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韻(いん)の踏み方

このコラムでは、日本語の韻の踏み方について説明しています。さらに英語の韻との違いについても補足しています。

(読了時間:約4分)

韻は母音がポイント

韻を踏む(=押韻)とは、複数の単語間で同じ韻を含む単語で文章を作ることです。韻は、単語の母音によって決まります

たとえば「真夏」という言葉の韻を考えてみましょう。「まなつ」をローマ字にすると「manatsu」となります。この母音の部分「aau」を抜き出すと「真夏」の韻になります。この単語と韻が踏める他の単語は、たとえば次になります。

まわる(mawaru
はなす(hanasu
カラス(karasu

日本語と拍

本来の韻は母音のみを数えるのですが、日本語においては次の子音と記号も1つの韻として考えた方がよいでしょう。

小さい「っ」:促音(そくおん)
「ん」:撥音(はつおん)
伸ばし棒「ー」:長音(ちょうおん) ※1

※1:長音は、一つ前の文字と同じ韻を持ちます。たとえば「マスター」なら、韻は「auaa」となります。


これらの子音や記号を韻の1つとして考えた方がよい理由は、日本語が強く持つある特徴のためです。それは「拍」と呼ばれるもので、学術的には「モーラ」という名前がついています。

「拍」とは、日本語話者が日本語の音を数える際に、無意識に単位としているものです。拍は、短歌や俳句の1文字分とされる単位で、たとえば小さな文字が入る次の単語は、文字数と拍の数が異なります。

「おもちゃのチャチャチャ」
文字数:11文字
拍数 :7文字


日本語話者にとっては、1拍はどれも同じ長さの音として捉えられます。これに対して、英語は「拍」という概念がありません。

この違いを表わす恒例が「英吉利西(いぎりす)」という当て字です。英語では、アクセントのつく母音を、少しだけ音量が大きくそして長く発音します。それを日本語話者が聞くと「えーぎりす」のように長音が含まれているように感じるのです。

「ポテート」「トメィート」「アメーリカ」なども、英語話者の人にとってはアクセントをつけているだけなのに、日本語話者には音を伸ばして1拍増えているように聞こえるのです。


促音「っ」や、撥音「ん」を1つの韻として数えた方がいい理由も、上記に述べた「拍」にあります。

日本語話者にとっては、詰まる音は短くても(同じ長さに聞こえるし)1拍扱いなのです。これに対して、英語話者にとっての詰まる音は子音の1つにすぎないので、十分な間隔を空けるのが難しく感じます。たとえば英語話者にとって「やっぱり」という単語は「やぱーり」のような発音の仕方になります(「ぱ」にアクセントがついていますね)。

日本語と英語の韻の違い

日本語と英語の韻の違いは、上記に述べた「っ」や「ん」だけではありません。そもそも日本語よりも英語の方が、はるかに母音の数が多いのです。日本語の母音は「あ・い・う・え・お」の5コですが、英語には26コあるとされています。たとえば、英語には「æ」のような、アとエの中間の母音があったりします。

しかし、日本語と比べてこれほど多い理由は、発音される母音の多さだけではありません。それは、日本語では二重母音長音とされるものも、別の母音としているためです。二重母音とは「ai(愛)」や「keiga(映画)」のような、母音の直後に再び母音が入るような場合を指します。

次の表では、日本語と英語での韻の数の違いを例示しています。

ノート(note)
日本語:ノート(nooto)→ 韻の数は3つ
英語 :note → 韻の数は1つ
フォックス(fox)
日本語:フォックス(fokkusu)→ 韻の数は4つ(その内「っ」が1つ)
英語 :fox → 韻の数は1つ

実際に韻を踏むときは

歌詞を作る際に、韻はよく用いられます。なぜなら、韻を踏むと言葉に一定の繰り返し(リズム)が生まれて、楽しく感じるからです。

作品によっては、意図的に、二重母音を1つの韻としたり、「ん」や「っ」を1拍としない場合もあります。とすると、その韻の細かいところは、作者が適宜変えていけるものだということが分かります。

まとめ

日本語の韻は、次の8種類だと考えるのがよいでしょう。

・あ
・い
・う
・え
・お
・っ(促音)
・ん(撥音)
・-(長音)

おわりに

最後に、とある有名曲の上手すぎる韻の踏み方を紹介して、このコラムを締めたいと思います。これは、たまたまスーパーで小耳にはさんだときに、思わず「すごい」と思ったものです。

君を守ってやるよと 神に誓った夜なのに

kimiwo mamotte yaruyoto
kamini chikatta yorunanoni

――「波乗りジョニー」サザンオールスターズ


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