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Art|ビジネスマンがアート志向といってもルネサンス美術を学ぶとわけわからなくなる可能性があります

とある打ち合わせで「最近ビジネスマンがアートを学ぶようになってるらしいわよ。日本人に美的感覚はないからねぇ」という季節外れの話を目上の方から振られて、顔が硬った瞬間がありました。

同時に「アート」というのは未だに感性に由来する感情的なものとして捉えられてるんだなぁと実感をしました。

ビジネスにおけるアート思考については以下のサイトの記事が本当にわかりやすいので参考にしていただけたら。

アート思考」は、アーティストの自己や価値観の表現を基にした考え方で、自分起点、自分軸の考えかたを重視しています。ビジネスにおいては、当人に達成したい強い意思のある目標設定や、オリジナリティあるアイデア、コンセプトの発想に向いています。

ちなみに僕が考える「アート思考」は、「一貫した主観的な価値(美意識)のもと、価値のなかったものに価値を与える」ことかなと思っています。

たとえば「無印良品」などは、アート思考の象徴だよなぁと思います。ブランドのロゴや、個性がプロダクトに必須といわれていたものを排除して、飾り立てないプロダクトを作って新しい価値を与えました。

そこには、日本人的な引き算の美意識が貫通しています。

上のサイトにもあるように「アート思考」の根本にあるのは、「自分主体」であること。ピカソやポロックのような常人には理解できないような作品を残すことがイメージされています。

しかし注意をしたいのは「自分主体」の作品は、19世紀のおおむね印象派まで存在しないものでした。

なぜなら、作品は個人で創作するのではなく、注文主のリクエストがあって作品が作られるものでした。

注文主というのは、王侯貴族だったり、教会だったり、新興市民(ブルジョワ)だったりします。

娘の結婚の記念に子宝を祈る絵を

新しく教会ができたのでそこに飾る聖母子像を

貿易で栄えてる事務所にふさわしい絵が欲しい

そんなリクエストを元に作品を残したのが中世から近世(初期ルネサンスからロマン主義)の画家でした。つまり、現代のアーティストとは遠い、クライアントありきの職業画家・芸術家だったのです。

ですので例えば、有名なボッティチェッリの《ヴィーナスの誕生》も誰か(これはわかっていても、イタリア・フィレンツェのメディチ家)の依頼で描いたものだったりします。

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サンドロ・ボッティチェッリ《ヴィーナスの誕生》
1485年頃 ウフィツィ美術館

ですので、決して現代が言うところの「アート思考」ではなく「デザイン思考」だったのだと思います。

そういう意味では、「ビジネスにアート思考を」というのは、じつはちょっと違っていてビジネスに大事なのは「モダンアート思考」なんですよ、ということを僕は声を大にして言いたいのです。

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明日は「Food」。パスタを作ってみます。

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