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Food|ソロレストランのススメ

コロナ禍になって、友人を食事に誘い辛くなったという声を聞くようになりました。友人同士にあった「気が合う」や「趣味が合う」「同じ境遇」「同級生」「先輩後輩」という間柄のなかに、「コロナに対する考え方」が加わったことは、フードコミュニケーションを考えるうえで大きな変化のように思います。

それならいっそのこと一人で行動した方がいい。今、ブームになっている「ソロキャンプ」なんかも、そんな空気感をあらわしているのかもしれません。

緊急事態宣言が発出されて、飲食店は20時閉店、酒の提供は19時までという要請が出されました。夜の営業を16時や17時に早めたり、ふだんはやらないランチ営業を始めたり、はたまた、代々木上原のレストラン「sio」のように朝コースを始めたり、要請を守りながら新しい取り組みに果敢に挑戦し続ける飲食店のみなさんを見ていると、胸が熱くなる思いです。

そんな飲食店を見て、「応援したい」と思いながらも、「一緒にレストランに行ける人が思いつかない」、「お友だちやそのまわりに迷惑をかけたくない」、そんな想いから食べにいけない方もいるかもしれません。

そんなときは、「ソロレストラン」。いっそのこと一人でレストランに行ってみませんか? コロナを感染させたり、感染させられたりすることもないですし、一人で食べる楽しさ、いつもと違う感じ方ができると思います。

①料理に集中できる
②サービスの方が話相手になってくれる
③自分に対してのご褒美になる

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①料理に集中できる

前職で食の専門誌『料理王国』の編集をしていたこともあり、勉強や取材先のリサーチも兼ねてレストランでの食事をする機会が多くありました。

最初のうちは、同僚や先輩編集者、家族と一緒だったりしたのですが、ある時からぱったりと一人で行くようになりました。なぜかというと「外の影響を受けずに食事をしたい」と思うようになったからです。

相手がいる食事は、さまざまな情報が飛び交かいます。それは、会話の展開だけでなく、表情や相手の服装などの情報も含まれます。相手を思いやる心や一人だけで食べてはいけないという義務感など、どうしてもさまざまな要因が味に影響を与えます。それは極端な話、食事の時間が楽しければ、味は覚えてなくても「おいしかった」ように感じることもあると思います。

それが食事をともにする醍醐味であり、とても素晴らしいことです。

しかし一方で、本当にその食事に感動したのかどうかわかりにくくなります。それは恋人や恋人になろうとしている人と映画を観に行ったときに、その内容よりも、一緒に観た空気を楽しんでいるような感覚です。

だけど、一人で映画をのめり込むように観たいときもある人もいると思います。それは、もしかしたら、ゆらゆら揺れる焚火の炎をみていると安心したり、自分を見つめ直したりするようなソロキャンパーの心境と似ているかもしれません。「一人で食べる」からこそ得られる感動のようなものが、レストランの食事にはじつはあったりします。

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②サービスの方が話相手になってくれる

ソロレストランに対して「一人でレストランに行って寂しい奴と思われないだろうか」という不安があるかもしれません。

一人でレストランに行く人、かなりいますよ。1万円以上のコースを出すレストランなんて、半分くらいが一人の時があります。だから全く自分がおかしいと思うことはありません。

レストランでも1人でも問題なく受け付けてくれます。

ちょっと気にするといいのは、最大4人囲めるテーブルに自分ひとりしかいなくて、テーブルの稼働率を低くしてしまったと思うこともありします。食材も、一人分だけ用意したり調理するのは効率悪いので、申し訳ないなとおもうこともあります。なので予約を2カ月も前から取らずに、来店近くにする(空いてたら入らしてもらう)とかしたりしたこともありますが、それは僕の自分勝手な気遣いで、基本的にはお店側はウエルカムで迎えてくれます。

食事中、一人でさみしい」と思われるかもしれませんが、一人のテーブルの方が、サービスの方が声をかけてくれて楽しませてくれるので、なんなら複数人で行くよりも、食材や料理、お酒のことなどを教えてくれて、充実した時間を過ごせたりします。

しかも、食べるときになったら集中させてくれるので、つかず離れずで本当にありがたいんです。

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③自分に対してのご褒美になる

僕の場合はとくに食に詳しい人がまわりに多かったので、複数人で行くとよくあるパターンに「これは、こうだよね」みたいな解説が入ったり、「これあそこのレストランのアレに似てるよね」とか「イマイチおいしくない」とか、相手からの余計な情報を受け取りながら食事をすることがありました。

僕自身、超絶精巧な味覚を持っているわけではないので、たとえば誰かの「おいしい」という声を聞くと「おいしいかもしれない」と、味覚に補正がかかってしまうことがあるです。テレビや雑誌、口コミなどを前情報をもって食べると、その情報に引っ張られたり、誰それさんが言っているからおいしいんだ、みたいなことで、僕も結構そういう経験があります。

お笑い番組とかでも、無観客の演芸番組がなんとなく面白さにかけるように感じたり、わざわざ笑い声を足したり、笑っている人を映すのって、さそい笑いというか、全体の空気で笑いを作っていくような面もあると思うんです。

そういうことを繰り返していくことって、けっこうもったいないなと僕はおもっていて。自分の「おいしい」という感情が、誰かに決められてしまうようになってしまうんじゃないかと思うんです。おいしいの感動がまわりに左右されることになれてしまうのは本当にもったいない。

僕はとくにあいまいな、環境に左右されやすい味覚の持ち主でもあるので、自分が本当に感動できる味を、どこか忘れてしまっているフシがある。

その忘れてしまった「本当の感動」を、もう一度探すことは、やっぱり一人で食べることなんじゃないのかなと思うんです。よく「自分を見つけるために一人旅にいく」なんていうように、「自分を見つけるためにソロレストランに行く」そんな気持ちです。

自分のためだけにお金を使って、自分だけで体験をする。それは紛れもない自己投資の領域で、最高の自分へのご褒美なのではないでしょうか。

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レストランはいつだってあなたを待っている

ソロレストランは、どんな人にもおすすめできるものではありません。自然が好きでなければソロキャンプに惹かれないように、基本的に食べることが好きでなければソロレストランを楽しむことはでいないと思います。

そのうえで、自分自身を内省する人であったり、自分ひとりの時間を大切にする人であれば、大いにソロレストランを楽しめるソロフーディ―としてあなたの時間を楽しめると思います。

ですので、「みんなソロレストランしよう!」とは言いません。

だけど、ソロレストランに興味はあるけど、何かどこかに踏み出す勇気がないのであれば、その障壁は本当に小さく低いものです。一人だろうが複数だろうが、レストランはどんなときでもあなたを迎え入れてくれます。

僕自身は、①料理に集中できる②サービスの方が話相手になってくれる③自分に対してのご褒美になるということを上げましたが、ほかにソロレストランをやっている人は、また違った楽しさを持っているはずです。

だから、全国1万のソロレストラン・ラヴァー(嘘)が自信をもってお勧めします。ソロレストラン、やってみましょう!

(参考:2020年ソロレストラン実績)

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1月19日 「KADODE」ポップアップレストラン

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2月26日 ティエリー・マルクス銀座(閉店)

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3月14日 Hitotsu

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4月5日 sio

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7月17日 TOYO Tokyo

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11月5日 乃木坂しん

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レストランは、本当に感染リスクが高い場所なのでしょうか。

たしかに、飲食が感染する確率が高いことであることは、残念ながら事実ではあるので、なんらかの手を打たなければなりません。

しかし、肩が触れ合うように密着したり、小さなテーブルを囲んだり、換気の悪い密閉された空間は、避ける方が感染リスクを軽減することになると思います。

一方で、カウンターで並んで座ったり、1.5メートル四方の大きなテーブルに2人とか、6メートル四方に3テーブルくらいの密集度のお店(いわゆるレストラン)は、三密といえるのでしょうか。

そもそもレストランに「臭い」は厳禁ですので、換気を含めた空調はきちんと整備されています。さらに食中毒への対策が徹底しているので、レストラン自体が感染が起きにくい設計だったり、手洗い消毒の徹底がされています。

高級と呼ばれるレストランは、じつはそれほど感染リスクは高くないのではないのでしょうか。

もちろん、だからといって、100%感染しないわけではないので、リスクはあるわけですが、それを言ったら生きていること自体が命を落とすリスクを常にはらんでいます。そのリスクを理解しながらどうやって生きていくか。それは、そもそも人間に課せられた生きるための前提条件であると思います。

今回の緊急事態宣言では、飲食店の休業要請が出たわけではありません。普段の生活については感染予防対策をして、できる限りの接触を減らすということのみでした。

感染のリスクがそれほど高くないレストランでの食事までも自粛の対象にする必要はないのではないでしょうか。食を愛する人たちが助け合う、小さなコミュニティまでも奪う必要はないと僕は思っています。

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