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フランス、結局なにが起こってたの?

なんとなくnoteにまとめ始めたのが4月中旬なので、もう完全にタイミングを逃した記事な気がしますが、学びと納得が多かったのでこのまま公開します。

基本的には動画のまとめですが、生々しい部分を重点的に見た側面もいくつかあるので、自分と同じように「フランスのあれ、ちょっと気になるんだよな」「よくわかんねえけど、フランスでなんかあったらしいね」という人の助力になれたらいいですね。


Mass protests in France, strikes across Europe: consequences of political failure?

問題点: 年金制度改革(年金受給年齢の引き上げ)を市民の理解なしに(投票結果を半ば覆して)強制施行した

USレポーター「450000人がパリ近辺の市街地に集結している。特に興味深いのは、今回の件に直接関係しない若者(高校生、大学生)も多数参加している」「年金制度のムリな改革はもちろん、それをきっかけに市民が"政府って全然俺らの声聞いてなくね?"となったのが大きな動き」

特派員「幅広い業種の人が参加している上、(managerのようなwell-educatedな人も含め)エマニュエル・マクロンに投票した人も強い怒りを覚えてデモに参加している」「4年後の大統領選挙までどう乗り切るつもりなのか疑問視する人ばかり」

政治記者「protestやstrikeが前例のないほど勃発しており、イギリス・フランス・ドイツと国や業種を跨いで広がっているので、industrial action(スト)が大陸全土のモノかについては杞憂とは言いにくい」

政治記者「多くの政府が"コロナの助成金で大量消費したから財源がない"と言うが、その一方でスイスではクレディ・スイス救済に短期間で多額資金が用意されたりと、民衆として納得できない側面が起こってしまってる」


The Real Reason For France’s Pension Protests | Economics Explained

国としてのフランスの特徴

Birth rate=1.81 (先進国としては抜きんでて高いレベル)
→他の先進国のように「低出生率による急速な高齢化」は可避

Lazy workersと思われがちなフランス人だが、15-65歳までの約73%程度が働いている(workholicの多いとされるUSでも63%程度)

国の風土として、経済生産性を最大限にするためにwork life balanceを押し出している(2001頃の週35時間労働制が顕著な例)
→他国も直面している状況(pension問題)に、より強く反応

イギリスやアメリカに対する高度人材の流出(brain drain)が深刻化

フランスの年金制度の柱

  1. Non-Contributory Minimm Pension
    生活を維持できる資産や収入のない65歳以上を対象にした政府補助で、一般に月€1000以下(≒15万円)

  2. Vonluntary Private Provisions
    定年に備えて資産を非課税で蓄えられるシステム

  3. Mandatory Pension Previsions
    雇用者/労働者ともに給料から天引きされる税システム

年金システムを維持する方法として
・支給年齢を引き上げる(今回の仏): 大規模ストに繋がった
・年金補助額を引き下げる: 問題大あり
・個人による自発的な年金積立の啓蒙: 高齢化済の国には遅い
・年金に関わる税を引き上げる(現在求められている)
※「仏では一度雇うと解雇しにくい+EU加盟国なので他のとこの人材の方が安い」等の課題が障壁


France pension reforms: May Day rallies turn violent - BBC News

実際にMay day(労働感謝の日)に行われたデモの様子
ひと月以上のデモを通じても政府から具体的な動きがなく、
プラカードも持った行進だけでなく、町中に煙幕が炊かれて催涙弾が飛び交う等、デモはどんどん過激に。

当然、パリ全体が蜂の巣(yellow jacket)というわけでなく局所的。
ただし百万人規模の人間が参加しているのも事実。


所感

『年金受給年齢の引き上げ』というどこでも起こり得る事をきっかけに、町中に催涙弾と爆発音が飛び交い・武装した警官と市民の衝突が繰り返され・町は真っ白な煙に沈む、という事態が引き起こされているのは驚きですね。

ただその根底には「元々の労働者が持っている価値観」だとか「当然とされている労働者の権利」のようなものがあり、その一端に触れて違いを知れたのは大きな学びでした。純粋に面白いですね。

以前簡単に税金の知識に触れた際には「年末調整のような仕組みがあるから日本では税の知識や意識が普及しない」という記述もあり、今回のフランス人が持つ労働者意識の違いもそういった要素が一因となっているとも思えます。


※番外編

イタリア人がフランスでクロワッサンを食べるだけの動画です。
後ろでめちゃくちゃにデモやってて面白い。


※番外編2

May Dayでのストの実際の様子を収めた動画があったんですが、ニュースやエンタメという緩衝材を抜いて生々しいものをみると想像以上でした。
実際を知るという意味ではニュース以上に見ておくべきかもしれません。

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