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ほぼ週報 #企業分析のタネ vol.1(23/01/01~23/01/07)

1. 気になるニュース、記事

■交通系インフラ「非鉄道・非航空」へと戦略見直し

まとめると「航空も鉄道もコロナ前の水準への回復はまだ先の見通し。交通事業以外で収益源を確保する必要がある」という内容。

25年度の連結営業利益で2000億円を目指し、1割を非航空で稼ぐ目標だ。ANAのマイル会員は約3800万人だが、メタバースやアバター事業などでも会員組織が造成されていく。これら事業での潜在的なお客様を含めれば、マイル会員と合わせて約5000万人の商圏があるとみている。買い物や教育でもマイルを使えるようにして、1つの経済圏を構築したい

ANAHD芝田社長「国際線の再建、他社との提携カギ」

JR東の深沢祐二社長は「コロナ前には戻らないという前提に立つ必要がある」と語る。ICカード「Suica」を活用したサービスの拡大や22年末に発表した金融サービス「JRE BANK」など非鉄道ビジネスへの取り組みはJR各社の中ではアタマ一つ抜きんでている。

JRに迫る「脱・鉄道」 戦略見直し、23年に前倒しも

航空2社はまだまだ航空事業が収益の9割程度を占めるうえに、新事業でアバターやメタバースなどを目玉にしていますが本質はマイル会員圏を対象に小売や新電力販売で戦うという、ドコモやKDDIと真っ向からぶつかる戦略なのでこのままであれば爆伸びはしなさそうなイメージです。

一方で面白いのがJR各社。東海道新幹線に加えてリニアでさらなる交通の権益独占を図るJR東海と対照的に、すでにJR九州は非鉄道事業が7割を占めてさらにMaaSにも積極的だったりとなかなか各社戦略が異なっておりおもしろい。

各地域下での積極的な都市開発や交通系ICの普及度の高さ、モバイルSuicaやモバイルICOCAの開発、MaaSトレンドと考えるとこれからの地方経済の担い手になりそうなのがJR各社ですね。

ちなみに日本は狭い国で人口密度が高いことから鉄道が採算性のとれる事業として成り立っていますが、グローバルに見れば鉄道は公営である国がほとんど。広大な国土の利用者が少ない沿線をカバーしきれないんですね。
日本も人口数の減少と人口分布の都市集中が進むので、JRもさすがに公営化はなくとも補助金などで救済するような行政との関係性がどんどん濃くなるような気はしています。


■韓国LG電子が白物家電をアプリで機能更新

韓国LG電子が自社アプリを通して白物家電の機能を更新する新サービスを始めると発表しました。洗濯機や冷蔵庫などの高級家電シリーズに適用する。米国を皮切りにサービスを海外展開し、ソフト更新による販売後の継続課金モデルを模索するそうです。同日にドアの色をシースルー含め自由自在に変えられて音楽も流せる冷蔵庫を発表。欲しいかはともかくcoolですね〜

EV然り、製造業の「モノからコトへの変化」は主流なのでアイデアは目新しくはないですね。リカーリング型をとるメーカーを聞くと先行するのはソニーが浮かびますが、ソニーはゲームやAIBOなどいずれもエンタメ領域なので洗濯機や冷蔵庫など「生活家電」で挑むLG電子の手腕が気になります。

財務総合政策研究所「中国家電メーカーの躍進と日本の家電メーカーの今後の課題」

なお、家電については日本にいると『中韓メーカーが「安かろう悪かろう」で高級品なら日本メーカー』みたいな先入観がありますが、それは大きな間違い。上記グラフのように、日本市場だけがガラパゴス化しているだけでアジアの廉価品マーケットはもちろん欧米の高級品マーケットも根こそぎシェアはハイアールやLG電子など中韓のメーカーに惨敗しているんですね。このへんのグローバル環境での立ち位置は把握しておきたいところ。
家電領域で国内勢を大きく先行する企業の次の一手として、チェックしておく重要性のあるニュースでした。


2. 気になる決算、企業

RIZAPグループ、3,000円台のコンビニジム「chocoZAP」が好調

RIZAPの新事業「chocoZAP」が最近気になってます。ジム未経験層をターゲットに、月額3278円で24時間365日使える「コンビニジム」を提供しているサービスで、会員数も1年間で113人から10万人へと急拡大、店舗数も2022年11月末で204店舗あります。

2023年3月期 第2四半期 決算説明会
2023年3月期 第2四半期 決算説明会

固定費を抑える工夫が「店舗の無人化」「設備のコンパクト化」です。
入退会からトレーニングメニューの提案まですべてアプリ上で対応し、無人運営したことで24時間オープンを比較的容易に実現。固定費を削るために鍵付きロッカーやシャワールームをなくしていますが、ジム未経験層を対象とすることで「私服でそのまま5分だけ気軽に運動!」というコミュニケーションでハードル低下も実現しています。一つの意思決定がマーケティング的にも財務的にも複利が効いているので美しいモデルだなと感じてます。

パーソナルジムを全国に展開している株式会社WORKOUTの土屋社長が上のようなソロバンと今後見るべきKPIをさらっと出していますが、こういう計算を自然にできるくらい企業を見る数を増やさないといけないなぁと。

1人あたり、1店舗あたり、1個あたりで感覚的に理解できる粒度でビジネスを掴むのが分析の鉄則と頭ではわかっていてもなかなかパッとその構造化の頭が作れていないのが課題です。今後のアウトプットを通して身につけたい。


3. おもしろかった本

■ビジネスモデル・エクセレンス ハイアールはなぜ白物家電の王者になれたのか

中国の家電メーカーの話をしたので紹介。ハイアールというエアコンや冷蔵庫などで世界シェアトップクラスの中国家電メーカーをMBA流に分析した本です。自分はたまたま紙の新刊を手に入れられたのですが、すでに絶版となっていて知名度も低く、なかなか読める機会が少ない本です。

内容の公式の紹介文はこちら

ハイアールの源流は、1920年青島に建設された冷蔵庫工場。
1949年中華人民共和国が樹立されると、その工場は当局が管理する工場になった。低品質と労働意欲の低さで知られていたその工場は、1984年に張瑞敏(チャン・ルエミン)という若い役人の指揮下に置かれ、新たな経営手法の実験場となり、その後劇的な成長を遂げる。
今では冷蔵庫、エアコン、洗濯機などの白物家電で世界シェア1位となり、携帯電話やネットワーク機器も製造するようになっている。
ハイアールが既存の世界的大手企業との厳しい競争の中でこれだけの偉業を、しかも短期間でどうやって成し遂げたか、そしてハイアールが実践したビジネスモデル改革の力がどんなものだったかが、本書の核心部分だ。

あまり知られていない中国メーカー躍進の背景とそれを実現させた経営手法が解説されているけっこうレアな本です。個人的にかなりおすすめ


4. 雑記

初回なので自己紹介と始めた理由を。ふだんはHR系のスタートアップで企業や業界、キャリアに関するコンテンツをつくっています。
Strength Finderの1位が「収集心(Input)」のためリサーチや情報収集は容易なのですが、アウトプットが得意でなく学習の回数や生み出す価値の量が少ないなとぼんやり課題感を感じてました。
そこで2023年になったのを機に、日常的にどんどん情報を取り入れて、統合して、排出するまでの学習のサイクルをもっと高速で回すべくnoteを再開した次第です。

たまにインスピレーションを感じた企業をめちゃ深掘りして解説記事を書いています。この「週報」はそのためのタネ探しの"テイ"です笑

Twitterもやってます

以上です!見ていただきありがとうございました
また来週お会いしましょう

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