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醜さ

その人は大学生の夏期留学の行き先が一緒だった。韓国のアイドルやメイクが大好きで、何度も来ているらしい。一方私は第一希望はアメリカで、英語のスコアが足りず韓国になっただけで、正直乗り気ではなかった。
渡韓初日、寮の近くのチキン屋に連れて行ってもらった。彼女が色々韓国語で注文してくれたので何とか夕食にありつけた。ありがたい。彼女は「ルームメイト、中国人になっちゃった~。中国人はうるさいから『No Chinese』って寮の申請書にも書いたのに~」と言っていた。
授業は木曜までだったので、木曜の夜はよく一緒に買い物やご飯に行った。選択した授業についていくのに必死で、平日はご飯の時間も削っていたから、本当に韓国料理がおいしく感じられた。彼女はiPhoneでいつもSNSを見ていた。しょうがないので、私もスマホの画面を何となく見ていた。私のスマホは古いからか、なぜかwifiが入らなかった。
その週は、一人で過ごした。以前彼女と歩いた街を一人で散歩して、その時スルーした店に入ったり、おいしかったものをもう一回食べたりした。韓国語はほぼ分からないので、初めから一人だったらどこにも行けなかったかもしれない。ガイドがいたお蔭で、少しは勝手も分かっていたので、とってもありがたかった。韓国って楽しい!
週明け、彼女は、お母さんが来ていると言った。iPhoneの調子が悪くなったので、お母さんが日本から新しいのを持ってきてくれたらしい。1か月半の留学期間の、ちょうど半ばぐらいのことだった。

リアルの知り合いで、Twitterでつぶやく人も少なくなったが、私は彼女がだいたいどんな仕事をしていて、休日はどんなところに行っているのか知っている。もちろん彼女が呟く範囲で、だが。男女差別に厳しくて、LGBTQへの理解が厚い彼女なら、もう国で人を判断したりせず、目の前の人とも仲良くできていると思うけど。

そんなことを思いながら、休日の昼間に引きこもって、SNSに愚痴をしたためている。我ながら醜い。醜さを誤魔化すべく、他のことを考えようとするも、長い爪を噛みながらスマホをいじる姿に、どうしても憑りつかれてしまう。


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