「幸せの可能性」にお金を上手く使うのだと思う。

■より【自分らしい幸せ】を知る

幸せであることに努力は必要ない。これまでに得てきた自分の結果を肯定すればいい。感謝もしていい。だが、より【自分らしい幸せ】であることを知るには、今の幸せに疑問を持つ必要が出てくる。そしてほとんどの人が、そうは思いたくない。そのために現在地にとどまり続ける。

幸せの現在地にとどまっている人は、決まったようにお金のことをこう評価する。「別に困っていないし、ないわけではない」。贅沢をしたいだけできるわけではないが、不足によって貧乏であるわけでもない。
現在地にとどまるというのは、「ある程度そこそこいいところでいいじゃないか」という心理の表れで、それがお金の考え方にも反映される。否定されるほどではない、という評価になる。

だから使うこともそこそこ不自由なく使う。そしてもう予想がつくかもしれないが、このお金の使い方と背景にある心理は一致していて「そこそこ不自由なければそれでいい人生」を歩んでいる。「自分らしい人生」は歩めていない


◆「幸せ」のお金の使い方 まとめ


幸せへのお金のうまい使い方をまとめてみよう。

成功は投資の考え方が必要だった。幸せでは【良い買い物】をする。良い買い物は【アップグレードされた内面の充実と変化】をもたらす。それ以前とは、内面も現実もより幸せになっている。前も幸せだったが、それよりも幸せになる。

何が良い買い物になるか?を知るためには、自分の心が本当は何を求めているのか?を知らなければならない。そのためにいろいろと経験する。お金を使う。その中にはたくさんの苦い思い出を伴うが、残りのものが【自分らしい幸せ】として芽生える。
【自分らしい幸せ】に毎日密接に関わっているのが「衣食住」になる。だから、衣食住は幸せの基本として上手くお金を使っていく必要がある。

そうして幸せの土台が固まってきたら、【幸せの可能性】にお金を使う。幸せは現在地に留まらせる魔力がある。だけど本当は、【自分らしい幸せ】にはまだ上がある。その可能性にお金を使うようにする。


◆お金を使うことと人生の関係


さて、ここまでお金のうまい使い方を「成功と「幸せ」の順番で見てきた。どちらも「人生に関わること」だった。お金を使うことと人生には密接な関係がある。それを見ていこうと思う。
成功にお金を使うにしろ、幸せにお金を使うにしろ、「使う」ということが「人生のあり方」とかなりリンクしていることがわかってきた。お金は人生を潤すために使うことができる栄養剤になり得る。(反対に人生を壊す毒にもなるし、人生に関わってこない知らないものにもなり得る)

【人生を通じてお金を考える】ときは、こう考えるといい。

「人生を通じて収支が赤になったことは一度もない」・・・もう少し簡単に言えば、借金を抱えたり、支払いができなくて困ったり、それによって無理に労働したりすることがなければそれでいい、ということだ。
それが可能なら、数字を見る必要もないし、貯める必要もない。危機感はないが残高20円なのか、残高2000万円なのかは関係がない。

■お金を使うコツ01【あるお金でできること】

数字を気にせずにお金を使いながら、うまく生きるために必要な考え方は5つある。

最初の考え方は、【あるお金でできること】を考える。そんなの当たり前じゃないか、と思うかもしれない。でもそうじゃない。多くの人がローンを組んでいる。住宅、車、学費を組むために金融機関からお金を借りたり、信販会社のお世話になっている。

成功を目指す人で会社を経営している人は借り入れをしているかもしれない。【世界を作る】【世界の拡大】にはお金が必要だ。上手く使わなければならない。しかし、身の丈を超えて使った方が上手く使えるという保障はない。

幸せにお金を使うことを知っている人は、もしかしたら子供の希望する私立の学校に行かせるために無理をして働くかもしれない。それもひとつのあり方ではあるし、心から求めているならやればいいが、「ないお金をあるようにして使う」ことを考えるのは上手いお金の使い方ではない。

■お金を使うコツ02【確実に成功を導くもの、幸せを高めるものを買う】

2つ目の考え方は、【確実に成功を導くもの、幸せを高めるものを買う】ことだ。

必要だから「とりあえず」買うことをやめる。それなら不便に甘んじる。これは無駄なものにお金を払わないということではない。有用なものでも自分の成功、自分の幸せを生み出さないものには、あえてお金を使わない。
「たぶん生み出してくれる」というものにもお金を使わない。

もちろん、成功でも幸せでも、世界を経験するために失敗を見越してお金を使うことはある。けれども、失敗するとわかっているのに経験を理由に行う必要はない。「未来の自分」にも「心の求め」にも叶っていないものには見向きもしないことだ。

■お金を使うコツ03【覚えておいてフィードバックする】

3つ目は【覚えておいてフィードバックする】ことだ。使ったお金を逐一メモする必要はないが、何にどれくらい使ったら、どんな形で返ってきたかを正しく知る必要がある。

幸せの基本は衣食住に使うことにあると書いた。衣と住は食よりもお金がかかることが多い。私の場合はこのソファがいくらだったか、このベッドのマットはいくらだったかを覚えている。例えばそれが10万円なのだとしたら、同じ10万円でも「自分にもたらしてくれる恩恵」に差があることがわかるようになる。

それを繰り返すと、「10万円で自分が得るべき価値はこのぐらいだ」という費用対効果がわかるようになる。そうなると、有名デザイナーが作った10万円の服がいかに価値がないか、それとも大きすぎる価値があるのか?がわかってくる。自分にとっての価値がわかったら、その10万円を気にせず使うのか、決して使わないのかの判断ができるようになる。

無駄遣いが減り、ますます使い方が上手くなる。

■お金を使うコツ04【気にせずに使うジャンルと分野を作る】

4つ目は【気にせずに使うジャンルと分野を作る】ことだ。衣と住は高額なものが多いが、食は特に家庭で食べる分にはそれほど高額であることは多くない。ピーマン1個がどのくらいの価値を生み出したかを考える必要はないし、現実的でもない。

なら、なるべく良質なものを得られる店を知って、値段を気にせず買うようにする。本当に必要なものだけを買う。そして1ヶ月経ってお金は大丈夫だろうか?と振り返ってみる。金額を見る必要はない。残高が十分か?だけを気にする。

もしスーパーで買い物をするのにこの方法をやってみて、「特に問題は起こらない」ということならそれを続ける。電気をつけっぱなしにしてどうなるか。夏場クーラーを切り忘れて家を出たことが5日あったとして、その結果本当に困るようになるのか?気にしない方がうまい結果になるのなら、お金を使うという概念すら忘れて、得たいように得ることに集中する。

■お金を使うコツ05【お金で解決する癖を持つ】

5つ目は【お金で解決する癖を持つ】ことだ。成功を考えるなら苦手だがやるべきこと。幸せを考えるなら心が求めていないが必要なこと。それらを満たすためにお金を使う。マイナスの補填といってもいい。

例えば領収書の整理や帳簿をつけることができないのなら、経理代行会社にアウトソースする。例えば家の中の片付けができないのなら家政婦を雇って片付けてもらう。成功や幸せの土台を整えるために使うお金は、マイナスに使うのではない。現状の維持が、成功や幸せの状態を継続するのに必要なことがある。
「お金で何を『解決』できるか?」と考える癖をつけておく。

■使うことをしているようで、実は・・・

お金を使うことが話題に上がった瞬間、もう別のことを考えている人が多くいる。
ある人は「無くなってしまったら、減ってしまったらヤバイ。減るとしてもどこまでならOKだ」と減ることやなくなることを考えている。
別のある人は「今このぐらいの収入がある。来月はボーナスだ」「今事業が波に乗っているから兼ねてから欲しかったものが買える」と、お金が増えたり、稼いだりすることを考えている。
こんな人もいる。「これだけ貯めたのだから使用分に回してもいい。失った分を、次貯めるためにはこうすればいいのだし、増やすことはできるのだから」と貯めることを考えている。
仕事に忙しくストレスが溜まっている人が「自分へのご褒美」として、学びを高めるのは「ダメな自分を良くするため」と、下げたマイナスを取り戻すことを考えている。

誰もお金を使うことに取り組んでいない。本気で考えてもいない。多くの人が自分の負債回収のためにお金を使う・・・「使う」というよりは、必要経費の位置付けとして「ロス」する。

■自分がないから金持ちを真似る

作家村上春樹の、どの小説だったか忘れてしまったのだけど、金持ちについての話が出てくる。金持ちがみんな決まった外車に乗る。高級料理店で食事をし、高級マンションに住む。誰もが同じようにする。この車に乗り、このディナーを食べ、このワインを飲む。
自分がない。ただ金を得ることに、技術的に長けていただけで自分がない。人と同じことをやっているだけだ。中流の収入の人が中流の流行を守るように、お金があるという立場の人がお金があるという立場の流行を守る。

それを成功と呼べるわけがない。何の功績も成していない。まして幸せとは決して言えない。「自分の幸せの形はわかりません。だからみんなの真似をするんです」と言っている。

■死ぬ日までお金の使い方が上達する人

自分のことを知れば、自分を上手く運ぶことができるようになる。仕事や異性や、衣食住を自分に合ったものにしていくことができる。お金が関わるものは、そこにお金を使っていくことができるようになる。
自分のことを知らなければ、「自分のことを知らない同じ立場の人」がお金を使っていることに、お金を使っていくことになる。ごく自然なことだ。

自分のことを知ろうとせず、今ある実績や幸福に頼るのは、自分のことを知るには努力とトライが必要で、それは時間もかかるし、失敗してつまらない気持ちになることも少なくないからだ。
ということは、その試みを毎日行っている人が、実はお金の使い方が上手い人なのだと言える。死ぬその日まで、ずっと上達し続けて使い続けるだろう。


あとがき


27の時最初の事業を興した。その事業が2年経った時に入ってきた元社員だった彼がこう言った。

『「新しい金の使い方」みたいなのでどうでしょう。
ある女性起業家をインタビューした経験と最近のアンケートから「知覚を広げたい」「理解を深めたい」という気持ちが強いと思います。読者のみなさんは松原さんが「知覚すること」や「本質を理解すること」に長けていることを知っているので、松原さんの強みに投資して自分たちを牽引して欲しいと思っている。
だからコラムの内容を考える上で、

・みなさんと松原さんの差分は何か
・そのうち埋めるべき差分は何か
・さらにそのうち(みなさんが)一歩先に進むための差分は何か

を調べました。といってもとても全部は調べきれてない。 なので感覚も入ってます。で、読者の多くが金を稼ぐ人たちである一方で、松原さんは金を使う人である、というポイントに注目しました。
新しい働き方にコミットしたり新しい世界を作ったりするのは、金の稼ぎ方、インプット方法が変わると言えます。 インプットが変わるならアウトプットも変わるべき部分や変わる余地が生まれるんじゃないかと思って、「新しい金の使い方」なんてどうかなと思いました。
読者のみなさんも将来的には金を使う人になりたいと思ってたり、気づいてなかったりすると思うので、一歩先の内容にもなりやすいかなと思ってます。
どでしょか?』


最初の事業を辞めたときにも彼に仕事を頼んでいたりした。
一緒にわざわざ葉山の結婚式場のカフェに行って、その式場の年間売り上げを予想する。どんな内容で単価はいくらか、を知るために男2人で式場のパンフレットをもらった。超長編連続アニメをレンタルしてきて終日見続けた。
まるで遊んでいるようだ。「幸せ」も入っていたと思う。同時に、そこから得られる物事、考え方、感じ方があった。つまりそういうことにお金を使っていた。

そんな一通りの歴史を経て、この提案がやってきて、ついにお金の使い方について書くことになった。書いてみると、そういえばものすごく使うことを考えているし、自分の中で体系立っていることに気がついた。同時に、「あれ?誰もこれできてないんじゃないか?」ということに気づかされた。

お金の固定概念に侵されている人は多いが、そうでない人をよく見ても(本文で書いた金持ちのように)お金の使い方がものすごく下手だと思う。なぜなんだ?と考えたら、人の情報に流されてお金を使うだけで、全然自分が求めていることに使っていない。というか、求めていることすらわかっていない・・・・そんなことに気づかされた。

普段コラムを書くとき、構成を変えることはないのだけども、このことに気がついて、半分分量ぐらい書いたコラムを全部捨てて、ちから書き直した。それがこの内容だ。「マネーセミナー」は作ったことがあるけども、初心者向けの内容だったので、今回きっかけをもらってこのテーマでかけたことは自分にとっても、とてもよかったと思っている。

松原靖樹

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