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醜い子


 喉元にカッターを突きつけられた。高校二年の冬だった。目に涙を浮かべてこちらをまっすぐに見ていた。油絵具の匂いの充満する美術準備室で友人は狼狽えながらも私の目を見ていた。友人の手は震えていた。刃先は私の喉に確かに当たっている。このまま強く刺されたら血が噴き出すのだろうか、映画のワンシーンを眺めているみたいな気分だ。
「いいよ、刺しても」
 友人の手を取って喉に刃を少しだけ奥に刺す。当たっていただけの刃が押し込まれるのが分かった。友人は小さな悲鳴を上げてすぐにカッターを床に落とした。
「こんなこと、するつもりじゃ」
 最後まで言い切る前に友人は涙を落した。きれいな眼だと思った。
「大丈夫だよ」
 しゃがみこんでしまった友人の隣に座って、手を握り、もう片方の手で背中をさすってやった。刃物を使うことで本気であることを見せつけたのだろう。穏便に済ます最適解が私にはわからなかったから一か八かで彼女の手を取って刃を押し込んでみたのだ。友人には私の喉を刺すなんてことはできないと一種の信頼を置いていた。ただ一瞬でも私を刺してしまおうと思えるほどの興味が向けられていたことに初めて気づくことができた。
 友人がここまでになったのには一枚の画像が原因だった。今までの誰かに撮られた行為の最中の私の画像。教室で誰か見ていたのを友人は見てしまったらしい。友人は他人が嫌いだから、余計に感情的になってしまったのだろう。その画像を撮られたことに覚えがあった。行為の最中、不自然に向けられたスマホに気付かないわけがない。ただ、知らない振りをしなければもっと手酷いことをされるのではないかと思った。故の防衛だった。仕方がなかった。
それに私は友人に誰かと付き合っていることを言ったことは無かった。友人は男が嫌いだったから余計なことを言うのは違うと思ったから。友人は知らない。私が割と誰とでもいることができるなんて。学校では友人が常に隣に居るから、基本話しかけようとしてくる人はいない。友人は私が誰かと話していることを気に食わない節があった。人を睨んだりしなければ友人は絶対に人が寄ってくる容貌なのに。警戒心の強い猫みたいな子だ。そんな子になぜか好かれていた。私のどこが良いのかいまいちわからないけれど、仲良くしてくれることがいいことは間違いない。友人は私が隣にいるときは割と機嫌がいいように見えた。友人は男と話す時は嫌そうに目を合わせずに舌打ちをする。私が誰かと話している時は寂しそうにふいっとどこか向いている。わかりやすくてかわいい子だと思った。高校生活、この子がいる限りは一人になることは無いんだろうな。友人にちょっとした安心感を抱いていた。
誰かと関係を持ったのは初めてのことじゃない。近くの四歳年上の人に無理やりされてからそのあたりはどうでもよくなってしまった。それと同時に都合のいい行為だとも思った。必死に私に縋る様子がとっても滑稽で面白い。付き合わされる分こちらが疲れてしまうことは難点だけれど。薄いゴムの膜が守ってさえくれれば安全だし、一回受け入れてしまったものなんだから後に何回やったって変わらないじゃないか。何人か付き合ってそういう行為に至った人も至らなかった人もいるけど、人付き合いってこんなもんなんだと思ったら総じて面倒に思った。一時全部断っていたら他の人のひんしゅくを買ってしまったことがある。その時は酷かった。教科書に落書きされるわ部活で無視されるわで中学最後の一年は悲惨なものだった。おかげで卒業アルバムに女の子の寄せ書きは二つほどしかなくて、見返すものでは無くなってしまった。
高校は知り合いが少ないところを選んだ。おかげで平和に過ごせていた。私に懐く友人もいてそれなりに充実したと言っても過言ではない日々だった。だけどクラスメイトの一人に、中学の時の元の鞘の誰かが言ったのだろう。その後はもうそのままだった。それをネタに脅されて行為をするだけ。携帯を向けられることが増えて、恐ろしく感じた。シャッター音が鳴るのが怖くて、生活に少しの支障が出てきたりした。高校生なんて写真や動画を日常的に撮っているからそれを避けることは難しい。『写真苦手なんだ』と避けていたら友人は少しずつ減っていった。その中でも写真を撮ることに執着の無いあの子が残った。友人のあの子には知られたくないから本当に内密にする様に頼んでいた。いつの間にか知らない顔もいたりしたけれど、彼らは私のことを知っているから仕方なく続けていた。今回の件はきっとそのうちの誰かが蒔いたものの一つだろう。教室で見るなんて迂闊であきれてしまう。きっと明日からはまた一人なんだろうな。少しだけまた寂しくなってしまったのでこの子じゃない誰かに触れたくなった。

 バイト先のスーパーでいつも通りレジ打ちしていた。週三回、二年目の作業には慣れてきて時々の理不尽に頭を下げながら考え事ができる程度にはなった。いつものようにエプロンを着けて売り場に向かう。お菓子売り場に並ぶカラフルなパッケージを陳列しながら今日学校でだされた課題について考えた。コミュ英の課題やって、多分明日は指されるから英単語をちゃんと調べてちゃんとやくさなきゃいけない。正しい翻訳をしないとあの先生は怒るから文法まで調べなきゃならない。そういえば電子辞書の電池が切れかかっていたからバイト終わりに買いに行かなければならない。メモに書かないと私はすぐに忘れてしまうからこっそりメモ帳に『電池 買いに行く』と書いてポケットにしまった。早くバイト終わらないかな、腕時計を見るとまだ四十分程度しか経っていない。忙しくない作業の時は時間が進むのが遅い。
「すいません、ゼラチンの場所を教えてもらってもいいですか」
「ゼラチンですね、ご案内します」
 子連れの母親に聞かれた。カートにはお菓子が二つあるから、このおとなしい子にはきっと兄弟がいるのだろう。売り場まで案内をしてまた持ち場に戻った。フルーツの缶詰や果物もカートに入っていたからゼリーでも作るのだろう。きっといい家庭なんだろうなと思うと微笑ましい。考えてたらゼリーも食べたくなった。みかんとかフルーツがたくさん入っているやつ。帰りに家族に買っていこうと思ってまた陳列を続けた。
午後五時を過ぎるころには主婦が増えてきて会計が混雑してくる。応援を頼まれてたのですぐにキャッシャーの用意をした。レジを開けるとすぐに列ができて仕事が流れ込んできた。ビニール袋の有無を聞いて、かごにテトリスのように商品を詰める。支払方法が交通系かクレジットか現金ぐらいしかないから楽だ。何十人目だろうか、その流れ作業の中にあなたと同じくらいの背丈の人がいた。あなたのその見慣れた髪型で、あなたによく似た色の瞳が目の前に現れたのだ。その姿が、知らない誰かの隣で笑っていた。その姿がどうしても嫌で泣きたくなった。
「ありがとうございます」
 その顔はにこやかに、隣の男と腕を絡ませて去っていった。あなたじゃないよね。きっと違う。だってあなたの目元には泣き黒子があるけどさっきの人にはなかった。あなたは学校終わりに目元にラメを輝かせるような化粧はしない、と思う。それにあなたはこのスーパーを使うことは無いはずだし、違う人なはず。でも、もしそうだったら。
その時だったと思う。私のあなたに向ける感情について、考えるべきかもしれないと気付いたのは。退勤までの数十分をその後どう過ごしたかなんてすっかり忘れてしまうくらいに頭があなたで埋まっていた。
『今日、買い物来てた?』
 自転車で家に帰る前にスマホで打ち込んで、それを送る前に取り消した。ただの友人である自分が送ることに躊躇いがあった。うん、似ていたけど、違う人。きっとそうだ。でも一瞬、こちらを見て笑った。その雰囲気がどうにもあなただったように思えてしまって、苦しくなった。電池を買いに自転車をこぎながらずっと考えていた。
家で夜ご飯のグラタンを食べて、デザートに家族でフルーツゼリーを食べた。風呂に入り終わって課題をやっている頃に、あなたが趣味の話を送ってきて少し笑えた。でも奥底にある不安がぬぐえなくて、その夜は眠ることが難しくて大変だった。
次の日の学校でなんとなくあなたに聞いた。
「ねぇ、昨日って六限の後って」
「昨日はねぇ、部活の後輩ちゃんに呼ばれたから美術室でお絵描きしてたよ」
「そうなんだ」
「昨日はバイトでしょ、おつかれさまだね」
「うん」
他人の空似だったようで安心した。不意に現れたのが本当にあなたじゃなくてよかった。普段通りに笑うあなたを見て穏やかな気持ちに戻れた気がした。でも、そう思ったと同時にあなたへ募らせていた重い感情から目を背けられなくなった。

 カッターから手を離して私は狼狽えた。行動をしてしまったこと、後悔している。あんなこと絶対にしていいはずがない。一体、私はなにをしようとしていたんだ。
「こんなこと、するつもりじゃ」
 あなたを見つめて視界がにじんだ。なんで、なんで私が泣いているんだろう。あなたの喉元に刃を突き立てる感覚がしっかりと手に残ってしまった。少しだけ血が滲み始めているのが見えて恐ろしくなった。
「大丈夫だよ」
 しゃがんだ私の背をさすって手を握るあなたは何を考えているの。
「ごめんね」
「うん、大丈夫だよ」
「でも、喉が」
「痛くないから、大丈夫だよ」
 ちょっと待ってね、と少し私から離れて美術準備室の窓を開けて、あなたは籠った部屋の空気を入れ替える。冷たい風が入ってきて演劇部の発声練習が遠くで聞こえた。私はひたすら絵具の飛び散った床の木目を見ていた。
「床、冷たいから椅子座ろっか」
 私の手を取ってあなたは私を立たせて座らせる。
「今日は後輩ちゃんたち来ないって、さっき連絡来てたよ」
「うん」
 今見上げたらあなたはどんな顔をしているのだろう。怖くて仕方がなくて手が震えてしまう。私はあなたに対してこんなにも衝動的になれるなんて思っていなかった。
 集まって喋るクラスメイト達の後ろを通った時に偶然見えて、聞こえてしまった。どうせまたくだらないこと話してんだろとか思っていたのに、あなたの名前が聞こえてしまった。思わず見てしまったら、およそあなたであろう乱れた姿の画像だか動画だった。訳が分からなかった。知らないあなたがその画面に居た。嫌で仕方が無かった。そんな姿が気軽にくだらない奴らに見られていることも、それを撮ったクソみたいな男も、そんな姿を撮られているあなたにも、怒りを覚えた。あなたから、そんな男の気配なんて感じたことなかったから気分が悪い。だってあなたには私が居るから、ちゃんと縛っているつもりだった。いつからこんなことをしていたの、なんて聞ける勇気なんか私には無い。ううん、聞きたくない。でもあなたを嫌いになれない。だってこの高校生活で隣にいてくれたのはあなただけだから。つまらない、気分の乗らない日々だってあなたが月下美人のように微笑むから私は今日もここに居られる。綺麗に笑うあなたの隣に居れることが私の僥倖だというのに。寂しさのような怒りのような気持ちが渦巻いてしまって言葉が何も出てこなかった。
放課後前でよかったかもしれない。一日中それを頭の隅に置いてなんておきたくなかったから。
「落ち着いたら、少し話そうか」
 あなたはまた私の手を握った。どうしてそんなことをしてくれるのか。顔を上げると少し困ったような顔で笑うあなたがいた。

 高校を卒業して、あなたは上京した。それぞれ大学に進んだ。長期休暇がある度に会って、お茶をしたり、ちょっとした旅行もした。こうした関係を続けていられるのはあなたの優しさだろう。
この前会ったのは、年末年始であなたが帰省してそこで連絡をくれたときだったからおよそ二ヶ月半ぶりだ。誕生日のプレゼントにネックレスを送ってくれたからそれを着けてきた。シンプルなトップスを選んだから綺麗なそれが映える。
駅で待ち合わせをしている時間がうれしさと緊張が交わって不思議な気持ちだ。早く会って、何を話そうか。カフェにでも行ってあなたが好きなカフェモカを飲もう。ふらふら散歩をしよう。空腹になったらあなたの好きなものなんでも食べに行こう。マスクの下で顔が緩んでしまって仕方がない。電車を降りて改札付近、貴方を探した。黒いコートを着たあなたを見つけた。あのコートは以前に買い物に行ったときに買ったものだということにすぐに気付いた。あなたのそういうところが本当に優しい。少し早足であなたの方へ向かった。
「おはよう」
「おはよう、二ヶ月ぶりぐらいだね」
「うん、コートやっぱり似合ってるね」
「あ、気付いた? 気に入ってるんだ」
「そっかぁ」
「髪、短くした?」
「うん、少しだけ」
「かわいいね」
 あなたに会うことが決まってからすぐに美容室に予約した。すぐにあなたが気付いてくれることを知っていたから、少しでもいい状態で会いたいから昨日切ってもらった。やっぱり気付いてくれるんだから、期待通りでうれしい。
 そのまま改札を出て少し買い物をした。少し休憩するために喫茶店に入った。そこでお昼も食べようとオムライスとカフェモカを、あなたはナポリタンとクリームソーダを頼んだ。
「喫茶店の食事メニューってなんかワクワクするよね」
「うん、なんか雰囲気あっていいよね」
 テーブルに到着した食事はとてもシンプルでおいしかった。口の周りにケチャップがついてることを指摘すると恥ずかしそうに口を紙ナプキンでふいた。少し滲んだリップの色が艶やかだった。しばらくすると食後に飲み物が到着した。
「クリームソーダ、珍しいね」
「うん、気になっちゃって」
「喫茶店の定番って感じするもん」
「カフェモカも特別な感じだね。カップも綺麗でこだわってる感ある」
 あなたはグラスの底から浮かび上がっていく小さな気泡たちを眺めている。
「こんなにゆっくりできるのいいよね」
「うん、穏やかな時間が流れてていいよね」
 あなたはしばらく眺めた後、上のアイスクリームを細長いスプーンで一口食べた。
「美味しい」
「よかった」
 クリームソーダ頼むことは意外だった。だけど楽しそうな表情が見れて正直満足している。
「カフェモカ好きなの変わってないんだ」
「うん、好き」
 だって、それはあなたがよく頼んでいたから。
「変わってないこともあるんだって思うと安心する」
「安心するならいいんだよ」
「そうだね」
 ストローでソーダを吸っていた。なんだかその様子が見慣れなかった。
「最近、何かあった?」
「んー、期末が終わってバイトしてって感じかな」
「バイト変えたの?」
「うん、今はパンケーキ屋」
「キッチン?」
「そう。まだまだ新人だけどね」
「もう焼いたりしてるの?」
「今は盛り付けだけかな。今度教えてもらえることになってる」
「いいな、行ってみたい」
「上手くできるようになったら作ってあげるよ」
「本当? 楽しみにしてる」
「うん、約束する」
「前のところは穏便に辞められた?」
「なんとかね」
「よかった」
「そっちは?」
 スプーンを動かす手が止まった。一口掬ってからあなたは話した。
「ちょっと報告ある」
「聞きたい」
「うん」
 少しだけためらうように見えた気がした。
「今度結婚するんだ」
「結婚って…」
「うん」
 頭が真っ白になるって、本当にあるんだ。確かに右手の薬指に指輪がある。あなたはアクセサリーが好きだからファッションで着けているものだと思っていた。
「え、でもまだあと一年大学残ってるよね」
「うん、学生結婚になるのかな」
「うわぁ…、そっか。おめでとう」
「ありがとう」
 あなたは少し照れたように言う。そんな表情するんだ。
「相手は?」
「同じ大学の先輩」
「じゃあ相手は社会人になるんだ」
「そうだね」
「でも、まだ学生なんだし早い気もするけど」
 今度は溶け始めたアイスを一口掬った。
「妊娠しちゃった」
「え」
「まだ五週目ぐらいだから全然見た目わからないんだけどね」
「悪阻とか、あるの?」
「少しだけ、これからみたいだけど」
「匂いとか?」
「うん、あと眠気が強くて午前中はあまり動けなかったりする」
「そうなんだ…」
「堕ろそうとも思ったんだけど、相手が望んだから」
 嫌だ。そんな慈しむ目をしないでよ。
「ちゃんと付き合ってる人?」
「うん」
「そっか、ならよかった」
「言えてよかった。私、一番緊張したかも」
「そうなの?」
「だって、一番の友達に伝えるんだもの」
 ほっとしたのか緑色の炭酸を多めに吸い上げた。そっか、妊娠か。その後のことは正直どうでもよくなった。
 電車であなたと別れて、家に着くまでの何もない道であなたのことばかり考えてしまった。家までの道がやけに短く感じた。玄関の扉が重い。
「ただいま」
「お帰り、夕飯できてるよ」
「うん、ちょっと部屋で休憩してからいくね」
 二階にある自室に入る。服を脱いで部屋着に着替えてそのままベッドに倒れこんだ。結婚しちゃうんだ、知らない人と子供なんかつくっちゃってさ。男なんてなにがいいんだ。私と居たほうがあなたはずっと楽しいはずでしょ。一緒に旅行して、買い物して、食事して、同じベッドでも寝たこともあるのに。寝落ちするまで電話だってした。お互い就職する場所の中間地点でルームシェアしたいねとか言ってたじゃん。なのに、なのに、なのに! なんで離れていっちゃうの。
「早く降りておいで」
「今行くー」
 階段を降りるとお母さんが味噌汁を取り分けている。
「お姉ちゃん、遅いよ」
「ごめん、夕飯何?」
「今日はねぇ、私が作ったシチューだよ」
「お手伝い頑張ったんだ」
「えらいね」
 妹が嬉しそうにテーブルに着いて母も父も座った。
「いただきます」
 具材の大きさが揃わないシチューはその分よく煮込まれていておいしかった。
「今日はデザートも作ったの」
「何作ったの?」
「ババロア!」
「すごいじゃん」
「楽しみにしててね。お出かけ楽しかった?」
「うん、久々に会ったから楽しかったよ」
「高校の子?」
「そう」
「卒業しても仲いいって良かったね」
「うん」
「変わりなかった?」
「相変わらずだったよ」
 私の知らないことが増えていたけどね。私の何段階か先を進もうとしているけれど。ババロアはちゃんと固まっていて甘かった。テレビをぼうっと見てからリビングを離れて自室に戻るとあなたからメッセージが来ていた。
『今日はありがとう』
『また今度遊ぼう』
 いつもあなたが私だけに送るスタンプが送られていた。
『私も今日楽しかった!』
『今度はそっちで会お~!』
 メッセージを送って一息ついた。ベッドに寝転んでぬいぐるみを抱きしめて携帯を見つめた。あなたに電話をかけたいけれど、あなたは実家だと電話ができないから我慢する。代わりに今までのメッセージのやり取りを眺める。そっか、もう高校生じゃないからあなたの隣に居れはしないんだ。寂しい。一緒に居たかった。だけど知らない男にあなたが抱かれてしかも添い遂げようなんて嫌で仕方がない。これを受け入れることが大人になるということなら悲しい。布団の中でうずくまると暗くて落ち着いた。高校の時のことすら忘れてあなたが遊んでくれてそれだけでも充分じゃないか。また会う約束だってした。だから、大丈夫。縁はきっと途切れない。
『遊ぶ場所、考えておくね』
あなたは本当に、優しい人。

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