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Interview with Martin(Beaten to Death)

つい最近2022年に突入したばかりと思ってたら外から金木犀の香りが漂ってきました。
今年の5月頃Grind4Ukraineへ参加した際、ラインナップの中に知り合いを何組か発見。そこにBeaten to deathの名前もあり久々にマーティン(Gt)とメールしてたらノリと流れで彼らのアルバムのリイシューをやらせてもらえることになりました。

それならノリのついでにこの部屋に寄ってけ。個人的に質問したいこともあったので、実に半年ぶりとなるGUEST ROOM開室です。

Chapter 0 - イントロダクション

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<Biography>
2010年に結成されたBeaten To Deathはノルウェーのオスロを拠点とするメロディック・グラインドコア・バンド。5枚のフルアルバムと1枚のDVDをリリースしている。
当初はサイドプロジェクトだったB2Dは2011年のデビュー・アルバム”Xes And Strokes”が絶賛された後、ライブを始めるとすぐにメンバーのメインプロジェクトとなった。
ヒステリックなブラストビート、肉厚なグルーヴ、トーンの効いたギター、毒のある歌詞というユニークな組み合わせで、Beaten To Deathはアンダーグラウンド音楽界に独自の需要を築き上げた。
アメリカの著名な音楽雑誌Decibelは、2015年のアルバム”Unplugged”を過去10年間のベストグラインドコアアルバム第6位に選び、2018年のアルバム”Agronomicon”、最新作”Laat maar, ik verhuis naar het bos”はノルウェーグラミー賞(Spellemannprisen)のメタル部門にノミネートされた。
ノルウェーやヨーロッパ諸国に加え、2017年にはLOUD & METAL MANIAへの出演で来日公演も行ってた。彼らは当然、パンデミックが終わり次第の再来日を希望している。

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<interview date 08.08.2022 - 09.29.2022>

ーマーティン、まず今流すべきBGMを教えてくれ。これ読むときちょうどいいのを。
あー、じゃあグラインドコアじゃないのにしよ。読書に向かないよな。
最近はGreet Death, Chat Pile, Burnt By The Sun, DJ Criminal, Cloudkicker, Meshuggah, Cult Of Luna, Ovlov, DIIV, Cloakroomとか聴いてる。

ーDJ Criminalいいね。
EsagoyaのHorornisdiphonevalleyもドライブ中に聴いてるよ。日本のバンドだとButcher ABCとViscera Infestが好き。
ノルウェーからはShe Said Destroy、Grant The Sun、Big Muff 68、The Nika Riots、Kambodsjaとかをチェックしといてくれ。
レコメンドが多すぎて全部は紹介できないけどこれは良いプレイリストになるよ。


ーあざす!以前来日もしてるし、B2Dのことを知ってる人も多いと思うけど、君らのグラインドコアは非常にアヴァンギャルドでリスナーによって解釈も異なると思う。自分たちでB2Dの音楽性をどんな風に捉えてますか?
そういえば、昔レビューで"アヴァンギャルド・グラインドコア"って表現が使われているのを見たことあったな。
自分らは「メロディック・グラインドコア」って呼んでるよ。全員良いメロディと速い曲が好きだし、そりゃー組み合わせたくなるよね。物事を深刻に考えないし、どんなアイデアも奨励してリハーサルの中で色々なことを試してみたいと思ってるし、常に新しい演奏方法を探してるんだ。

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<Photo by Quiten Quist>

Chapter 1 - アイデアを惜しまない

ーその組み合わせって多分誰しも思いつくけど、グラインドコアに求められる要素とメロディックの融合って簡単には実践できないですよね。例えばメロディックな曲のドラムをブラストにすれば?イマイチ。じゃあイントロとヴァースがグラインドでコーラスに歌メロがあるだけでいいか?いいわけない。
あー、まあそうだね。


ーそんな感じで「融合」って単純なアイデアだけでは成り立たないと思ってるんですが、どこからアイデアやインスピレーションを得てますか?
あらゆる種類の音楽から。出発点はグラインドコアだけど、インディーロック、ポップミュージック、インストゥルメンタルミュージックとかいろいろ聴くよ。あと、僕たちは全員さまざまなバンドでさまざまな音楽を演奏してきたんだ。音楽的なバックグラウンドが違うからそれぞれのアプローチを基本許容してるし、作曲家が何人かいて全員がアイデアを出し合ってます。まあ、B2Dは運がよかったよ。
リハーサル・スペースでジャムって有機的に曲を見つけてて、本当に計画は何もしてない。


ー運って大事ですよ(笑) 結成以来12年メンバーチェンジがないってすごいすよね。
そう(笑) バンド始めるとき楽しくなければいけないってルールを作った。もしやってて楽しくなくなったらやめるよ。でも今のところうまくいっているしメンバーも結成当時と同じ5人だし。


ー12年も経ってたら結成当時から変わったことってありますか?
音楽性、バンドのスタンス、地元のシーン、何でも。

大局的には変わってないかな。常に目標を決めて集中するようにしてます。ライブがあるときは、事前に2、3回リハーサルをする。常に曲作りをしているし、幸運なことにギタリストのトミーがレコーディング、ミキシング、プロダクションを担当してくれるから、過程が楽なんだ。
極端なものでもクロスオーバーの可能性があることを実感するのは不思議なもので、時間があればぜひツアーに出たいと思っているんだ。将来、また日本に行けるといいんだけどね。


Chapter 2 - 創作は続く

ーメンバーの中にデザイナーやエンジニアがいるのっていいすよね。不思議なもので、いい曲書く人って他の表現も上手なことが多いと思う。来年出る新譜の録りもトミーですか?
そう。今回は幸運にもオスロで最もクールな会場を借りてレコーディングできた。アンダーズ(ヴォーカル)は何年もバーテンダーとして働いていたから、その業界の人なら誰でも知っているし、場所についても友人が手伝ってくれたんだよ。
ボーカル以外は全てライブで録音した。クリス(ドラム)が良いテイクを撮ったら、すぐにアンケートを取って、みんながそれぞれ親指を立てたら、それでおしまい。一日の終わりには、オスロで一番素敵なバーに行って、太陽の下でお酒を飲むことができました。最高の一日だったね。

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ー新しいアルバム楽しみだな~。次はどんな感じのになるんですか?
新譜でもB2D節は全開だと思うよ。新曲にはノルウェーの伝統的な要素があったり、ブラストビートとの相性も抜群。奇妙だけどキャッチーなメロディもあったり、気に入ってる。バンドに様々な才能があることは素晴らしいよ。ベーシストのMikaは全てのPVを作ってくれているんだ。


ーノルウェーの伝統的な要素って気になるっすね。会場についてはFBで写真見ました。クールだしB2Dはデカいステージが似合う(笑)

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Chapter 3 - 4つの森について

今回リイシューする5thフルについて詳しく聞きたい。かなりコンセプチュアルな作品だと思ってて、「森」ってテーマはどこから出てきたんですか?
5人中4人が、今回復刻されるアルバムの出来栄えにとても満足しています。ドラムの音も大きいしね。たくさんの素晴らしいフィードバックがあり、翌年にはノルウェーのグラミー賞でベスト・メタル・アルバムにノミネートされたんだ。光栄だよ。
5人中4人と言ったのは、ベーシストのミカが全曲をあまり好きじゃなかったことかな。このアルバムで一番面白かったのは、レビューを見ると彼が好きでない曲の方が賞賛されててね。だから今はいつもMikaに好きかどうか聞いて、嫌いならそのままにしてる(爆笑)
僕的には、速いしこのジャンルに合わないはずのメロディーもある。そしてライブ感も楽しい。完璧な演奏ではないけれどエネルギーに溢れている。そしてアンダースのヴォーカルはこのジャンルの中で最も優れていると思う。
ドラムのChrisも褒めてあげよう。このアルバムも一発で録ったから僕らがギターで失敗したらその度何度もプレイしてもらったからね(笑)


ーああ、Mikaにもよろしく…(笑)。「森」ってコンセプトは?ノルウェー、オランダ、日本、宇宙の森を選んだ理由もあったら教えてほしい。
えーと、確か、このアイデアはトミーが考えたものだと思う。彼はおそらく僕が書いた歌詞がアルバムのタイトル「Laat maar, ik verhuis naar het bos」にもなったことから閃いたんじゃなかったっけ?訳すと…

"Nevermind, I´m moving to the forest"
"かまうな。私は森へ引っ越す。"

世の中で起こっているナンセンスなことに対して日々強くなっていく気持ちだよ。メンバー全員がこの感覚に共感してる。
アルバムを4つのシーンに分けたかったから、LPはデジタル・リリースと曲順が違うんだ。今回のリイシューはアルバムの別バージョンになるわけですが、Yosukeがやってくれたレイアウトは本当に満足してます。

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ーオッス、あざす(笑)
ノルウェーの森を選んだのは、オスロにあるお気に入りの緑の場所だから。ハイキングや湖で泳ぐのに最適です。


オランダは、その国のメタルバンドとファンへの愛から選んだ。


日本は今まで訪れた国の中で最も楽しい国なので、森で皆さんに敬意を表したいと思ったんだ。


宇宙の森については他のメンバーがSF好きだからだと思う。僕は個人的にSF映画はクソだと思っているんだけど、みんなこのアイデアを喜んでたから黙っといた(笑)


Chapter 4 - それで、最近どう?

ーまったくその通りで、ナンセンスなことって多すぎる。このアルバムが作られた2019年頃より加速してる。ついでにSFは僕も良さがよくわからん(笑)
このアルバムが出たあと世界はパンデミックに突入したわけですけど、2年経ってノルウェーの状況ってどんな感じです?
平常に戻ったよ。すべてが再び完全にオープンになって、まるでパンデミックのことを忘れてしまったみたいだ。知る限りすべての大人は2-3回の予防接種を受けて、何ならみんな1回はコロナくらってる。
まあ、高齢者や社会的弱者には新しい予防接種が提供されてるし、残念ながら対策は長い間続くよね。


ーへえ~。日本は現在進行形で色々わけわからんこと起こってるけど、ライブが再開されたことだけは嬉しい。
ああ、パンデミックの最中はこっちもキャンセルばっかで、オスロで3回くらいやっただけだ。観客は限られててみんな2メートル間隔で椅子に座らされたりしてね。でもその時期はアパートで孤立している時間が長かったから演奏できること自体がすごくクールだったし、バンドがあることが本当にありがたかったね。


ーアートワークについて。このイラストって4th「Agronomicon」の時と同じ人ですよね?この人のアートワーク本当に超好き。何者ですか?
アートワークはウィリアム・ヘイって人で、アンダースの職場(カクテルバー)の友人だよ。彼が店のために絵を描いたときに才能を発見して、デザイン頼んだら快諾してくれたんだ。
彼はとても自由で、やりたいと思ったら何でもやっちゃうからね。デモと歌詞を彼に送って進めてもらっています。彼の仕事ぶりにはこれ以上ないほど満足してるんだよ。本当に素晴らしい!


ー既に有名なイラストレーターだと思ってました。この富士の樹海の絵って何見て描いたんですかね?完璧ですよ。
知らん(笑) ググったんじゃない?彼はまだ若いしこれから大化けするかもね。彼も今回のリイシューを楽しみにしてるし、こっちでCDのコピーを渡しとくよ。


<Interview & text by yosuke harada a.k.a JAPAN>