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【読書感想文】ボトルネック(※ネタバレ含)

米澤穂信先生の「ボトルネック」を読んだ。
(※この記事はネタバレを含みます。)

・あらすじ

高校1年生の主人公は、あるとき岬の崖から落ちた拍子に並行世界に飛ばされる。
そこは自分が生まれず、代わりに流産で生まれなかったはずの姉が生まれた世界だった。
その世界が元の世界と異なる点は、姉が関わることによって元の世界より様々な「よい結果」が生まれたことだった。
死んだはずの「主人公の恋人」は、姉と関わることでその死を回避できていた。どうしようもないほど冷え切った両親の関係は、姉の介入を機に円満な夫婦に戻ることができていた。
その並行世界で主人公は、自分と姉が世界にどれだけ貢献しているかという格差を見せつけられ、自分の存在が世界にとって不要なものだと認めざるをえず、死を望んだ。
死を望んだことがトリガーとなり元の世界に戻れた主人公は、しかしながら今更生きる意味を見いだせず岬から…

・感想

私がこの本を読んで思ったことは、「主人公は不幸な犠牲者である」ということだ。主に、「知ってしまった」と「見つけられなかった」という点において。

人間誰しも、「あのときああしていれば結果は違ったのかな」と思うことはあるだろう。しかし、それはあくまで可能性であり、自分がどう行動しようが同じ結果が生まれた可能性も考えられる。それが運命だと信じられている。
しかし、主人公は明確に「こうしていれば事態は変えられた」ということを「知ってしまった」のである。これが1つ目の不幸だ。
また、主人公は「自分が関わったほうが良い結果を生めた」という事象を「見つけられなかった」のである。これが2つ目の不幸だ。

これらによって自分は無価値だと諦めきった主人公は、姉の「君にもいいところはきっとある」といった言葉にも耳を貸せなくなる。
人は変われるか変われないかという議論は絶えず行われているが、私は相当な経験をしないと人は変わらないと思う。だからこそ、小さな一歩から踏み出すことが大事なのだと思う。どれだけ時間がかかるか分からないが、踏み出せなかった彼の代わりに、一歩ずつ。


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