見出し画像

note|スギムラツネユキさんのnoteを読んだ

週末を中心に更新している個人のマガジン「note」では、1週間で読んだnoteのなかから心に残ったものを紹介しています。今回は、スギムラツネユキさんの「モードとリアルクローズと笑顔と (漫画『ランウェイで笑って』)」です。

週刊少年マガジンで連載さている『ランウェイで笑って』が最終回を迎えたそうで、タイムラインでこのところよく見かけていました。「絵がきれいなマンガだなぁと」思って、マンガアプリで読み始めたんですが、これがすこぶる面白い。毎日無料更新を楽しみにするほどはまっています。

スギムラツネユキさんのnoteを読んだわけですが、この解説もわかりやすく、自分がなぜ物語に惹かれているのかがわかりました。

異業種からみても共感できるクリエイティブ論

スギムラさんは『ランウェイで笑って』のおもしろさを以下のように言い当てています。

「サッカーが上手い」「野球が上手い」等は読者にもある程度共通認識がある中で、「デザインが上手いとは?」「優れたファッションデザイナーとは?」という、読者にはイメージがしづらい問いへ挑戦し、その中でも高いレベルでの言語化・ビジュアル化を実現させていたように思う。

これは、ひろゆきさんの切り抜き動画で見たのと繋がる点があるなぁと。

ひろゆきさんは、藤井さんが将棋ブームを作ったという一方で「すぐにブームは終わる」と言っています。その理由は、「なぜ藤井さんの将棋が強いのかの解説を一般のレベルまでもってこれなかったから」「それよりも今日の昼に何を食べたとかを報道してしまった」と指摘しています。

これはすごく的を得ていると思うんですよね。そのあとひろゆきさんは漫画「スラムダンク」があって、今回のオリンピックで過去最強と言われる男子バスケ日本代表チームという仮説を立てています。

ランウェイで笑って』についても、ファッションに疎い僕でさえ、なぜファッションが人の心をつかむのか、そして着る人(モデル)の心をつかむのか、さらには作る人(デザイナー)の心をつかむにかがきちんと言語化されて一般の人でもわかる。さらにそれが異業種からみても共感できるクリエイティブ論になっているのがまた素晴らしい点だと思います。

多くの興味がなかった人たちにとってファッションを見る目が変わるし、世界が変わるきっかけになるんです。

外食におけるモードとリアルクローズ

スギムラさんは物語全体のテーマとして「モードとリアルクローズ」をあげています。

本作が描いてきたテーマに話を移すと、それは「モードとリアルクローズ」ということになるのだろう。「モード」とは平たく言うと自由で先進的な意味合いを持つ言葉であり、言い換えると「アート」に近しいものだ。一方、「リアルクローズ」とは普遍的かつ日常的なもので、アートに対する意味合いとしては「広告」ということになる。(中略)つまり、優れたファッションデザイナーがモードを生み出すことにより、日常生活に溶け込むリアルクローズが浸透するというわけだ。(ちなみに本作では、ストライプ・ボーダー、デニム、ヒール等が、モードからリアルクローズへの変換として紹介されていた。)
本作から読者へ向けてのリアルクローズ。それはファッションへの距離感だろう。そもそも、普段僕たちが身に着けている服とファッションショーとの繋がりを考える機会はほとんどない。パリコレという存在を認識こそしていたとしても、映像で垣間見る奇抜なデザインと今まさに着ている服との関連を見出すことは難しいからだ。しかし、前述したように、先進的なデザインと僕たちが身に着ける衣服には少なくない関係性がある。そのような架け橋をーー決して説教臭くはなく、読み終わってからふと気づくようにーー繋げてくれたのが本作の肝だ。

モード」--自由で先進的な意味合いを持つ

リアルクローズ」ーー普遍的かつ日常的なもの

モードは非日常的で、ふだんの世界で着れるようなものではないから不必要なのではないかという問いに、「優れたファッションデザイナーがモードを生み出すことにより、日常生活に溶け込むリアルクローズが浸透するというわけだ。」とスギムラさんは解説をしています。

そしてそれ、モードがなければ普段着の中で心躍るようなファッションは生まれないということを伝えているように僕は思うんですよね。

そしてこの考え方は、そのままオート・キュイジーヌの流れを汲む高級料理店と、カジュアル・レストランの関係にも置き換えられるように思えてなりません。

ストライプ・ボーダー、デニム、ヒール等が、モードからリアルクローズへの変換として紹介されていた」という指摘と同じように、今は当たり前に目にするようになった「エスプーマの泡や液体窒素の煙、ロゼ色の肉の断面に、ただ焼いただけの野菜」といった高級レストランに起こった「モード」が、リアルクローズ的なカジュアルレストランに変換されて、日々の食事を彩っています。

そもそも、普段僕たちが身に着けている服とファッションショーとの繋がりを考える機会はほとんどない。パリコレという存在を認識こそしていたとしても、映像で垣間見る奇抜なデザインと今まさに着ている服との関連を見出すことは難しいからだ。しかし、前述したように、先進的なデザインと僕たちが身に着ける衣服には少なくない関係性がある。そのような架け橋をーー決して説教臭くはなく、読み終わってからふと気づくようにーー繋げてくれたのが本作の肝だ。

こうスギムラさんは、モードからリアルクローズへの変換をまとめている。これをそのまま外食に置き換えてみるとこんな感じです。

そもそも、普段僕たちが食べている料理と高級レストランとの繋がりを考える機会はほとんどない。高級レストランという存在を認識こそしていたとしても、映像で垣間見る稀少な食材と調理された料理との関連を見出すことは難しいからだ。しかし、前述したように、先進的な料理と僕たちが食べている料理には少なくない関係性がある。そのような架け橋をーー決して説教臭くはなく、読み終わってからふと気づくようにーー繋げてくれたのが本作の肝だ。


そう、『レストランで笑って』というタイトルの漫画ができたら、きっと外食におけるモードとリアルクローズにある架け橋に、多くの人が気付くことになるのではないかと思う。

そして僕自身が料理の中で『レストランで笑って』を生み出すような仕事を生涯のうちにすることができたらいいな、とも思っています。

ーーーーーー

明日は、1週間のClubhouseの振り返りです。

料理人付き編集者の活動などにご賛同いただけたら、サポートいただけるとうれしいです!