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雑誌編集者が個人でイベントを企画して得たこと

7月にスタートした30歳以下の料理人の勉強会「Easy going」は、これまで4回。今週末12/8(日)には、このイベントに参加してくれた料理人7人によるポップアップレストラン「HINODE」の企画・運営・集客を引き受け、全面的にバックアップしています。

11/23(土)には、CHEESE STANDの藤川真至さんとともに食のCRAFTSMANに特化したトーク&イートイベント「CRAFTSMAN × SHIP」を実現させることができました。

前職の料理雑誌を離れたのが今年7月、年内にこんなイベントができたのは、それまでお世話になった多くの方のご声援があってこそ。まったく自分ひとりの力だとは思っていません。これまでの培った信頼を使わせていただき、なんとか実現できたというのが本音です。

しかしながら、料理専門誌を7年、雑誌や書籍の編集者を16年やっている僕が、なぜせっせとイベントをやってきたのか。それは、前職でできなかった「読者の顔を見て仕事をする」ということを実現したい、という思いがあったからです。

ムチャクチャ不安だった雑誌編集時代

前職「料理王国」のころは、とても不安でした。

20代から30代前半のスーシェフ以下の料理人に向けた料理情報誌」を目指していたのに、本当にその人たちに読んでもらえているのか、届いているのか。さんざん考えて企画を出しても、それがホントに彼らが欲している企画なのか。それがわからず、ムチャクチャ不安でした。これは本当に、未来の料理人のためになっているのかと……。

取材させていただいた料理人の方々とは、取材を通じて信頼関係を築くことができたので、体感的に「いい本を作っている」という自負はいくらかありましたが、実際に読者の声を聞くことが、ほとんどできない。

メディアからの情報が一方向に流れていた時代にはそれでもよかったのですが、スマホが登場で一人一デバイス時代になってメディアとユーザーが直接つながるようになると、ものすごい勢いでユーザー目線のプロダクトが作られていきます(それ自体賛否がありますが、僕は大いに賛成です)。

しかし、リアクション装置を持たない雑誌は、いつまでたっても読者の要望を受け取ることができない。大いに遅れをとっていくわけです。

そんななか、7月で雑誌を離れて自由な発言、行動ができるようになったとき、自分が考えている料理界への提案は本当に意味のあることなのか? それを確かめたいと思ったのが、リアルイベントを始めたきっかけです。

読者の人の顔を見ながらコンテンツが作れる喜び

実際に、多くのイベント主催者の方と同様に、最初の集客は本当に大変でした。直接連絡をして出席を頼んでまわったほど。

最初のうちはご祝儀のような感じで参加してくださっても、なかなか続けて参加してくださるのは難しく(予定も合わないし)、継続していくのもこれまた大変になっていきます。

イベント主催者にとしては、常連さんはとてもありがたいのですが、それだけに頼るのではなく、新規の参加者も来てくれて、人の流動性があるのが長続きさせるポイントだと思っているので、常に新規の参加者をどう集めるかを考えていないといけない。それは、雑誌でコンテンツを必死に磨いていたころとは違うアンテナの張り方が必要になってきています。

ちなみにいま僕は、イベントに来てほしいなぁ、届けたいなぁという人をSNSで探して、その人をとにかく観察して、どんな文脈なら反応してくれるのかを考えて、その人めがけてSNSを発信をしていくようなことをしています。

雑誌時代は、読者を想像しながらコンテンツを制作することはあっても、こんなふうに、具体的に読者のツイートやプロフィールを見ながらコンテンツを制作することはなかった。初体験のことです。

しかし、その行為自体は「届けたい情報をどう精錬していくか」に向けてのそぎ落とし作業でもあるので、これって良いコンテンツを作るうえですごい重要。雑誌を16年やってきましたが、まだまだ編集者としてできていなかったことがあるんだな、と思えたのは、本当によかったと思っています。

そんなわけで、手前味噌ながら、Easy goingもCRAFTSMAN × SHIPもHINODEも、小規模ながら開催していくことができているのは、「人の顔を見て作るコンテンツ作り」ができているのも一つなのかな、と思っています。

とはいえ、僕はイベント屋さんになりたいわけではありません。イベントは、あくまでコンテンツ(雑誌、webのほか、コーポレートエディター)を作るうえでのユーザーさんとの接点として行っているものです。

イベントに参加してくださった方の感想や意見を編集して、新しいコンテンツを作っていく。そんな新しい編集者の仕事の仕方を、イベントを運営しながら模索していきたいと思っています。



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