マイアイデアルガールフレンド
「オメー、たまには人のためになることをやったらどうだ?」
「なんだその口のききかたは!」
「テメーがこういう風に育てたんだろうが!ああん?」
AIでまず駆逐された仕事は秘書だった。
あらゆる人が自分専用のAI秘書を生まれたときから設定する時代、個人情報すべてを把握しているAIは、恋人や家族よりも自分の事を知ってくれている存在になった。進学や就職、恋愛から結婚までAIにアドバイスを求めるなかで、特定のアバターを通してコミュニケーションしたくなるのは当たり前の話で、そしてオタクなら自分の性癖を凝縮した姿にするのは必然的だろう。誰だってそうしたし、俺もそうした。
俺の友達以上恋人未満という設定のAI秘書である幼なじみの黒髪長身巨乳ヤンキーキャラの向井リナは、咥えたキャンディを落とさんばかりの勢いで(タバコパーツは未成年設定では利用不可)俺に説教をかましてきた。
「だからあ、オメーのダチの様子がヤバいんだって!」
「犯罪なら警察のbotに引っかかってるわけで、そうじゃなきゃ見過ごすしかないだろ……」
「ダチを見捨てるような奴は男じゃねぇ!」
俺はヤンキーみたいな女子が好きなだけで、別にヤンキーが好きなわけじゃないんだが……と思いつつ、自己学習でヤンキーらしい振る舞いを身につけた彼女をどう宥めるか頭を巡らせた。
「わかった話を聞くよ……。で、アイツ、アフラ増田がどうしたって?そもそも最近ツイートしてないだろ?」
「確かに最後のツイートは13日前だ。ただそれは表アカの話で、別アカではツイートしてる」
「別アカ特定するな!」
「そこでの情報とこれまで投稿した写真から特定した住所、近隣住民のSNS情報、報道を結びつけた」
「やめろ!犯罪だろ!」
「公開情報だから違法じゃねーよ。そこからの推理なんだが……」
リナは俺に耳打ちをするようにディスプレイに顔を近づけ、囁いた。
「コイツ、人を殺してるかもしれない」
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